驚愕。「眼のある百科事典」が出現
公園を歩いていたら見慣れない花を見た。この花は何という名前だろう?
写真を撮れば名前を教えてくれるスマートフォンがあれば、どんなに便利だろう。しかし、そのようなスマートフォンは存在しない。
花の名前は物識りに聞くしかない。AI(人工知能)が発達したけれども、まだ人間の物識りには及ばない。
『究極の文章法』(講談社、2016年)という本で、私はこのように書いた。
しかし、そのようなスマートフォンがついに現れた。GoogleのPixel 3で写真を撮ると、それが何であるかを教えてくれる。
手始めにミカンを撮ってみた。下の画面キャプチャーで、上にあるのは、私がカメラで撮った画像。「Google レンズ」というところに示されているのが、グーグルの検索結果だ(時間遅れなしに、すぐさま示される)。
上の写真に写っている映像がミカンであることを、みごと認識している!
すごい!
ついに百科事典は、眼を獲得して外界を認識し始めた!
しかも、「ミカン」という大雑把な把握でなく、「クレメンタイン」とか「タンジェロ」という細かい区分まで示している(その認識が正しいのかどうかは、確かめていないが)。
ただ、興奮からさめてよくよく考えてみると、ミカンをミカンであると認識するのは、人間なら3歳の幼児でもできることだ(想像だが、クレメンタインとかタンジェロというのは、たまたまグーグルの写真ストックから似ているものをピックアップしただけではないだろうか?実際、私が撮したのは、Google レンズで第1候補とされているポンカンではない。この点は、「この検索結果は役にたちましたか?」へのユーザーのレスポンスで学習して、急速に改善されていくだろう)。
では、花の名前はどうか?
これは、サルビアの花だ。
これについて、「Google レンズ」は、「ベニバナサルビア」と、正しく教えてくれる(ただし、ブッソウゲとかLepechiniaというのは、間違い)。
下の写真は、井の頭公園で拾ってきたトングリだ。ドングリがなる樹はいくつかあり、どの樹のドングリかを本当は教えてほしいのだが、現在の能力では、そこまでは無理なようだ。検索結果にある写真と見比べて判断するしかあるまい。
自信のない結果を出すこともある。
下の写真で本当はつるバラの種類を教えてほしいのだが、「役に立つかもしれません」という謙虚な表現に止めている。
間違える場合もある。下の写真は、メキシカンセージとかアメジストセージというものだが、これについては、正しい名前を見いだすことに失敗している。
以上で見たように、Google Pixelの画像認識能力は、100点とは言えない。しかし、かなりのものだということができるだろう。
何しろ、グーグルがニューラルネットワークのディープラーニングを駆使して「猫の画像を認識できた」と発表したのは、2012年6月のことだ。それから6年半しか経っていない。長足の進歩だと言わざるをえない。
そして、以上で述べたことは、Google Pixelの画像認識能力のほんの入り口なのだ。それを教えてくれたのが、下の写真だ。
これは、私が持っているダリのリトグラフの一部分なのだが、作者を「Salbador Dali」と正しく言い当てている!
写真のなかに、「ダリ」という文字は一切ない。絵の特徴だけでダリだと判断したのだ!
私の家への来客で、このリトグラフの作者がダリだと分かった人は、ごくわずかしかいない。Google Pixelの能力は、すでに多くの人たちを上回るまでになっている。
Google Pixelの画像認識能力を駆使することで、私の情報能力が爆発的に拡大するだろうという予感を持っている。
それについてさらに述べていくことにしたい。