アイディア製造工場2

そもそも、何について書けばよいのか?

◇ テーマの選択こそ重要
 文章を書く場合にまず最初に必要なのは、「そもそも何について書くのか?」を決めることです。

 「何について書くか?」、「何を目的にするのか?」という「テーマの選択」、あるいは「目的の選択」こそ、最も重要です。
 これらが分かれば、仕事は8割方できたといっても過言ではないでしょう。

 組織の一員として仕事をしている場合、「何をすべきか」についてのおおよその方向付けは、上司の判断等によって決められていることが多いでしょう。しかし、その枠内においても、それをどのように観点から見て、どのように処理するかということについては、あなた自身の判断が重要なはずです。

◇ どうすればテーマが見つかるか?
 では、テーマは一体どのようにして見つかるのでしょうか?
 そのためには、「常にテーマ探しを意識し、さまざまな情報を捉え、考えに考え抜いて捉える」ということしかありません。
「探して探して、探し続けるしかない」と言う他はありません。
 「二階の窓から飛び降りたくなるほど」探さなくてはならないのです。

 情報を多く収集すればよいというわけでもありません。あまりに大量の情報を集めれば、情報洪水に飲み込まれてしまうでしょう。

 また、書き始めてからテーマが変わるうこともあります。それに柔軟に対応できるような体制を作ることが重要です。

 テーマは何もしないでいるときに天から降ってくるものではありません。またテーマ探しをやれば必ず見つかるというわけでもありません。
 テーマを見いだすための最も確実な方法は、仕事を続けることです。仕事を続けることによってその中から新しい疑問が生じ、新しいテーマが見つかるでしょう。

 「ボタンを押せば適切なテーマが示される機械」などと言う仕掛けがあるはずはないのです。
 ただし、その近似物を作ることはできます。「質問ジェネレーター」(または、「テーマ発見機械」)がそれです。

 また、メモ帳にメモを書いておいて、それを後から見るとのは、しばしば有用です。状況が変わってその問題を新しい観点から、つまり、別の人の視点から、見ることができるからです。

◇ 「よい質問」をできることが重要
 私がアメリカに大学院生として留学したときに最も印象的だったことの1つは、教師が学生の質問に対して、「それはいい質問だ」としばしば言ったことです。
 アメリカの学生はよく質問しますが、その質問が良い質問か平凡な質問か、あるいは悪い質問かの評価をされるのです。
 日本の学校ではあまり質問をする学生がいないので、こうした反応を聞くことはありません。そのため、大変新鮮でした。
 「よい質問をした」ということは、「よい問題を捉えた」ということです。つまり、「探求すべきテーマを見いだした」ということです。
 ですから、「よい質問をする」のは大変重要なことなのです。

 先生自身が、「よい質問」に触発されて、何かを思いついたということもあるのではないかと思います。
 
 私は、日本に帰ってきて大学で教えるようになったとき、学生からできるだけ多くの質問を受けるようにしました。そして、その質問をメモしていました。質問に触発されて私が思いついたことをメモしていたのです。

◇ 需要と供給の法則
 書籍や論文のテーマであれば、需要が大きいもの、つまり、多くの人が必要であると考えているもの、あるいは多くの人が関心を持ちそうなものを選ぶというのが、多くの著者の選択です。
 しかし、そのようなテーマに対しては、供給も多いのが普通です。
 そこで、供給側の条件、つまりあなた自身の立ち位置を考える必要があります。多くの人が書けるようなものを書いても、大量の供給の中に埋もれてしまうでしょう。
 あなた以外の人には書けないものを書くことができれば、最も望ましいと言えます。

 なお、これは、執筆に限ったことではありません。
 「何をしたらよいのか?」、あるいは、「そもそもどんな職業に就いたらよいのか?」ということこそ、最も重要な選択なのです。

 上で述べたことは、書籍や論文のテーマに限らず、あらゆることについて言えます。
 需要が大きいものに対応することが必要。しかし、自分がどのような供給ができるかを考えることも重要です。この両者の調和が必要です。
 なお、多くの人が関心を持っていることについて、一般に言われていることが間違いであるとか、観点を変えれば全く別の結論が出てくるといった場合があります。そうしたチャレンジは有用です。

◇インターネットがもたらした変化
 情報の供給条件は、インターネットによって大きく変わりました。

 かつて、オスカー・ワイルドは、次のように言いました:「昔は作家が文章を書いて人々が読んだものだ。いまは、誰もが書いて、誰も読まない」
 ワイルドは、インターネット後の世界を予測していたのです。

 インターネット世界の反応を全く無視するわけにはいかないので、Twitterやノートの「いいね」の数を無視するわけにはいきません。
 霞を食って生きている仙人であればともかく、世の中の動向を全く無視して超然としているわけにはいかないのです。
 しかし、それに振り回されることがないように努力しています。

◇ AI時代に、テーマ選択の重要性は高まる
 ITの進歩によってもたらされたもう一つの変化は、テーマさえ見つけられれば、それに関する情報を探し出すのは簡単になったことです。

 30年ほど前まで、テーマを見つけたとしても、必要な情報を見つけるには様々な書籍を参照しなければならず、情報得るのは容易なことではありませんでした。
 しかし、いまでは、そうした情報は、ウェブを検索することによって簡単に集まるようになっています。とくに統計データについて、そのことが言えます。
 ただし、ウエブで得られる情報は断片的なものが多く、ものの考え方、とくに基本的なものの考え方について、果たしてウエブが適切な情報を提供してくれるのかどうかは、大いに疑問です。

 AIによって自動的に文章を書くアプリも、すでインターネットで提供されています。
 現在のところ性能が悪く、全く実用にならないのですが、将来は進歩するかもしれません。
 実際、スポーツ記事などについては、すでにAIが書いた記事が配信されています。

 しかし、こうした機能を利用するためには、「何について書くのか」というテーマを与える必要があります。
 何について書くのか、どのような角度から書くのかは、著者が決めなくてはならないことです。
 それについての重要性は、AIの時代に高まるでしょう。

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