備忘録はディジタルで、スケジュールリングはアナログで
◇備忘録とスケジューリングは別
多くの人は、時間管理とは、予定を忘れずにスケジュールをこなしていくことだと思っている。そして、手帳はすでに決めた(あるいは、誰かに指示された)予定を忘れないように記入しておくためのものだと思っている。
もちろん、「予定を忘れないこと」は重要だ。
しかし、手帳が果たすべき役割は、備忘録だけではない。
もっと重要なのは、スケジューリングだ。つまり、予定を作ることである。
ところで、「予定は、自分の都合では決められず、会社の上司や仕事の相手の都合で決まる」という人が多いかもしれない。
確かに、予定は自分の都合だけで自由自在に決められるわけではない。
誰かが決めた予定に受動的に従わなければならないか、それとも、自分で能動的に予定を作っていくことができるか。こうした自由度は、人によってかなりの差がある。組織で働く人の場合は、誰かが決めた予定に従わなければならない場合が多いだろう。
◇スケジューリングが必要
しかし、よく考え直してみれば、すべての予定が完全に受動的ということはないはずである。
自分でコンロトールできる予定も多いはずだ。例えば、「打ち合わせをするとして、それをいつ行うか」については、こちらの都合を主張できる場合が多いだろう。
そうであれば、「他の予定との関係で、打ち合わせの日程をどう配置するか」という問題が生じる。
あるいは、夏休みをいつとるかは、自分で決められるかもしれない。その場合には、「いつとるか、それに合わせて前後の仕事のスケジュールを調整するか」を考える必要がある。
こうした作業が、「スケジューリング」、あるいは「タイムマネジメント」だ。
同じ予定であっても、それをどこに配置するかで、時間利用の効率性は大きく違ってくる。
それを示すのが、「超」時間管理法(3) 「地獄の釜」シンドロームは、なぜ起こるか?で述べた居座り案件や、地獄の釜シンドロームだ。
仕事を進めるうえで重要なノウハウはいくつもあるが、タイムマネジメントは重要なノウハウだ。そして、「スケジューリング」は、タイムマネジメントの中で重要な比重を占めている。
「決められた予定を忘れない」というのが受動的な作業であるのに対して、「予定を作る」というスケジューリングは、能動的な作業だ。
スケジューリングによって、主体的に時間をコントロールしよう。
◇これまでの手帳はスケジューリングに向かない
スケジューリングがこのように重要であるのに、従来の手帳では、なかなかうまくできない。それは、「超」時間管理法(3) 「地獄の釜」シンドロームは、なぜ起こるか?で述べたように、1週間を超える期間を一覧できないからだ。
備忘録として役立つことだけを考えており、「スケジューリングのための道具」という問題意識がない。
超整理手帳は、このような従来の手帳の欠点を克服するために、8週間を一覧できるようにした。
これをうまく使えば、タイムマネジメントができる。
事前の準備も適切にできる。用件が立て込む週というのがあるものだが、その週になってからあわてないために、事前に準備して、その週を乗り切る。例えば、「第3週はかなり立て込んでいるから、雑事は事前に処理しておこう」「第3週に締切りが来る連載原稿は、少し前倒しで準備しておく必要がある」といったことである。
また、新しい予定をいれるときに、第3週を避ける。
◇ディジタル手帳も備忘録のためのもの
では、ディジタルの手帳でスケジューリングができるだろうか?
つい10年ほど前まで、手帳と言えば、印刷物の手帳だった。ところが、スマートフォンの利用が広がるにつれて、紙の手帳からスマートフォンの手帳への移行が進んでいる。
確かに、備忘録としての機能は、スマートフォンのほうが便利である場合が多い。アラーム機能もあるし、ToDoリストもある。リマインダーもある。
しかし、スケジューリングに関しては、スマートフォンの手帳はあまり便利でない。
最大の問題は、長い期間を一覧するのが難しいことだ。また、「超」時間管理法(6) カレンダーに「立ち入り禁止区域」を設けるで述べたような「立ち入り禁止区域」を設定するのも容易ではない。
結局、ディジタル手帳は、備忘録には向いているが、スケジューリングには向かない。
◇ディジタルとアナログの役割分担
そこで、紙の超整理手帳とディジタルとの役割分担をすることが考えられる。
(1)備忘録としての手帳は、ディジタル手帳を正本とする
すべての予定は、ここに漏れなく記載されているようにする。これによって、予定を忘れたりダブルブッキングすることを避ける。
(2)紙の超整理手帳は、スケジューリングのための道具とする
とくに重要なのは、立ち入り禁止区域を明確に設定すること。
新しい予定を入れる時には、これを参照する。
紙の手帳は、立ち入り禁止区域を明確にできるだけでも価値がある。
その他の予定を書き込むことは、もちろん構わない。ただし、ここにないからといって空いているわけではないことに留意する。このため、実際に予定を入れる時には、ディジタル手帳で確認する。
以上を要約すれば、紙の手帳を最高意思決定者とし、デジタル手帳を、データ記録のための下働きとして使うわけである。
「備忘録」と「スケジューリング」は別のことなので、各々を遂行するために2つの手帳が必要なのである。
「スマートフォンの手帳だけで十分」と言っている人は、スケジューリングの重要性を意識していない人だ。
◇手帳を頻繁に見て頭の中にイメージを作る
「超」時間管理法(6) カレンダーに「立ち入り禁止区域」を設ける
で述べたように、重要な予定の配置を頭の中に描けることが重要だ。
超整理手帳のスケジュールシートを頭に思い浮かべるられるようにするのである。
いつも手帳を見ていれば自然に頭に入ってくる。しかも、その日の用件だけでなく、その周辺のスケジュールも見るだろう。この作業をもう少し意識的に行なおう。
こうしたこと毎日行うことによって、スケジュール管理の重要性を認識するようになるだろう。