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「超」整理日記(第801号):現金給付で、不正受給が横行するだろう

 政府は、新型コロナウイルスの感染拡大によって収入が減った世帯への現金給付の枠組みを決めました。
 給付額を1世帯あたり30万円とします。
 給付金総額は3兆円規模に上るとみられます。

◇ 不公平な支給になる
 一律給付でなく、条件をつけて支給制限をした給付は、間違いなく不公平を生むでしょう。
 所得減の要件をどのように決め、どのように審査するかは極めて難しい課題です。以下に述べるように、現在の案ではこれが確保されていないので、著しく不公平な政策になります。

 第1に、コロナに感染したが所得制限で現金給付を受けられない世帯と、感染しないが別の理由で所得が減少した世帯と、どちらを助けるべきでしょうか?

 第2に、わずかの差で条件を満たせなかった人は、大きな不満を持つに違いありません。

 第3点がもっとも大きな問題です。現実には、不正行為が横行する可能性が強いのです。

◇ どうやって収入減を証明するのか?
 個人の所得を正確に把握できる公官庁は、税務署しかありません。しかし、現在の体制で、現金給付に必要な審査を行なう余裕など、到底ありません。

 政府案では、収入減少を証明する書類を、住民が市町村の窓口に自ら申告することになっています。証明書類は、会社員なら給与明細書となります。つまり、受給のために必要な証明書類を、企業という私的な主体が発行できるのです。

 そうなると、「収入減少」の証明は簡単です。
 悪徳経営者なら、まず、所得制限を満たす従業員の給与を減らします。従業員に現金給付を受け取らせて、その穴埋めをさせます。これだけで、巨額の収入が得られます。

 例えば、月収20万円の従業員を雇う経営者は、この従業員の給与を3カ月間10万円に減らします。そして、「給与が30万円減少」という証明書を発行します。従業員は国から現金給付で30万円受け取るから、収入は不変です。
 こうして、経営者は、給与を一人当たり30万円節約できるのです。100人の従業員がいれば、3000万円儲かります

◇ 史上空前の不正財政支出が行なわれる
 注意していただきたいのですが、この数値例で、雇い主が給与を30万円減らし、その旨の収入減証明を発行するのは、形式的には不正ではありません。したがって、その証明書で現金給付を受けるのも、形式的には不正ではありません。
 政府は減収証明書の偽造対策を講じるといいますが、上述の収入減証明書は、形式的に言えば、偽造ではありません。これにどう対処するつもりなのでしょうか?

 いうまでもなく、実質的には、これは著しく不当な受給です。
 収入減証明の不正発行と、それを用いた不正受給をどう防止するかを、示す必要があります。それをしなければ、史上空前の不正財政支出となります。

 現金給付は、困っている人、損害を受けた人を助けるのでなく、悪賢い人たちに不当な利益を与えるだけの制度になるのです。そして、この財源を納税者が負担します

 こんな制度が現実に登場するなど、信じられなことです。これは、「マスク2枚」のように、笑っては済まされない問題です。

 それにもかかわらず、野党は現金給付に反対しない模様です。とにかくおカネが貰えるわけですから、反対すれば国民の支持を失うと考えるからでしょう。
 しかし、事実は逆です。不当で不公平な給付が行われれば、国民の不満は爆発するでしょう。

◇いま本当に必要なことは病床確保のはず
 現金給付総額は3兆円程度と言われます。その多くが、悪賢い人たちの懐に入ります。
 いま一番必要なのは、オーバーシュートに備えて病床を整備することです。そのために予算措置することです。
 そのための貴重な3兆円が消えてなくなるのです。
 政策当局者は、どうか正気に戻ってほしいと思います。


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