中国電子マネーが作る管理社会
日本人であっても、中国で仕事をしたり旅行したりする場合、アリババ集団と騰訊控股(テンセント)の子会社が発行するアリペイやウィーチャットペイという電子マネーを使わないと、不便でどうしようもないので、使わざるをえないそうだ。これによって個人データを収集されることになってしまうが、やむを得ないのだという。
中国では、高齢者と子供以外のほぼ全ての人が、上の両方のアプリを持っている。どこの店で買い物するにもこれが必要だ。
この2社の2018年の決済額は170兆元(約2550兆円)。
日本では、ポイント還元策と関連してようやくQRコード決済の電子マネーが使われ始めようとしている段階だ(ところが、セブンペイ問題で躓いてしまった)。日銀の資料によると、2018年の電子マネー決済額は5兆4790 億円。https://www.boj.or.jp/statistics/set/kess/release/2019/kess1906.pdf
中国とは全く比較にならない。
電子マネーでの取り引きによって、膨大なデータが集まる。その利用が、さらに別の金融サービスを可能にする。
アリババもテンセントも、電子マネーの利用によって大量のデータを集めこれを融資の審査に用いるサービスを始めている。
アリババ系は網商銀行、テンセント系は微衆銀行だ。決済の履歴のほか、公共料金の支払い記録なども参照される。テンセントの場合は、SNSのデータも用いられる。
担保のない自営業者や零細企業が借り入れをしやすくなった。マイクロファイナンスは従来からの課題だったが、中国では、このような形によってそれが進展しつつあるのだ。
与信枠を持つ顧客は1億人を超えた。融資残高は、18年末で、1700兆元を超えた。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48438220Z00C19A8MM8000/
これによって家計債務が過剰になる恐れがあると言われている。確かにそうだが、それは金利の操作等でコントロールできるだろう。
もっと大きな問題は、個人情報が信用スコアリングに用いられ、そして、信用スコアリングが融資審査いがいのさまざまな機会に用いられることだ。SNSの情報が用いられれば、反政府的な考えを持つ人のスコアリングが低くなるだろう。
こうして、国家の統制が強化される危険がある。