「AIを用いた予測」は、本当にAIを使っているのか?
「AI(人工知能)を使った予測」ということがしばしば言われる。しかし、本当にAIを使っているのかどうか、疑問に思われる場合もある。
「AIを使う」ということは、「ビックデータを用いてコンピューターに機械学習を行なわせて予測モデルを作り、それを用いて、特定の対象についての予測を行なう」ことだ。
この場合、重要なのは、ビッグデータを用いてモデルを作っているかどうかだ。そうした過程を踏まずに、単に恣意的にパラメータを設定したモデルを用いている場合があるのではなかろうか?
そうであれば、単に「コンピュータを用いて計算しているだけのこと」を、「AIを用いている」と宣伝していることになる。
「AI」という言葉が魔法のような魅力を持つために、こうしたことが行なわれている可能性は否定できない。
これが特に問題になるのは、HRtechと言われる分野だ。これは、人材育成や採用活動にAIを活用しようとする試みである。
例えば、ウェブのサイトの閲覧記録から内定辞退率を予測することができるという。しかし、こうした予測を可能にするためには、閲覧記録と辞退率に関する大量の個人データを集め、内定辞退率を閲覧記録から予測出来るモデルを構築する必要がある。
そのためには、このモデルの作成者は、個人ごとの内定辞退データを持っている必要がある。
そうしたデータを用いた予測が本当に行なわれているのだろうか?
「AIを使った予測を行なっています」というからには、最低限、どのようなデータを用いてどのような予測モデルを作ったのかを、公表すべきだ。そして、そのモデルの予測精度も公表すべきである。
なお、以上のような作業が本当に行なわれているとすれば、仮にデータ流出等の問題が生じた場合にば、個人ごとの内定辞退データが流出することになる。
これは、プロファイリングされたデータでなく、直接の個人データだ。
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