ローマ共和国か中国か?
人類の歴史を通じて、文化的、科学技術的に最も長く世界の頂点にいたのは中国であった。
ただし、そうした国家理念が広く世界的に受け入れられたというわけではない。
中国は常に官僚国家であり中央集権の国であった。また、地域的にも閉じた国家であり、世界制覇をしようとは考えなかった。そうした意味では、覇権国家ではなかった。
ヨーロッパ社会の基礎は、ローマ共和国だ。
分権国家、小さな官僚機構、商業的な利益を守る。
アウグストゥスが作ったローマ帝国は、こうした理念を現実の制度のものとするものであった。「帝国」という名とは裏腹に、分権国家であった(「ローマ帝国」という名称は後生の歴史家が付けたものであり、アウグストゥスがそう称していたわけではない)。
こうしたヨーロッパ型国家が大航海を実現した。
航海技術は中国の方が優れていたのだが、官僚国家であるために、新しいフロンティアを開こうとはしなかった。大航海を行なったのだが、沿岸諸国の朝貢を求めるだけであった。
それに対して、ヨーロッパの大航海は、新しいフロンティアを求めた。それは商業的利益の追求に導かれたものではあったが、世界を大きく広げた。
この流れが産業革命をもたらした。
大航海を最初に行ったのはヨーロッパの辺境国であるポルトガルであるし、その後の大航海をリードし、産業革命を実現したのは、ヨーロッパの北の端にあるイングランドであった。
中国は、こうした動きに追随できずに没落したのである。
アメリカ建国の父たちは、ローマ共和国の考えを理想とした。アメリカ合衆国は、ローマ共和国の再現を目的とした。
人類の歴史をリードしているのは、中国的な理念ではなく、こちらの方だと考えることができる。
ローマ共和国の理念は、単にヨーロッパ社会やアメリカだけではなく、人類的な普遍性を持つものであったと解釈することができる。
日本はどちらか?
江戸幕府は分権的な国を作ったという点からいえばローマ共和国的だが、鎖国をして閉じこもったと言う意味では非常に違う。
われわれは、中国のような管理社会を容認するのか?それとも自由な社会を求めるのか?