「超」書く技術 : 全文公開 第1章の1
『「超」書く技術 』150字で人生を変える (プレジデント社)が4月20日に刊行されました。
これは、第1章の1の全文公開です。
第1章 あなたの能力は、メールの文章で毎日評価されている
■01文章は、書き手の能力をあからさまに示す
●『アルジャノンに花束を』に見る文章と知性
序章で、「文章は能力を表す」と言いました。このことを、みごとに表している小説があります。それは、ダニエル・キイスの『アルジャノンに花束を』という短編のSF小説です。
主人公のチャーリィは、知能の発達が遅れた人物。しかし、心の優しい人です。知能を増強させる医療技術が開発され、チャーリィが実験台に選ばれます。
小説は、彼自身が書く「経過報告」の形になっています。メールがなかった時代のことですが、治療の結果をレポートの形で、つまり「文章」という形で、医師団に提出するのです。
●知能が向上すると文章が変わってくる
知能が低い頃のチャーリィが書く文章は、まったく幼稚。用いる言葉も単純なもので、構文も簡単。話し言葉をそのまま文章にしたような表現です。
知能が向上するに従って、文章が口語から文語になり、単文が重文になり、複文になります(単文、重文、複文については、第3章の02を参照)。
目に見えるものや日常の会話を書き並べるだけでなく、抽象的な概念の記述が多くなってきます。彼自身の思想が表現されるのです。
直接話法でなく、間接話法が登場します。間接話法を使えるのは、知能の証拠であることが分かります。
また、「アリの目」で地上を這い回るように描写するのではなく、「鳥の目」で全体を鳥瞰できるようになってきます。これも知性の証拠です。
そして、彼の知能は、やがて治療に当たっている医師たちのそれを凌駕するようになります。知能が最高水準に達したときの文章は、実に感動的です。何度でも繰り返して読みたくなります。
ところが、治療の効果は長続きせず、やがてチャーリィの知能は低下を始めるのです。医師たちは必死になってそれを食い止めようとします。いまや医師たちよりもはるかに高い知能を持つチャーリィも、自分自身の知能低下を食い止めるための研究を進めます。
しかし、その努力は成功しなかったのです。
文章が再び幼稚なものに退化していくことで、それが示されています。
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