金余りは最近の現象だが、その根底に人件費の長期的抑制がある
いまの日本では、「企業の利益準備金が積み上がり、企業がそれを現金・預金という形態で保有する」という、「企業の金余り現象」が顕著に見られる。
これは、日本経済で昔からあったことではなく、アベノミクス下で顕著に進行した現象だ。
多くの人は、「金融緩和の結果、金余りが起きた」と思っている。
しかし、そうではない。
企業の利益が増え、利益剰余金が積みあがったが、収益性が高い有利な運用対象がないので、企業はやむを得ず、現金・預金の保有を増やしたのだ。
「運用難」に関連して注目されるのは、企業が保有する株式の額が、この期間に約17兆円減っていることだ。
企業は、株価上昇は一時的なものであり、将来は下落のリスクがあると考えている。
ここ数年間の株式市場の活況は、日本銀行によるETF購入や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の購入によって「作られたもの」だった。
企業の借り入れが増えず、銀行の貸し出しが増えなかった。したがって、信用創造が起きず、マネーストックが増えなかった。
このため、金融緩和政策が本来実現すべき効果が実現できなかった。
「金余り現象」の基本的な理由は、企業利益が増えたことだ。
では、なぜ利益が増えたか?
企業の利益増のメカニズムとしてわれわれが想像するのは、売り上げが増え、それに比例して人件費や利益が増えるというものだ。この場合には、経済は量的に拡大する。
ところが、実際には、売上高は、若干は増えているのだが、ほとんど伸びていない。
利益増の基本的原因は人件費の抑制だ。
2009年頃に比べて、利益は2倍くらいに増えたのに、人件費はほとんど変わっていない。だから、この間に、所得分配状況は大きく変わったことになる。
詳細は、下記を参照。
https://diamond.jp/articles/-/209745
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