世界経済最前線

世界通貨が実現したときの問題点

 仮にリブラのような世界通貨が実現したとすると、問題が生じる可能性がある。それは、「国際金融のトリレンマ」に関連する。

 「国際金融のトリレンマ」は、
(1)域内の資本の完全な移動の自由、(2)固定為替レート、(3)独立した金融政策 
の3つを実現できる仕組みはないとする。つまり、これらのうち少なくとも一つは犠牲にしなければならない。

 ユーロは、(1)と(2)を実現しようとするので、(3)を放棄しなければならない。
 そのため、ギリシャ危機のような問題が生じる。つまり、為替レートで調整ができないので、貿易赤字が拡大した場合、引き締めを行なわざるをえなくなる。

 リブラのように、国内でも対外取引でも使える通貨が実現したとすると、ユーロと似た問題、あるいは、それより深刻な問題が生じる。

 例えば、ヴェネズエラの国民は、自国通貨でなくリブラを使う。
 国内の取引だけでなく、国際決済にも使う。
 すると、ヴェネズエラの貿易収支は赤字になる。自国通貨なら通貨安で調整できる。しかし、リブラはヴェネズエラ政策当局では自由にならない。したがって、引き締めを行なうしか方法がなくなる。



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