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『日銀の限界』全文公開:第2章のまとめ

『日銀の限界』円安、物価、賃金はどうなる?(幻冬舎新書)が1月22日に刊行されました。
 これは、第2章のまとめ全文公開です。

◆第2章のまとめ

1 .円安のために、国際的な技能工獲得競争で、日本が敗れる場合が生じている。必要な技能工を外国から獲得できなければ、企業は事業を続けられない。「製造業には円安がよい」という考えを改めるべき時が来た。

2 .コロナ禍の水際対策が緩和され、しかも円安が進んだため、外国人観光客が再び急増した。これに伴い、観光公害も増え、ホテル代や外食費も高騰する。円安が今後も続けば、日本人の生活はさらに圧迫されるだろう。

3 .円安のために、マナーの悪い外国人旅行者が増え、観光公害が地域住民の生活に無視できぬ影響を与えている。旅行者数の増加だけを求める政策から転換し、質の高い旅行者を求めるべきだ。観光税の導入は、公共サービスの利用に対する費用負担を求め、質の低い旅行者を排除するために必要とされる。

4 .日本から海外への留学生数は、2004年頃から傾向的に減少している。最近の円安の影響で、それがさらに加速されそうだ。韓国の留学生は、日本よりずっと多い。日本における人的資源の劣化は、将来の経済成長を大きく制約するだろう。

5 .新NISAと円安によって、資金の海外流出が増えている。それは、経済発展のために国内で使える資金が減少することを意味する。「貯蓄から投資へ」のスローガンで導入された新NISAが、かえって日本経済発展の阻害要因になっている。

6 .これまで日本では、円安が望ましいとする意見が強かった。それは、円安が企業利益を増大させるからだ。しかし、円安になっても、日本の輸出数量が増えることはなく、したがって日本国内の生産は増加しない。円安で企業利益が増えるのは、原材料価格の上昇を消費者に転嫁するからだ。だから円安は、日本に何のプラスの効果ももたらさない。


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