米中貿易戦争は一時休戦だが、貿易と生産の落ち込みは続く
米中貿易戦争は一時休戦になったが、高関税は残っている。世界経済の覇権を巡っての争いは容易には収束しない。この影響で日本の輸出は大きく落ち込み、製造業の利益が急減少している。
◇ 第1段階合意は一時的な休戦に過ぎない
米中政府は12月13日、貿易交渉で「第1段階の合意」に達したと発表した。
その主要な内容は、つぎのとおりだ。
第1に、12月15日に予定していたアメリカの対中制裁関税「第4弾」の発動を見送る。中国も報復関税の発動を見送る。
第2に、アメリカが制裁関税を上乗せしていた中国からの輸入品計3700億ドル分のうち、2500億ドル分(昨年の第1~3弾)に課した25%は据え置く。
第3に、残りの1200億ドル分は現行の15%から7.5%に引き下げる。
第4弾とは、中国製のスマートフォンやノートパソコンなどを対象にしたものだ。これに関税をかければ、アメリカ国内での需要に大きな影響があるので、発動の可能性は最初から疑問視されていた。
「第1段階の合意」とは一時的な休戦にすぎず、基本的な対立は残ったままだ。
米中貿易戦争の根底には、未来の世界の覇権をめぐる争いがある。
これは、容易なことでは解消しないだろう。
トランプ大統領は、2020年の大統領選に向けて、今後、さまざまな戦術を繰り広げていくだろう。
強攻策を打ち出して世界経済を混乱させるが、株価が下落すると、取引に応じる態度に一変して緩和策を打ち出し、政治的な支持を獲得しようとする。
要するに、米中貿易戦争を大統領選に向けての政治的手段として活用しているわけだ。
◇ 中国の製造業は依然として下振れ圧力に直面
中国国家統計局が発表する中国鉱工業生産の対前年比は、11月には6.2%増となった(YAHOO!ファイナンス)
この値は、2018年8月までは概して6%を上回っていた。それが18年9月からは5%台に落ち込み、さらに19年7月からは(9月を除いて)4%台に落ち込んでいた。6%台に回復したのは6月以来のことだ。
しかし、中国国家統計局は、中国経済が依然として大きな下振れ圧力に直面しているとの認識を示している。
◇ 日本の輸出が減少し、鉱工業生産は落ち込む
10月分貿易統計(速報)によると、輸出額は、対前年比がマイナス9.2% で、11ヵ月連続の減少だ。
対米輸出は、対前年比がマイナス11.4%で、 3ヵ月連続の減少。
対中輸出は、対前年比がマイナス10.3% で、8ヵ月連続の減少。有機化合物がマイナス 24.9% 、自動車の部分品がマイナス 21.1%、原動機がマイナス 24.9% などとなっている。
10月の鉱工業生産指数の対前年比は、マイナス7.7%となっている。