コロナウィルスによる経済的損失の補填策は、不公平ではないか?
◇ 経済的なコストは、「非必須消費」の減少で生じる
パンデミックのコストは、どのような形で生じるのだろうか?これについて、世界銀行による2008年の研究が参考になる。
それによると、コストはつぎの3種類に分類される。
第1は、死亡。これは、労働者が死亡することによって経済活動ができなくなることのコストだ。
第2は、休み欠勤。労働者が欠勤することによって経済活動ができなくなることのコストだ。
以上は、生産が減少するという「供給面」のコストだ。
第3は、拡大防止に伴うコスト。これは、拡大防止の為に人々お移動を制限したり旅行を制限したりすることによって人々の行動が抑圧されることによって生じるコストだ。 これは、「非必須消費」の減少という形で生じる。つまり、「需要面」のコストだ。
以上の3つを比較すると、コストの大部分は第3のカテゴリーで生じる。
◇ 損害はすでに発生している
実際のデータでも、こうした傾向がすでにはっきりと表れている。
まず、各航空会社が減便を決めている。
また、3月2日に発表された大手百貨店の2月度の売上高速報値によると、三越伊勢丹は、2月の国内既存店売上高(グループ会社含む)が前年同月比13・6%減だった。三越銀座店は同36.2%減。松屋銀座店は同31.6%減、大丸心斎橋店は45.5%減だった。
自営業やフリーランサーでも、損失が既に発生している。今後は、収入が激減する可能性がある。それをどうするのか?
今後、大規模なスポーツイベントなどを中止せざるを得ない状況が想像される。そうした場合に、予定していた収入が得られなくなることにどう対処するのか?
こうした損失の大部分は、仮に感染拡大が収まったとしても、回収できない。
◇ かえって不公平になる
政府の新型コロナウイルス感染症緊急対応策-第2弾-(3月10日)では、「一斉休校した措置として、政府が一定の要件を満たしたフリーランスや自営業の人に対して一日4100円の給付を検討している」としている。しかし、「一定の要件」の詳細が分からない。
「業務委託契約がある場合」とも言われているが、そうした契約を結ばない場合が多い。だから、この措置で、かえって不公平になるのではないか?
「売上の減った事業者を守り、雇用の場を維持します。」としているが、これも内容が分からない。「守る」というが、何をしてくれるのだろうか?また、「事業者」の範囲はなんだろうか?
リーマンショック後の2009年3月には、給付形式の定額減税が行なわれた。
給付対象者1人につき12,000円。ただし、65歳以上の者及び18歳以下の者については8,000円加算され、20,000円とされた。
これは、「バラマキ」と批判された。
今度の措置は、「不公平」という意味で、バラマキ以上に大きな問題を含んでいるのではないだろうか?