日本経済最前線

ネガティブな印象で在職老齢年金の見直しを阻止

在職老齢年金制度について、政府は廃止の検討を「骨太の方針」に盛り込んでいる。
廃止した場合の影響について、2019年財政検証は、「オプション試算B②」で試算している。

それによると、制度を完全に廃止すると、将来世代の給付水準が0.3~0.4ポイント低下する
この試算には、おかしな点が2つある。

第1は、廃止の財源の調達方法だ。
財政検証では、年金全体の給付水準を切り下げることで調達するとしているのだが、廃止の財源をこのような方法で調達することが決まっているわけではない。
本来、この問題は、年金所得に対する課税を強化することで処置されるべきものだ。

第2は、「廃止しても就業促進効果はない」としていることだ。
しかし、そうした効果が期待されるからこそ、「骨太の方針」は廃止の方向を示したのだ。

どちらも、ネガティブな印象を打ち出すことによって、制度見直しを阻止しようという意図が透けて見える。
新聞等の論調を見ると、「廃止するといまの若者の年金が減るという『不都合な真実』がある」といった評価がみられるのだが、これは、「真実」ではなく、「作り出された結果」なのだ。


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