地方移住で古民家購入。購入した古民家は簿記会計では資産③ 減価償却できるのは建物だけ
これまで2度にわたり、古民家の資産計上について書いてきました。
事業所として考えた場合に資産計上できるということ。そして、古民家の耐用年数とリノベーションをしたときは資本的支出として考えることができるということ。
そのなかで、今回は、不動産購入の際に田舎ならではの注意しないといけないことについて書きます。それは、田舎あるあるのことですが、不動産を購入したら、複数の建物や山林がまとめてついてきたという場合です。
減価償却できるのは建物だけ
不動産を購入して、資産となるのは実は建物だけなのです。
これは減価償却という言葉の意味を考えるとよくわかります。
国税庁のWebサイトにはこう書かれています。
”事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。”
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm)
このことから土地は時が経過しても価値が減少しない資産であるため、不動産を購入した場合は、建物のみが対象になります。
建物は資産として考えるとして書いたこの記事も建物のみが対象です。
建物と土地の取得費を分ける
これは何が問題なのかというと、建物の価格を明確にしないといけないといけないということです。
田舎で不動産を購入した場合、契約書に建物と土地の価格が明確に分かれていれば問題ないのですが、すべて不動産をまとめて合計金額のみが書かかれた契約書が多いです。
(なぜなら、不動産の売値というのは、通常は固定資産評価額や土地の価値などを参考にはしますが、それ以上に売値は売り手次第なので、田舎の山奥でどうしても手放したい場合は格安になる場合があるからです。そうなれば、評価額よりも安くても、ある程度の金額以上であればいいやってなります。)
合計金額のみが明記された契約であれば、問題ないのですが、そうでない場合は、建物と土地の取得費を分ける必要があります。
田舎あるあるの複数建物がついてきた場合
また、家が2つに倉庫がついてきたというような、建物が複数ある場合は、事業所と自宅の取得費も分けないといけません。
これ、実は、田舎あるあるなことなのですが。
過去に2世帯や3世帯で暮らしていたということで離れを建てたり、大学進学等で田舎を去った子供に将来は帰ってきてほしいという願いも込めて、親が離れを建てたとか。(現実は子どもが帰ってこず、ほぼ使用されないままで月日が経過していく建物であったり。)
ちなみに、うちは、住宅鉄骨・木造住宅・納屋・倉庫などの複数の建物と土地をまとめていくらっていう契約でした。住宅だけでも、古民家と離れの現代建築の建物という組み合わせです。
どのように按分したらいいのか?
この取得費を分けるというのが実にややこしいのです。
木造住宅と鉄骨住宅であれば、法定耐用年数は違います。さらに、法定耐用年数が過ぎた物件であれば、また計算方法が違ってきます。それぞれの耐用年数で償却をかける必要があるのに、それぞれの金額がわからないとか…。
様々なWebサイトを見ていると、按分の方法は、固定資産評価額で按分しないといけないというよう書かれています。これは、取得額をそれぞれの建物の固定資産評価額の割合で按分しなさいという意味です。
となると具体的に計算すると、
例えば、田舎で、築60年の古民家、築20年の鉄骨住宅をまとめて500万円で購入したとして、古民家を事業用として活用、鉄骨住宅を自宅プライベートとして活用した場合を考えます。
固定資産評価額で考えた場合では、その古民家にはほぼ価値はありません。古民家の固定資産評価額はゼロではありませんが、きっと数千円です。で、鉄骨住宅はおそらく何百万円です。ということは、購入費のほとんどは自宅(プライベート用)ということで、事業用に減価償却する金額は微々たるものです。
古民家で事業をしたいから買ったのに、固定資産評価額という観点からは、古民家にはほぼ価値がないから、ほとんど経費にできませんって。
となるとなかなか悲しいですよね。
うちの場合はこれに似た状態であったので、税務署に相談に行ったところ、評価額まではこまかなことはみなくてもいいけども、例えば複数の建物を事業として使用している場合、事業使用面積比での按分など、現実的であって合理的にできていればよいということでした。もし、税務署から根拠をもとめられたときには、説明できるようにしていてくださいというアドバイスをもらいました。
※ただし、税理士さんや税務署の解釈によって異なるため、管轄の税務署に相談に行ってください。あくまで解釈と計算方法の一例です。
田舎で不動産を購入する時の注意点
このような複雑なことを避けるために、不動産を購入する際は、不動産屋さんと持ち主と相談しつつ、木造住宅がいくら、離れ住宅がいくら、その他がいくらっていうのを契約書に記載することをお勧めします。
それぞれの建物の金額を明記することで、減価償却をうまく考えることができます。
こういうのって、買ってからでないとわからないことですよね。
いや、ほんと。