フットボール・カリプソ小史
突然ですが、今日はカリプソ音楽とフットボールの話をしようと思います。
「カリプソ?なんじゃそりゃ、オシャレな鼻クソみたいなもんか?」という方はハリー・ベラフォンテという人の「バナナ・ボート」を聴いてみてください。
一度はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか?世代によっては原曲よりも「ヒデーオ、ヒデーオ」(野茂英雄投手の応援歌)を思い浮かべる方もいるかもしれませんね。これ厳密に言えばピュアなカリプソ音楽ではないのですが、だいたいこのイメージです。
元々はトリニダード・ドバゴで興ったアフロカリビアン音楽ですが、実は1950年代にイギリスへと伝承して大ブームを巻き起こします。そして、これはイングランドあるあるですが、なぜかヒットした音楽はフットボールへ飛び火していきます。
だいたいどの年代でもこの現象が起こるのですが、有名な例としては90年代にブリットポップと結びついたこの曲でしょう。
これ、日本人的な感覚としてはオマリーが歌った「六甲おろし」みたいな感じかもしれません(絶対違う)。
ここで本題に入る前に、少しだけ50年代イギリス音楽シーンを振り返ります。興味ない人は読み飛ばしても構いません。
さて、前置きが長くなってしまいましたが。
基本的に民族音楽が発祥なので、彼らの歴史や文化、考え方など様々な歌詞が乗る、ということがカリプソ音楽の特徴であり魅力です。もちろん、イギリスへ渡った後は生活に深く根ざしたフットボールに関連する曲も作られていきました。
以下、現在でも聴くことのできるフットボール・カリプソを何曲か紹介しましょう。
Exotic Football Calypso - Edmundo Ros (1953)
これ、実は1953年とかなり初期の音楽。なのでフォーキーで明るい音楽に複数のシンガーが掛け合いながら、パブで飲んでる男たちがフットボール話で盛り上がる日常を描いたオーセンティックな名曲だと思います。
Manchester United Calypso - Edric Connor (1957)
いまだにマンチェスター・ユナイテッドサポがスタジアムで歌うチャントの原曲です。曲調は陽気でリズミカルなのに、歌はねっとりした野太い声。セクシーです。
Manchester Football Double · Lord Kitchener (1956)
なんとカリプソ界の巨匠、ロード・キッチナーによる曲。面白いのは、マンチェスター・シティがFAカップを獲得、ユナイテッドがリーグ優勝したことを「マンチェスター・ダブル」と賞賛してるんですよ。今だったらそんなことあり得ないでしょうが・・・。
LEEDS UNITED CALYPSO - Ronnie Hilton (1964)
少し時代を経て、ある程度カリプソがポップミュージックに吸収された頃に作られたこの曲。歌ってるのはイギリス人のロニー・ヒルトンです。曲調もちょっとヒットソング寄りになっている気がしますね。トップリーグ昇格を祝って作られたこの曲も、のちにファンのチャントに転用されて今でも歌われることがあります。
Ipswich Football Calypso - Johnny Cobnut (1972)
Norwich City Calypso · Chic Applin Sound (1972)
この2曲は合わせて紹介。ライバルチームが同じ年に、しかもカリプソブームなんてとっくに終わったタイミングで発表したのはいったいなんなんでしょうか。イプスウィッチ版は冒頭エキゾチックなイントロから始まるのが耳に残りますし、ノリッジ版はひたすら陽気です。
最後に、個人的にとても好きなカリプソの名曲を紹介しようと思います。
以上。雑談でした。