20200223J21節愛媛戦_杉本の守備立ち位置_

~神様は阪野に微笑んだ~J2 第1節 松本山雅vs愛媛FCレビュー


こんにちは。

先週のルヴァン杯に続いて、J2もついに開幕。
例年通りアウェイ連戦が続く山雅は、今季は愛媛から。

正直まだチームが出来上がっていない時に当たりたくない相手だが、完成度がまだまだなのは相手も同じ。むしろシーズン序盤に叩けたら最高と思いながらの一戦。


両チームスタメン

〇松本山雅

画像1

システムはルヴァンと同じ4-4-2。
浦田→森下、榎本→セルジーニョというメンバーチェンジを加えた以外は、ルヴァンか、同じスタメン。

対人守備で不安を残した浦田とU‐21枠の榎本が替わるのはおおむね妥当というところか。コンパクトな守備を継続すると同時に、自分たちからアクションを起こす崩しにも期待したい。


〇愛媛FC

画像2

昨季と基本布陣は変わらず。新加入の森谷は早速スタメン起用。

最終ラインの3枚がいずれもボールを持てて、かつ前野と茂木の両ストッパーは対角線にロングフィードを供給できるので要注意。突破力のある長沼と小暮にスペースを与えると厄介だ。

一方で明確な得点源に欠けるのも事実。誰が点を取るのか?問題は今季付きまといそうな感じのメンツである。



愛媛のビルドアップを無効化した守備

前述の通り、愛媛の組み立ての起点は3バックの両サイド。ここからウイングバック(以下、WB)のスピードを上げる縦パスや、大きなサイドチェンジが出てくる。
山雅として、パスの供給源を抑えるか、供給された後を潰すかのいずれかを選択する必要があった。

今日の山雅が取ったのは主に後者。
3バックへのプレスは2トップ+ボールサイドのサイドハーフ(以下、SH)が担当する決まり事が見て取れた。その際に、3バックに対して明確に最初から3人を当てるような形ではなく、状況に応じてSHが位置取りを変えるというものだった点は興味深い。

ボールをサイドに追い込んで、相手WBもしくはシャドーの位置で刈り取るイメージはチームとして共有できていた。
また、サイドで取れなければ致し方なくロングフィードを前線に蹴らせてこぼれ球を回収するという、チームとして整備された守備が目立っていた。

その一部を図解していく。

画像3

主に左サイドで見られた形。

阪野とセルジーニョがプレスを掛けて左サイドへ追い込んでいくが、この時杉本には相手の右ストッパーにプレスを掛けるか、セルジーニョに任せて相手右WBまで戻ってプレスするかの2択がある。
この判断は、あくまで杉本に任されているようで、彼の動きによって後方の高橋もプレー選択をしている。

画像4

こちらは、杉本が右ストッパーに出ていってプレスを掛けた場合。

背後の右WBは高橋に任せて、杉本自身が潰すか高橋の待ち構える右WBへのパスを誘導するのが役目でたる。今日は見られなかったが高橋がインターセプトできたら儲けものだろう。

画像5

こちらは、杉本が右WBまで戻る場合。

逆サイドの鈴木がプレスに参加したことでセルジーニョが右ストッパーへのプレスに間に合った際に、この形がよく見られた。
この場合杉本は、第一に右斜め後ろにいるボランチへの縦パスのコースを切る。それによって相手右ストッパーが、右WBへパスを出した瞬間に全速力で戻りプレスを掛けるという役目だ。

最後まで杉本と鈴木が汗をかいたおかげで、90分間決壊することなく相手の組み立てをほぼ無力化できた。杉本と鈴木に負荷が掛かるが、完遂できたことは今後に向けて収穫であり、チームに自信を与える結果になっただろう。

戦術理解があり献身的で運動量も多い両選手だからこそ任せられているタスクだと考えられるので、この点、中美や高木彰は守備面で改善が必要だろう。



目立った個の力

ルヴァンではセレッソに実力の差を見せつけられたが、改めてJ2という舞台においては豪華な陣容なのだと実感させられた。

特に、ボールが収まり無理が利く阪野はJ2では無双できる存在だし、杉本やセルジーニョの狭いスペースでボールを受けて捌くという技術面はピッチ上で頭一つ抜けていた。そして、隼磨と高橋の両翼の運動量と安定感も抜群。

組織としての決まり事やコンセプトが確立されていると、個々の選手が輝く。
事前にプレーの約束事が決まっているため、プレー判断をする際の選択肢が(良い意味で)自然と限られてくる。無限にある選択肢から最適なものを選ぶと時間が掛かるので、あらかじめ練習の段階から場面を想定し、選択肢を絞っておくというイメージだ。これにより判断スピードが向上し、より個々の創造力や本来持っているオリジナルなプレーを繰り出す余裕が生まれてくる。

今J1で上位を走っているクラブには決まってこういったコンセプトが植え付けられていることが多い。J2では山口や徳島といったクラブでは明確なコンセプトがあるために、個が輝いてくる。
今季、僕が期待しているのは、このチームコンセプトの植え付けだ。まだ2試合しか公式戦を消化していないが、十分に兆しは見えている。



軽率すぎた失点

1点目:48分 茂木力也
マークに付ていたのは森下。
相手の茂木の0→1の動きで完全に振り切られてしまった。マンマークで守っている以上、駆け引きで先手を取られてしまうとこのような事態になってしまう。

経験の浅さが影響した部分は少なからずあると思うので、勝利という結果から高い授業料だったと割り切ってもらいたい。
茂木のヘディングもほとんどゴールマウスから外れたところからのシュートだったため、一枚上手だったと言わざるを得ないか。



サッカーの神様が阪野にほほえんだ(得点シーン振り返り)

1点目:52分 鈴木雄斗
相手を自陣まで引き込んでの疑似カウンターのよう。
※疑似カウンター:
意図的に最終ラインやGKまで一度ボールを下げて相手の前線からのプレスを誘発し、全体的に前かがりとなったところをまるでカウンターのように突く。

左WBの長沼を引き出したことで空いたスペースに阪野を走らせて前野とのミスマッチを狙った形。阪野はここまでDFを背負ってのプレーが続き、常にボランチとストッパーに囲まれていたが、相手を引き込んだことで1on1を作り出すことに成功。

その後も阪野の単騎突撃ではなく逆サイドから杉本とセルジーニョがエリア内に入ってきていたことから、チームとして事前にデザインしていた形なのかもしれない。今後も再現性を持って同様の形を作れるようならば、チームが変わろうとしている証拠だろう。
中の2人がDFラインを引っ張ったところで、敢えて遅れて入ってきた鈴木へマイナスの折り返し。綺麗な崩しだった。鈴木の落ち着きと決定力はさすが!


2点目:71分 阪野豊史
ポイントはセルジーニョのシュートより前の部分。
スイッチを入れた塚川のダイレクトパスとバイタルエリアで前を向いて仕掛けた杉本のプレー。塚川は寄せに来たDFを無効化し、かつ杉本に前を向く時間とスペースを与えた点が素晴らしかった。一発で前を向いた杉本のプレーは、今季内側に入ってプレーすることを許されている最大の要因であり、この狭いスペースでボールを持てるのはチームで彼しかいない。

十分にDFを引き付けてからセルジーニョへラストパスを出しているため、余裕を持ってシュートを打てた。弾いた岡本のセーブも見事だったが、慌ててシュートを打たずに折り返した鈴木の冷静な判断、すぐにDFラインまで戻って体制を立て直した阪野の切り替えも素晴らしかった。
相手のミスも絡んだが、選手の喜び方を見ていると1点以上の価値を持つゴールだったように感じる。

愛媛として悔やまれるのは、セルジーニョにボールが入った瞬間に阪野へのスルーパスを警戒してラインを下げてしまったこと。結果的にミドルを許してしまうわけだが、これには伏線がある。
前半から阪野が何度も最終ラインと裏抜けの駆け引きを続けており、咄嗟に下がってしまったのだろう。この得点に直結したわけではないが、折れることなくオフザボールの動きをサボらなかった阪野にサッカーの神様が微笑んだのかもしれない。


総評

何はともあれ勝利を手にしたことが本当に大きかった

変革期にあるチームにおいて、勝利は何よりも周囲の雑音を消し去るのに効果的だからだ。

問題は勝利から遠ざかる時期にどのようなリアクションを見せるかだが、それはまだ少し先の話になるだろう。今はまだ、黙々と土台を作り上げているチームを見守るのみである。



今回も読んでいただきありがとうございました。

昔アメブロを書いていた時代に戻り、初心を忘れないように最後はこの言葉で締めることをルーティンにしようと思います。では、また次節お会いしましょう。


俺たちは常に挑戦者

いいなと思ったら応援しよう!