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【得意な土俵で勝負する】J2 第15節 松本山雅×栃木SC マッチレビュー

チームTopics

松本山雅

・現在リーグ戦5試合負けなし(3勝2分)
・直近2試合はいずれもスコアレスドロー
・21日に非公開練習を実施

栃木SC

・率いるのは元松本ヘッドコーチの田坂監督
・リーグ戦8試合未勝利
・今季ホームで6試合消化してわずか1勝(2分3敗)
・20失点(リーグワースト4位タイ)の守備陣が課題か

スタメン

スタメン

松本は前節から1人変更。横山に変えて阪野を1トップに配置している。また、ベンチメンバーも少し変わっており、表原が外れて戸島が復帰。これはおそらくコンディションの問題だと思われるが、試合展開にどのような影響を与えるだろうか。ちなみに、阪野は古巣対戦。

対する栃木は2名変更。松本からの期限付き移籍となっている吉田と乾が規定上出場できないため、代わって山本と三國が先発に名を連ねている。J1福岡からの期限付き移籍で加入したばかりの三國を最初から投入してくるとは思っていなかったが、今季ルヴァン杯でも出場機会を得ている期待の逸材。空中戦にも強く、栃木のセットプレーがさらに驚異を増す可能性はある。


いきなりの失点

栃木は前節の琉球戦で開始3分で先制点を奪っており、試合前のインタビューでも立ち上がりは慎重に臨みたいと語っていた柴田監督。しかし、その思いとは裏腹に前半3分、コーナーキックから先制点を献上してしまう。

この場面、ポイントは2つあった。まず1つ目は栃木がショートコーナーを選択したこと。虚を突かれた松本の選手は反応が遅れてしまい、2対1の状況でクロスを上げられてしまっている。もうひとつのポイントは大野と柳の駆け引きだ。まず大前提に松本のセットプレー守備はマンツーマンで、残りの選手がストーンのようにゴールエリアに配置されている。映像で見返してみると、ショートコーナーが始まったとほぼ同時に大野がマークしていた柳は大きくファーサイドへ離れる動きを見せる。この時点で大野には、そのまま柳についていった持ち場を離れるか、ステイするか選択を迫られていたはずだが、大野は後者を選んだ。おそらくだが、ショートコーナーと柳のマークを外す動きが同時に起こったので、少しパニックになり思考停止してしまったのかもしれない。柳のオフ・ザ・ボールの動きは秀逸で、あえてゴールエリアから離れることで、自分が勢いを持って飛び込めるスペースを作り出していた。結果的には、この駆け引きに敗れた松本は先制を許してしまう。


栃木の土俵に引きずり込まれる

この試合で栃木が描いていたゲームプランはおそらく以下のようなものだろう。

・松本にあえてボールをもたせ、自分たちはハイププレス
・奪ったら縦に早く攻めてフィニッシュに持ち込むか、セットプレー奪う
・得点を狙うのはセットプレーか、相手のミスから
・松本のカウンターは、起点となる中盤のプレーをファウル覚悟で止める

そして、この試合ではこのゲームプランを90分間徹底して実行してきた。ひとつひとつ少し詳しく見ていこう。


松本にあえてボールをもたせ、自分たちはハイププレス

ジュニーニョのタスク

これは直近金沢戦でも行われた松本対策であるが、今の所明確な答えがなく苦しんでいる。栃木はボールをもたせるときにも工夫が施されており、松本守備陣の背後へロングボールを蹴り込むことで、背走しながらの守備を強いて、すぐには攻撃に転じられないようにしている。そして、松本がいざ最終ラインから攻撃を組み立てようとする時には、栃木の守備陣系はセットされている。2トップの1角に入るジュニーニョが守備時はトップ下のような位置取りになり、松本ボランチの佐藤と前の監視役として機能していた。かなり献身的にハードワークしており、攻撃の展開はほぼボランチ頼みになっている松本としては痛かった。

さらに加えて、松本の対応策も良くなかったことが、栃木ペースに追い風となっていた。この日の松本は自陣からボールを細かくつないで栃木のハイプレスを剥がそうとしていた。11分に佐藤→河合→浜崎とテンポの良いパス回しで中央のプレスを突破して右サイドへ展開したシーンは美しく見惚れるほどだった。と同時に、90分であと何回この崩しを見られるのだろうという不安もあった。個人のアイデアと技術に依存した即興性の高い崩しは、成功した時の快感がたまらなく、依存性が高い。

個人的には、今日の栃木相手の最適解はシンプルにロンボールを使って最終ラインの背後を突き続けることだったと思う。栃木は前線からハイプレスを掛ける意識が強く、その分最終ラインも高く設定されていた。ここ数試合最終ラインの押し上げが足らずに全体のコンパクトさが薄れていたとキャプテンの柳がコメントしていたことからも、この試合かなりライン設定には気を使っていたようだ。

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松本としてやるべきだったのは、高く設定された栃木最終ラインの背後をシンプルに突いて、局面をひっくり返すこと。そのためには裏抜けが必要となるが、スターターは横山でも良かったんではないかと個人的には思う。執拗に裏へロングボールを供給して、裏抜けを警戒した栃木のCBがラインを下げ始めたら儲けもので、空いた中盤のスペースは河合やベンチに座る小手川の大好物である。

ところが前述の通りこの日の松本は、栃木のハイプレスをパスで交わすことにこだわり過ぎていた。剥がすことにこだわった結果、横パスをカットされたり、寄せられて選択肢が少なくなったところで苦し紛れに前線へクリアというのがパターン。


奪ったら縦に早く攻めてフィニッシュに持ち込むか、セットプレー奪う
得点を狙うのはセットプレーか、相手のミスから

前述のように松本にハイプレスを掛けて奪ったら、ここからはシンプル。とにかく縦に早く攻めるというのが統一されており、仮にフィニッシュに持ち込めなくても何かしらのセットプレーを奪えればOK。

なにせ試合前の段階で全18失点中、38%にあたる7失点をセットプレーから喫している松本である。全15得点中46%にあたる7得点をセットプレーから奪っている栃木からしたら、ここを狙わないわけがない。徹底的に松本を研究し、仕込んできたセットプレーから沈めるというのが試合前のプランだっただろう。


松本のカウンターは、起点となる中盤のプレーをファウル覚悟で止める

これには試合を通じてフラストレーションを溜めた松本サポも多かったのではないだろうか。自分も少しこの試合の判定には疑問を感じる部分もあったが、判定については一旦語らないでおく。

栃木にとって怖いのは、守備陣形が整っていない状態で松本のカウンターを受けることだ。ここまで述べてきたように栃木がロングボールを使用するのも全て、自分たちが想定の範囲内で守備ができるようにするためである。イレギュラーとなるカウンターは失点の可能性が高くなってしまうため、起点となる中盤の河合や鈴木、前あたりがボールを持った際に目を摘んでしまおうという考え方である。もちろんファウル無しで止められるのが理想だが、ターンのうまい河合などは難しいときもあるので、突破されるよりはカードもらうほうがましということでファウルでも止めているという感じだろう。


のれんに腕押し

栃木のやりたいようなサッカーにいわば引きずり込まれてしまった形になった松本。前半の飲水タイム、ハーフタイムを経て前線へのロングボールを少しずつ利用するようになったが、決定打に欠けて大きく流れを引き寄せられない。

しびれを切らした柴田監督は後半18分に浜崎、前、阪野を下げて、田中パウロ、横山、戸島を入れる3枚替えを敢行。3-5-2のインサイドハーフに鈴木を入れて右ウィングバックに田中パウロというややファイヤーフォーメーションで挑んでいく。ところが、クロス爆撃を行おうにも高さのある鈴木はポジションを一列下げていることもあり、組み立てに関与する回数が多く、ゴール前の迫力不足は否めず。

そうこうしていると後半26分、再び試合が動く。村山のクロスをダイレクトで前線に弾き返されると、松本ペナルティエリア付近で矢野が収める。橋内が対峙して対応し、戻った下川が抜かれた場合のフォローに入る。しかし矢野はバイタルエリアでフリーになっていた途中出場の松岡へのパスを選択。松岡が左足を振り抜いた強烈なシュートはクロスバーに弾かれたが、こぼれ球を森がダイレクトボレーで叩き込んでネットを揺らす。栃木に貴重な追加点が入った。

このシーン、森のダイレクトボレーはゴラッソでGKの村山もノーチャンスだった。個人的に課題と感じたのは、松岡のミドルをほぼノンプレッシャーで打たせてしまっていることだ。シュートに対してブロックに入っている松本の選手はおらず、ほぼ思い通りの軌道のシュートだったはずだ。今季の松本がクロッサーに対して寄せが甘いという話はちょこちょこさせてもらっているが、この場面も根本の課題は同じと感じている。なぜか緩くなってしまう守備はどう改善したら良いものだろうか・・・。

正直な話、失点後の選手の動揺っぷりを見ていても、2失点目を食らった時点でかなり精神的には厳しかった。下を向いてしまう選手も散見されたし、この日枠内シュートがここまで0本だったという事実も、より絶望感を与えていたかもしれない。

ただ現実は残酷で、後半39分に再びセットプレーから柳に決められて3失点。1失点目の部分で多く書いたが、やられ方としてはほとんど同じである。特筆すべき部分としては、柳が矢野をスクリーンのように使って大野のマークを外していることだろうか。矢野はクロスに対して競りに行っていないことからも最初からターゲットは柳で、柳をフリーにするためにデザインされたセットプレーだった。栃木としてはしてやったり、松本としてはあまりにも脆かった。

その後、後半アディショナルタイムに戸島がこの試合初めて枠内にシュートを放つも、オフサイドの判定。シュート4本、枠内シュート0でこの試合を終えることとなった。


まとめ

前半20分すぎのプレーについて、試合後に村山のInstagramへの投稿や、両クラブからの公式声明など予想以上に波紋を呼んでしまっている。もちろん僕としても議論されるべき事象であるとは思うが、今回のレビューでは割愛させていただく。

というのも、試合の内容にフォーカスしたとしても完敗だったといえるからだ。栃木の練ってきたゲームプランに対して、適切な対処をすることができず、相手の得意な土俵に引きずり込まれて試合を決められてしまった。60%以上のボール支配率を記録しながら、枠内シュート0に終わったというデータがすべてを物語っているだろう。そう、僕らはボールを保持していたのではなく常に持たされていたのであり、うまく守られていたのである。

試合内容以外にも、非常に引っかかっている部分があるのだが、その話をすると長くなってしまうのでまた別の記事で書かせていただこうと思う。個人的には、かなり不安・危機を感じている内容であるので、もし投稿された際にはぜひ読んでいただき一緒に考えていただきたい。

もしかするとチームは内部崩壊の危機を迎えているのかもしれない。


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