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【でも信じてる】J2第27節 松本山雅×大宮アルディージャ マッチレビュー

スタメン

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松本は敗れた前節と同じスタメン。ベンチには表原玄太が5試合ぶり、山田真夏斗が6試合ぶりに名を連ねた。

中断期間明けの秋田戦は4-1と快勝したが、延期となった京都戦を挟んで、続く愛媛戦は完封負け。17本ものシュートを放ちながら、枠内はわずかに3本とフィニッシュの精度に課題を残す結果に。

対する大宮は7試合勝利から遠ざかっている状態。特に前節岡山に敗れるまでは5試合連続で引き分けと勝ちきれない試合が続いている。好材料はどの試合でも得点が奪えていたことだろうか。また、ホームでは3月27日のJ2第5節長崎戦以来勝ち星がなく、サポーターに勝利を届けたい思いは強いだろう。

そんな状態で前節の岡山戦からは3人の変更。櫛引、大山、小野がスタメンから外れて、代わって河本、菊池、小島が名を連ねた。前回対戦時に松本を苦しめたFWの松田はベンチ外。監督交代後にやや序列を落としてしまっているようである。


ハマらないプレッシング

立ち上がりの10分ほどは松本が押し込む時間帯が続いたが、しっかりと自陣でボールを握って大宮がペースを取り戻すと、以降は80分近く主導権は大宮にあった。最初の10分間に関しては、むしろ大宮が少し様子見で入ってきたがゆえに松本がボールを持てていただけであり、それ以降の時間帯がこの試合の本来の姿だったと言えるだろう。

大宮は4-3-3でスタートするが、ボール保持をする際にはやや配置に変化を加えてくる。2CBが左右に開き、間にボランチの片方(主に三門)が落ちて3枚で最終ラインを形成。サイドバックを高い位置に押し上げると同時に、もう片方のボランチも受け手として中央で顔を出す。最終ラインで数的優位を確保しながら相手のプレスを剥がし、徐々に前進していくのが基本的なビルドアップの形だ。

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これに対して松本のプレッシングはほぼ機能していなかったと言っていい。上の図のように大宮は2CB+ボランチの3枚で最終ラインを構成している。松本のプレッシング隊は2トップ+トップ下の3枚。この時点で同数なのだが、さらにプレッシング隊は、降りてきて受け手になるボランチの小島や菊池へのパスコースも気にしながらプレスを掛けないといけない。実質3人で5人くらいの相手を担当していたことになる。そもそもの個のクオリティが高い大宮が相手である。数的不利なまま相手のビルドップを阻害できるほど甘くはなかった。

構造的に見ても前線からのプレッシングは難しそうとわかったが、実際にピッチで戦っている選手はよりリアルに感じていただろう。試合後のコメントで阪野も、プレッシングに関してかなり迷いが生じていたと話をしていた。実際に迷いが現れていたシーンがあるので取り上げてみる。

試合時間7:20~くらいからの場面。
三門が河面にボールを預けたところで、阪野は西村へのパスコースを切ることを選択して西村の方へ寄っていた。それを見た三門は阪野とは逆の動きをしてスペースでボールを受けて前を向いた。

このシーンの何がまずいかというと、阪野がプレスをかけようとした時点で局面的には3対1になってしまっていることだ。鳥かごをやっているみたいな状態で、どれだけ一生懸命プレスを掛けてもボールを奪い取るのは難しいだろう。この場面だけではなく、プレッシングに行くも、数的優位を確保している大宮にあっさりと交わされてしまう場面はかなり多かったと思う。

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さらにもう一つ、この直後のプレー。
この場面では大宮の右サイドにボールが渡り、松本は人数をかけて相手の攻撃を右サイドに囲い込んで奪ってしまおうという意図が見えたシーン。しかし、ここではフォローに入ってきた小島に鈴木国友と佐藤和弘がふたりとも寄せてしまい、中途半端な囲い込みに終わってしまう。結果としては、河本からGKの南を経由して松本の人数が手薄な逆サイドへ展開されてしまった。

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前半を通して松本のプレッシングは機能しておらず、むしろ前線が相手の最終ラインや中盤へのパス出しに制限をかけられないことにより、守備面でも不具合を生じさせてしまっていた。

これは阪野や鈴木、小手川の個人の問題というよりは、それ以前の構造的な問題や大きい。構造上の欠陥には目を瞑っても大宮のビルドアップを阻害できると考えていたのか、はたまた選手の意識の問題なのか。そのあたりは次節での改善に期待したい。


完璧に崩された先制点

松本のプレッシングがハマらなかったことで、大宮の最終ラインは比較的時間とスペースの余裕を得ることになった。じわりじわりと横パスをつなぎながら松本守備陣の綻びを探りつつ、すきを見て河田が最終ラインの背後を狙うという時間帯が続く。霜田監督から指示があったかどうかは定かではないが、大宮はゆったりとボールを回して松本の前線を食いつかせつつ、最終ラインを引き出すことを狙っていた。

先制点を献上したシーンもその流れから。
最終ラインでパスを繋ぎながら、左サイドに降りてきた菊池へ。菊池は近くの三門へつなぎ、三門からセンターサークル内の小島へボールが渡る。この時点で鈴木国友はマークを外しており、阪野は馬渡へのパスコースを切る立ち位置を見せた。つまり、小島に対して誰もタイトな守備にいけなかったのである。十分な時間とスペースを与えられた小島は見事なロングフィードを供給し、黒川の絶妙なラインブレイクも重なってネットを揺らすことに成功。大一番で貴重な先制点を奪取されてしまう。

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この失点場面で気なる点はいくつかある。

まずは小島を完全にフリーにしてしまっていたこと。ここまで述べてきたように大宮の数的優位を活用したビルドアップに松本のプレッシングはボロボロ。前線の阪野、鈴木国友、小手川あたりはプレスに行っていいのか、行くと背後のスペースを使われるのではないか...などと迷いに迷っているのがプレーから見て取れた。そんなときに必要なのは、後ろからの声。つまり最終ラインからの指示である。「行け!」「行くな!」というようなプレッシングの指示の声がほぼ聞こえてこなかったのは、よろしくないだろう。星がリーダーシップを持って全体の統率をする必要があった。

また、もうひとつはDFラインのライン設定である。前からのプレッシングが機能していないにもかかわらず、中途半端にラインを高く設定していたのはずっと気がかりだった。先制点を奪われたときにも、中途半端に上げた最終ラインの背後を突かれており、ここにおいても声を出して全体を統率していくリーダーの必要性を感じてくる。


大宮のプレスに屈したビルドアップ

対して、松本のビルドアップ、さらに大宮のプレッシングについても少しお話したい。

結論から言うと、松本は大宮のプレッシングに大苦戦をした。3バックに対して3トップ、両ウィングバックにはサイドバック、ボランチにはトップ下の菊池とボランチの小島が一列前に出てきて襲いかかる。数的同数のプレスをかいくぐれるほど、松本の組み立ては成熟しておらず、自陣でのロストを連発。前半は平川もなかなかリズムをつかめていなかった。

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最終ラインでのつなぎが怪しくなったら、素直に前線2トップめがけてロングボールを蹴り込むのがセオリー。だが、今日は2トップが共に大宮のCBに競り勝てず。自陣でボールを持っても大宮のプレスを剥がして前進することができず、ましてや大宮のゴール前まで持ち込んでの決定機など一度も作ることができなかった。

シュート0本。このスタッツを見ただけでもわかる、苦しい状態で前半を終える。


軽率な2失点目

1点ビハインドで試合を折り返した松本は、後半の頭から小手川に代えてセルジーニョを投入。守備に追われてボールタッチの回数が少なかった小手川を45分で諦める。代わって入ったセルジーニョは、前線で味方の上がる時間を作れる選手。大宮に押し込まれる時間が増えていた松本にとっては、セルジーニョを起点に盛り返そうという意図が見えた。

しかし、その目論見はわずか30秒で砕け散ることになる。自陣右サイドでボールを持ったセルジーニョが河面にきれいに奪い去られると、河面はそのままワンツーでバイタルエリアに侵入。マイナス気味のクロスに黒川が合わせて追加点を奪われてしまう。

この場面、いくつか気になった点がある。まずはカウンターの起点となってしまったセルジーニョのボールロスト。松本の所属選手の中ではトップクラスの技術を備えており、彼にボールを預けたら簡単には失わないという信頼があったはずだ。加入後間もないにも関わらず、自然とボールが集まったりセットプレーのキッカーを任されていることからも、チーム内での評価は高いのだろう。そのセルジーニョがボールを失った場面で、攻撃に移ろうと重心を前がかかりにしていた松本の守備のバランスは崩れていた。簡単にボールを失わないはず、という絶対的な信頼が裏目に出てしまった格好だ。

次に、ロストしたあとの平川の対応について。ワンツーを受けた菊池に対して、自分の守っていたスペースを捨てて奪いに行く姿勢を見せた。結果として、奪いきれずに、逆に平川が空けたスペースを河面に使われてラストパスを供給されている。守備の原則に照らし合わせると、持ち場を捨てて出ていくならば奪い切る守備が求められる。それが仮にファウルであっても、である。そうしなければ、今回のようにむしろ相手に攻める隙を与えてしまう。ここらへんの判断は課題として抱えている部分だと思うし、今後磨いていけば1ステージ上のボランチになれることは間違いない。


逆境を跳ね返せなかった45分

試合後に名波監督もコメントしていたが、正直後半立ち上がりの失点で選手の心は折れ掛けてしまったのだろう。1点ビハインドで迎えたハーフタイムに監督が喝を入れ、逆襲に向けての策を授け、セルジーニョを投入するという反撃の狼煙を上げた矢先の失点である。精神的に大きなダメージを受けただろう。

それでも選手たちは果敢に攻め続けた。山口一真、伊藤翔、表原玄太と攻撃のカードを立て続けに切って前線を活性化するとともに、大宮を押し込んでいくようになる。しかし、途中から投入された選手は、怪我明けであったり、実戦から遠ざかっていたり、加入して間もなかったりした面々。ゴール前に人数をかけて固める大宮に対して、コンディションが万全でない選手や周囲との連携が確立されていない前線で太刀打ちできるほどには甘くなかった。

投入された選手のキャラクターも少し違和感を覚えた。セルジーニョと山口一真は、ともに左サイドに流れてボールを受けたがる傾向にあり、カットインしての右足シュートが十八番。プレーエリアとプレースタイルが似通っている。伊藤翔に関しては鹿島所属時代も見ていたが、上背はあるがストロングヘッダーというタイプのFWではない。どちらかといえば、DFとの駆け引きで一歩先にクロスに合わせるワンタッチゴールが得意な選手で、典型的なボックスストライカーである。なので、単純にクロスを放り込んだ先のターゲットとして機能するかと問われれば、答えはノーだろう。

選手層は厚いが、怪我や何らかの理由でコンディションが万全ではない選手が多く、実は試合で起用できる選手は限られているというのが現状だ。また、前述の通りポジションやキャラクターが被っている選手もいることから、セルジーニョ・山口一真・伊藤翔といった新加入の選手をチームにはめ込むにもまだまだ時間を要しそうな気がしている。

そんなことを考えていたら、カウンターからさらに2失点。いずれも攻撃的なカードを切って、チーム全体のバランスを崩したところを的確に使われてしまった。終わってみれば4失点での完敗。広角争いの直接対決は2連敗、公式戦3連敗でホームに帰ることとなった。


総括

負けるべくして負けた試合だろう。プレッシング、ビルドアップ、カウンターなどあらゆる場面で大宮のクオリティに屈してしまった。思えば比較的松本が押せていた前半10分間は、大宮にとって松本の出方を伺うと同時に、攻略法を見つけ出すための時間だったのかもしれない。最初の10分間はよかった、と捉えてしまうのは危険だ。間違いなくこの試合は完敗だった。

さらに状況として悪いのは、7試合勝利なし(うち5試合連続引き分けを含む)というように勝ちきれないことを課題としていた大宮に対して、4得点で無失点勝利という最高の結果をプレゼントしてしまったことだ。この勝利で選手は自信を取り戻すだろうし、チームとしても一体感を持って次節以降に臨めるはず。そして、4得点はすべて前線に選手。さらに勢いを増してしまいそうである。

この連敗で降格圏とわずかに勝ち点差1となり、得失点差-21はリーグワースト。つまり、次節引き分け以下の結果に終わって、降格圏のチームが勝点を積んだ場合には一気にどん底に落とされる可能性がある。そして、ここから磐田・京都・東京Vと中2日~3日の連戦とハードスケジュールが続く。

圧倒的に逆風しかないが、試合後のコメントで次節以降は大幅にメンバーを入れ替える可能性を示唆していた。これまで不動だったポジションにもメスが入るかもしれない。それだけ追い込まれてきたということであり、危機感は感じるが、逆に楽しみでもある。これまで出番を得られていなかった選手、例えば山田真夏斗や表原玄太などが出てきてアグレッシブなプレーを見せてくれれば、それだけでもチームの雰囲気は明るくなるだろう。

もう悠長なことは言っていられない。相手が首位争いをしているチームだろうが関係ない。

"Partido a Partido"

スペインの強豪アトレティコ・マドリーの監督ディエゴ・シメオネがよく使う言葉だが、一試合一試合目の前の試合に集中しようという意味だと理解している。

周りの雑音を気にせず、ただひたすらに目の前の試合に集中しよう。そしてひとつひとつ勝利を積み重ねた先で、笑顔でいられると信じて。


One Sou1


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