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2021年松本山雅FC選手総括【MF編①】

この記事では現実を受け止めて来季へ向けて歩みを進めるために、まずは今シーズンを総括したいと思う。

GK編、DF編、MF編①、MF編②、FW編と5回に分けて各選手の短評を書いていく予定。夏に移籍していった選手は含めるが、他クラブに期限付き移籍している面々は僕が直接プレーを見れていないので割愛する。

ではいってみよう。

GK編、DF編はこちら!


凡例

#背番号 選手名
リーグ戦出場試合数(うち先発試合数)出場時間 得点 アシスト


MF編

#4 安東輝

14試合出場(先発10試合)761分 0得点 1アシスト

松本に加入してから出番に恵まれなかったが、水戸への武者修行を経て待望の復帰。副キャプテンにも就任し、チームを引っ張る活躍が期待された。出だしは順調だったと言えるだろう。開幕スタメンを掴み、第2節の京都戦では、インテンシティの高いゲームで持ち前の球際の強さを発揮。今年の核となりうるポテンシャルを見せていた。
しかし、攻撃面で迫力を出せなかったこともあり、チームは試行錯誤を続けてく。システムをアンカーとインサイドハーフを置く3-1-4-2から3-4-2-1へと変更し、鈴木国友や河合秀人、横山歩夢といった攻撃的な選手を多く配置する流れへ。するとその煽りを受けてポジションを失ってしまった。
痛恨だったのは、久々の出場となった第16節岡山戦に太ももの肉離れで長期離脱を余儀なくされてしまったこと。本格的に合流したのは3ヶ月後。残留争い真っ只中の10月末に戦列復帰すると、チームに足りていなかった闘えるボランチとして信頼を取り戻し、主力として最後までプレーした。
司令塔としてパス出しに優れる選手を多く揃えたボランチにおいて、彼は泥臭い仕事を一手に引き受けられる貴重な人材。ボールホルダーへの寄せの速さと的確な予測はチーム随一だ。ボール奪取後のパス出しや、前線に顔を出した後にやれることが増えてくると、もう1つステージを上げそう。来季、彼が怪我なくフル稼働してくれれば、ボランチの1枠は決まったと言ってもいいだろう。4番を背負ってキャプテンマークを巻く姿が見たいなあ。


#7 田中パウロ淳一

23試合出場(先発なし)444分 0得点 0アシスト

評価が真っ二つに割れるシーズンだったと思う。23試合出場は全体で11番目とそこそこの数字だが、先発はなし。出場時間を見ると444分と、夏にチームを去った浜崎拓磨の438分とほとんど変わらず、高卒ルーキーの横山歩夢の方が長くピッチに立っていたことになる。1試合平均に換算しても20分弱ということで、決して納得のいくプレー時間を得られないままシーズンを終えてしまった。
ノッていると手がつけられないドリブルを活かした縦突破が一番の持ち味。左足から繰り出される鋭いクロスは、天皇杯で見事なアシストを決めたように、ハマれば強烈だった。それでも、なかなか序列が上がってこなかったのは、守備面での貢献度の低さが収支を考えるとマイナスだったからに他ならない。正直先発として長い時間引っ張るにはリスクが大きかったと思う。そもそも守備の原理原則が抜け落ちている場面も多々あったので、彼の能力云々というよりは、これまでのキャリアで守備を求められる機会が少なかったのが影響しているのかなあと思ったり。
加えて、キャンプ中のシステム変更により、当初想定されていたサイドハーフではなくウィングバックで起用される事が多かったのも逆風になった。守備のタスクが一定求められることに加えて、サイドバックとサイドハーフが配置される4-4-2と比較して、サイドのポジションはひとつしかない。外山凌・下川陽太・宮部大己・前貴之・表原玄太・村越凱光と5~6人で2つの席を奪い合う激戦区。守備で計算できる選手がライバルに多かったこともあり、ビハインド時の切り札としてベンチ入りすることが多かった。
終盤になると縦への突破を対策され、あからさまに警戒されて手詰まりになったり、左足を意図的に切る守備で無効化されたりしていたのは気になった。渡り鳥っぽいキャリアを歩んできているので、来年も居てくれるかは分からない。レジェンド田中隼磨をイジれる数少ない選手なので、元気な状態で見たいけどなあ。


#8 河合秀人

38試合出場(先発31試合)2479分 3得点 0アシスト

かつてライバルの長野パルセイロにも在籍し、昨季琉球でブレイクした遅咲きの俊英。シーズン中からずっと言っているが、あと2歳若かったら松本に来ていない。多分J1に引き抜かれていたと思う。それくらいの実力者。
ただ、今季はタスクオーバー気味だった。ドリブル・パス・シュート・プレッシングとオールラウンドにこなせてしまうが故に、困ったら彼になんとかしてもらうという場面が目立った印象。特にハイプレスを志向した試合では、高校のサッカー部がボロ負けした後の罰ゲームかと思うくらいに走りまくっていた。守備でスプリントを繰り返していたので、いざボールを持つとエネルギー不足。加えて、琉球と比べて彼の下までボールを運んできてくれるパサーも不在だったので、ボールを受ける位置が低かったのも災いした。一番のストロングポイントであるバイタルエリアでのダイレクトプレーや、ボランチと最終ラインの間で受けるプレーが鳴りを潜めてしまったのは、組織的な問題が大きかったように思う。
後半戦に入ってセルジーニョ・平川怜といった選手が入ってきて、最終ラインからパスを引き出して捌くというタスクから解放されたが、チームがロングカウンター主体になったことで彼の役割も変化。トップ下+2トップシステムが定着するとセルジーニョにポジションを明け渡し、尻すぼみなシーズンとなってしまった。
30歳を間近にしてもう一花咲かせるために他クラブへの移籍を決断してもおかしくはない。残ってくれたらスーパーな活躍をしそうだけども。

被ファウル数51はチームで断トツトップ。ゆっくり休んでほしい。
あとお子さん可愛すぎる。天使。


#10 セルジーニョ

14試合出場(先発10試合)944分 1得点 4アシスト

窮地のチームを救うために戻ってきた背番号10。彼の在籍時から半分以上が入れ替わっていたが、まるでシーズン頭から居たかのようにすぐさまフィット。正確な右足のキックで4アシストと苦しむチームの希望であり続けた。
昨オフに大量補強を行った影響で夏に余力が殆ど残っていなかったが、後半戦の巻き返しに向けて戦力を上積みしないわけにはいかない。そこで白羽の矢が立ったのがセルジーニョだった。漏れ聞こえるところだと、監督というよりはクラブ主導で補強に動いたようで、韓国で思うような出番を得られていなかった選手サイドとの思惑が一致した格好だろう。
個人的に悔やまれるのは、彼を活かす最適解にたどり着くまでに時間を要してしまったこと。最終的にはトップ下に据えて、安東輝と佐藤和弘がサポートするという形に落ち着くのだが、あと5試合...いや3試合早くこの形にたどり着けていれば...と。加入当初は平川怜と佐藤和弘に加えて、ボールに触りたがるセルジーニョを置くとトリプルボランチのような配置になってしまい、後ろに重たくなる課題が顕著だった。名波監督が導き出した解決策は、セルジーニョとの心中。ボールプレーヤーの山口一真や平川怜を外し、セルジーニョに組み立てと崩しの全権を付与してボランチはサポート役に回す。結果的に、榎本樹という相棒を得たことでアシストを積み上げ、得点が取れるようになったのはポジティブな材料だった。それだけに、もっと早くこの解に至っていればと思ってしまうのである。
年俸はそこそこすると思うが、チームの中心であることに変わりはない。昨オフに契約面で折り合わずに退団となった経緯を考えても過度な期待は禁物だが、フルコンディションで理不尽なミドルを叩き込むセルジを見てみたい。

エゴサ能力が高いことで有名な奥様。


#17 表原玄太

19試合出場(先発11試合)1021分 1得点 0アシスト

唐突にスタメンに名を連ねては次の試合でベンチ外になったりする。2021シーズンの松本山雅における3大ミステリーのひとつ。
出場した試合でのプレーがめちゃ悪かったわけではないのだが、スポットでの起用に留まってしまった。馬力があって守備も厭わないので、序盤戦はインサイドハーフで起用されることも多かった。河合秀人と表原玄太が並んだ際は、高校のサッカー部がボロ負けした後の罰(以下略。
定位置を掴めなかった理由はなんだろうと考えてみると、ウィングバックに求められる役割とハマらなかったんだと思う。守備時は5バックの1角を形成することになるので、167cmと小柄な彼はどうしても高さ不足が否めなくなる。元々攻撃的な選手なので、サイドバック的な働きを求められると下川陽太や外山凌に一日の長があったかなと。持ち味の突貫ドリブルでチャンスメイクする場面も作り出していたが、フィニッシュの部分で精度がなかなか上がってこなかった。僕が言うのもおこがましいが、もう少し得点に絡めるようになると、J2上位やJ1からも引く手数多の選手になりそうだと思う。
近年、サイドバックやウィングバックに求められるタスクは多岐にわたっており、運動量の一本槍では勝負しきれないところもあるかもしれん。インサイドハーフで走って死んでをやるチームなら需要がありそうだが来年は居てくれるだろうか。


#22 米原秀亮

12試合出場(先発3試合)354分 0得点 0アシスト

未完の大器は今季も未完のままだった。184cmと高さを兼ね備えた左利きのボランチ、とロマンの匂いムンムンの選手だが、松本に来てから伸び悩みが続いている。
左足から繰り出されるパスは高次元で、特に僕が好きなのはグラウンダーの縦パス。身体を外側に開きながら、まさに刺すような楔のパスは一気に局面を打開する。ロールモデルは昨季在籍して川崎へ羽ばたいていった塚川。攻守におけるダイナミズムを持ち味にインサイドハーフで真価を発揮した塚川と比べると、中盤の底でゲームを組み立てるパサーの色が濃い。
一方、彼の課題も明確。守備が軽すぎるのだ。ボランチはポルトガル語でハンドルを意味するように、チームをコントロールするポジション。それと同時に、日本では昔から”守備的ミッドフィルダー”という言葉で親しまれてきた。僕はどちらの言葉も正しいと思っていて、チームの心臓部であり、最終ラインの前に位置する防波堤でもある。彼の場合、前者としてはスペシャルなのだが、守備がどうしても足を引っ張ってしまう。
象徴的だったのは、第16節岡山戦で上門に叩き込まれたシーン。バイタルエリアで安易に足を出してしまい、ダブルタッチで交わされてエリア内への侵入を許している。文字通り”軽い”守備で、球際での粘り強さを重視していた反町監督のもとで出場機会が限られていたのも分かる気がしてしまう。

それでも、クラブからの期待は大きかった。事実として、第29節から5試合連続でベンチ入り。名波監督は若手に対して「2週間~3週間継続して良いパフォーマンスを見せていないと起用しない」と明言しており、残留争いの緊張感高まっていた時期にメンバー入りしたことからも期待は伺える。ただ、そのチャンスを活かしきれなかった。一番印象に残っているのは、第29節東京V戦。ビハインドの状態で投入されたが、組み立てでイージーなパスミスを複数回犯してしまい、反撃ムードに水を差してしまった。交代した平川怜がノーミスだっただけに、悪目立ちしてしまったのも不運だったが。
キャリアの分岐点に差し掛かっており、環境を変える選択肢も無きにしもあらずだろう。大木監督のもとでパスサッカーを展開する古巣の熊本なんかはハマりそうだが果たして。


#23 外山凌

41試合出場(先発36試合)3052分 2得点 3アシスト

出場試合数、先発数、出場時間いずれもチームトップ。大車輪の活躍だった。多くの選手が怪我で離脱する中でも、タフにシーズンを戦い抜き、無くてはならない存在だったと思う。加えてこれだけ多くの試合でプレーしながら、一度も警告を受けなかったというクリーンなプレースタイルも称賛されるべきだ。
開幕直後から左ウィングバックで定位置を確保し、右の下川陽太とともに鉄板の両翼としてプレー。監督交代直後の第22節~第29節くらいまで先発を外れる試合が増えたが、第30節以降は再びレギュラーとして君臨した。先発を外れる前の時期は、出ずっぱりで疲労の色が濃かったので、休ませる意味合いも強かったと思う。同じくハードワークしていた河合秀人なんかも少し休ませていたし。実際に、先発に復帰してからキレが増しており、クロスの精度も試合を追うごとに上がっていた。
DFと正対してスピードをやや落としたところから、右足のまたぎフェイントを入れつつ同時に左足のつま先で切り替えして、抜ききらずに上げるクロスは彼の十八番。形に入ったらJ2で止められる選手はおらず、オウンゴールを誘発するインスイングの速いクロスはチームの武器だった。
左右両足を使えて、タフなサイドバックは市場価値がめちゃ高いと思うので、来年は居ない覚悟はできている。

プライベート写真は大体サングラス。くっそイケメンである。

眼鏡も似合う。神様色々与えすぎ。


#24 平川怜

19試合出場(先発12試合)1178分 0得点 0アシスト

FC東京から期限付き移籍でやってきた至宝。アンダー世代では久保建英と並び称された天才で、将来を渇望されていた一人である。
しかし、柴田体制ではカウンターを重視するスタイルと中盤にプレー強度の高さを求めたがゆえにほとんど試合に絡めず。彼にとってターニングポイントとなったのは名波監督の就任であったのは間違いない。同じく天才肌のボランチとして鳴らした元代表の10番は、自分と重ねたかどうかは分からないが、平川怜を重用する。
ボランチを最終ラインに落とす可変システムを用いながら、丁寧にビルドアップするスタイルに舵を切ったチームにおいて、彼は水を得た魚のように躍動する。止める蹴るの技術は明らかに格が違ったし、受ける前に何度も首を振る細かな予備動作、ボールを持てば自然と顔が上がり、背筋をピンと伸ばした姿勢の良いドリブル。徐々に見せ始めた才能に、正直かなり興奮した。こんなにすごい選手が松本に来たんだと。
ただ、同時に彼がなぜ伸び悩んでいるかも分かってきた。ボールを持ったときにはスペシャルな一面を見せてくれるが、オフ・ザ・ボールでの貢献度が低いのだ。名波監督からも指摘されていた球際の強さ、守備時のポジショニングだけではなく、前線への飛び出しやパスを出した後の動き直しなど。
試合を通して70%以上ボール支配できるチームならば多少オフ・ザ・ボールに難があっても目をつむるだろうが、そんなチームは世界中見渡しても多くはない。特に元々ボールを握り倒すスタイルを標榜しているわけではない松本では、守備ブロックに組み込まれた際の脆弱性が目立ってしまったように思う。
新監督が就任する古巣で勝負することも考えられるが、今季の新潟を見ている限り、アルベルト監督はボランチにハードワーカーを起用する傾向にある。どちらかと言えば、ボールを握りたい名波監督の下でもう一年挑戦しつつ、オフ・ザ・ボールの動きを磨いていくほうがいいのではないかと思っている。最終的な判断は彼自身が下すし、レンタル元の意向もあるのでわからないが。個人的にはもっと見てみたい選手である。

去年の12月から更新が止まっているTwitter。



やっぱり人が多い!!!笑

MF編は2回に分けることにしますmm


One Sou1


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