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2022 松本山雅FC選手総括【MF編①】

GK、DFとボリューミーに振り返ったのでテンションが続くか不安になってきた!


GK編、DF編はこちら!


見方

#背番号 選手名
リーグ戦出場試合数(うち先発試合数)出場時間 得点 アシスト


#4 安東輝

13試合出場(うち先発9試合)768分 0得点 1アシスト

今シーズンも負傷に悩まされることになった。飯田の背負った背番号4を継承し今季こそは主力としてフル稼働が期待されていたが、小さな負傷を繰り返してしまい1ヶ月~2ヶ月の離脱が絶えず、スタメン定着とはならなかった。
彼の強みは豊富な運動量と、ボランチやインサイドハーフの位置から前線に飛び出していけるところ。特に伸びていたのは飛び出すタイミングとエリアで、いわゆるハーフスペースと呼ばれるエリアに積極的に飛び出してサイドから斜めのパスを引き出す動きは彼にしかできない強みだった。
一方で気がかりだったのは持ち前の守備の部分で粗さが見られたこと。中央にどっしり構えるというよりは持ち場を離れてもボールを狩りに行くスタイルであるのだが、出ていってボールを奪えずに終わってしまうことが目立った。インターセプトに出ていって奪えずに入れ替われてしまい、最終的に相手を手で止めてイエローカードをもらうことも。
ボランチが相手を止められない問題は、前線がプレッシングを掛けた際に相手の選択肢を制限てきていなかったり、後ろが付いてきていないタイミングでプレッシングを掛けたりする組織的な側面も大きい。ただ、安東輝のような選手には組織的な歪みを吸収するような役割も期待されていたと思うので、彼がフル稼働できなかったのは誤算の一つだと思う。
さて来季こそはフル稼働を!というのが目標になるのだけど、怪我は癖になってしまっている気もするので、もう付き合いながらプレーするしかないのかも。個人的にはキャプテンマークを巻いている姿が見たいのだけどなあ。


#6 中山陸

8試合出場(うち先発2試合)268分 1得点 0アシスト

夏に期限付き移籍でやってきた若武者。クラブは結構前から目をつけていたようで、一定期間追いかけた上でのオファーとなった。
止める・蹴るといった基本技術は水準以上で、ボールを持った際のアイデアが豊富なタイプ。獲得したときのイメージとしては、引いた相手を崩す切り札、アタッキングサードで違いを出してもらえる選手という感じだった。もう少し具体的に言えば、菊井悠介への依存度が高すぎたので、プレー時間を分け合って負担を減らしたい意図もあったと思う。
ただ、実際に加入してプレーを見てみると、やや”軽い”プレーが悪目立ちしてしまった感は否めない。それこそ名波監督風に言えば”色気が出ている”プレーというか。名波監督はシンプルにプレーすることを求めていたし、練習では出来ていたのに試合で色気を出したことが逆鱗に触れてしまった。その後はシンプルにプレーするようになって事なきを得たが。
個人的に発見だったのは、右ウィングバックで起用された鳥取戦。出場停止が相次いだための苦肉の策だったが新しい可能性を秘めていた試合だった。中山陸を右ウィングバックに置くことで、中央よりはプレッシャーの少ないエリアで前を向いてボールを持てるようになり、右サイドで司令塔的な振る舞いが出来ていた。彼を起点にして4-4ブロックを横に揺さぶって崩していくさまは壮観で、こんなこと出来るようになったんや!と感動したんだけど、再現されることはなかった。
名波監督から一定の評価を勝ち取っていたと思うけど、一番評価してくれていた人がクラブを去って中山陸の去就も不透明に。ACLを控える甲府に戻っても出番があるかというと微妙なのでレンタルに出されそうだけど、うちはどうだろうか。


#7 田中パウロ淳一

8試合出場(うち先発2試合)329分 3得点 2アシスト

ジェットコースターのようなシーズンだった。昨季は4-4-2から3バックシステムに変更したあおりを受けて先発0という厳しい現実を突きつけられることに。今季4-4-2に再挑戦するということで出場機会が増えるかと思ったが、名波監督が採用した4-4-2のサイドハーフは一般的ではなく、内側に入ってくるインサイドハーフのような振る舞いだったのでハマらず。
それでも腐らずにアピールを続け、天皇杯で2トップの1角という新境地で結果を残すと、6月に出場機会が巡ってくる。初出場となったホーム藤枝戦でFWとして良い動きを見せたものの、翌愛媛戦では低調なパフォーマンスで終わってしまい10月まで出番を得ることはなかった。
ここで終わらないのが凄いところで、28節からジョーカーとして起用されるようになると、6試合で3ゴール2アシストと獅子奮迅の活躍。しかもチームに勝利をもたらす決定的な仕事が多く、月間MVPにも輝いた。
興味深いのは終盤に出番をもらったのはインサイドハーフでの起用だったということ。バランス重視の人選で試合をスタートしつつ、田中パウロ淳一の投入で一気に攻撃に重心をかけるというのがゲームプランになっていた。あえて後半にバランスを崩しにいく、試合をカオスに導くようなプランニングをしていたのでインサイドハーフで機能していたという背景は重要。スタメンで起用したり、他のチームで同様な使われ方をするか、と考えると微妙なところ。彼のインサイドハーフ起用は、四の五の言ってられなくなった名波監督が編み出した奥の手なので、彼のキャリアが広がったと単純に考えるのは難しいかも。
個人的に印象に残っているのは、ホームの信州ダービーで試合前にサポーターを煽っていた姿。チーム全体のウォーミングアップが終わったあとに居残りシュート練習をしていて、その流れからボールを高く蹴り上げてスタンドを煽ってボルテージを上げるという生粋のエンターテイナーぶりを見せてくれた。どこに行っても愛されるキャラであることは間違いないので、新天地でも頑張ってほしい。Jリーガーで替え歌するTikTokは本当に大好き。


#8 下川陽太

32試合出場(うち先発32試合)2781分 1得点 2アシスト

背番号を8に変更して心機一転。結果にもこだわっていくと語っていたシーズンだが、大きな故障もなくトップクラスの出場時間でチームを支え続けてくれた。一方で、左の外山凌の攻撃性能を活かすような形が多かったことで、右ウィングバックに入る下川陽太はバランスをとることが多く、得点やアシストは伸び悩んでしまった。愛媛や金沢で抜群の攻撃性能を発揮していた選手なので松本で活かしきれていないのは勿体ないと思っているが、スカッドを考えるとどうしても便利屋・バランサー的な使われ方になってしまう。
起用されたポジションも、左右のウィングバックだけではなく3バックの右センターバックも任されることが多かった。スピードがあるのはもちろんのこと、空中戦や1対1の対人守備にも定評があるので、センターバックとして起用されるのも分かる。彼が一人いてくれるだけで右サイドは安心して任せることが出来るので、監督としてはチームにいて欲しい人材だろう。
サイドで一年間タフに戦えて守備で穴を開けない選手となれば上のカテゴリーからのオファーがあってもおかしくない。年齢を考えるとステップアップをするにはギリギリで、背番号を8に変更したことからも、より攻撃的な役割で勝負したいと決断することもあるかもしれん。来季監督に就任する霜田さんのもとだったらサイドバックかセンターバックか微妙なところだし。バンディエラとしてチームを引っ張っていってほしい選手だけど。


#14 パウリーニョ

27試合出場(うち先発25試合)2088分 0得点 0アシスト

帰ってきた闘将。プレーと声でチームを引っ張ってくれるリーダーとして、原点回帰を掲げたクラブにとって古き良き松本山雅を知る証人として、3年ぶりに松本に復帰してくれた。
率直な感想としては、全盛期と比べると存在感が薄れてきてしまっているなというのと、やはりアンカーが最適ボジションではないなと。
狂犬のように相手の中盤に噛みつき、一人でボールを奪いきってしまうハードな守備が最大の持ち味。安東輝の項でも書いたが、ポジションを捨てて奪いに行ったにも関わらず奪いきれずに入れ替われてしまうシーンが目立ったかなと。
これはアンカーが最適ポジションではないという話とも繋がってくるのだが、パウリーニョの守備の生命線である”出足の良さ”が消えてしまっていたなと。アンカーというチーム全体のバランスを考える必要があるポジションに置いた影響は少なくなかったと思う。かといって、パウリーニョ以外にアンカーを安心して任せられる選手がいなかったのも事実だけど。
また、ピッチ内のまとめ役としても苦しんでいるように見えた。今季のゲームキャプテンに求められていたのはチームを鼓舞する役割だけではなく、ピッチ上で起こっている事象を正しく理解し、チームがどういった振る舞いをすべきか意思決定する役割。いわばピッチ上の指揮官。パウリーニョはどちらかといえば意思決定されたことを忠実に実行するタイプなので、未知のタスクに苦しんでいた。前貴之が移籍してから表面化するようになった、試合中の適応力の低下はパウリーニョが参謀を失ったことが直接的な原因かもしれない。前貴之移籍に伴うインパクト大きすぎ問題。


#17 表原玄太

リーグ戦出場なし

昨季はチームが苦しくなると出番を得る不思議な使われ方をしていたが、今季は一転して出番を得られず。めちゃくちゃ献身的に走ってくれるのだが、そこにプレスアルファの要素を発揮することが出来なかった。4-4-2のサイドハーフだと内側に入ってきた時のプレーが不安で、ウィングバックだと5バック化した時の守備に不安を抱えてしまい、シャドーだと決定的な仕事ができるかという部分で他の選手の方が…というジレンマ。彼を起用したいという決定打に欠けてしまう部分が本当にもったいなかった。
そんなことを思っていたが7月に栃木シティへ完全移籍で旅立っていった。移籍先では主力として出場機会を得て、結構結果も出しているようなので、ベンチ外が続いていた日々を考えれば正解だったのかもしれない。
まだ26歳。もう一度Jの舞台にもどってくることは十分にあると思うし、今後の活躍に期待したい。


#22 米原秀亮

5試合出場(うち先発3試合)257分 0得点 0アシスト

ロマン溢れる選手だが、今季も才能を開花させることは出来ず。序盤の走り出しは良かった。開幕スタメンを勝ち取ると、8節までのうち5試合に出場。4-4-2のダブルボランチとして計算されているように見えた。
というのも、ボランチの一角に求められていたのは最終ラインまで降りてビルドアップをサポートしつつ、長短のパスでゲームを作る能力。現スカッドで言えば米原秀亮の他に適任はいなかった。だかれこそ悔やまれるのは開幕戦、不用意に刺した縦パスを奪われたところからカウンターで失点してしまったこと。失点後、ピッチに仰向けに倒れ込んだ彼の姿を見て、この試合に懸けていた気持ちの強さと、やっちまった…という絶望感が伝わってきた。
チームが4-4-2から3バック+アンカーを置く方向性に舵を切ったことで出場機会が激減。アンカーには司令塔タイプではなく最終ラインの前でフィルターになれる選手を置きたがったので、守備の軽さが治らない米原秀亮には荷が重くなってしまった。
縦パスの狙い、グラウンダーで速いパスを出せるところは他の選手にないストロングポイントなのだが、その強みを活かす前段階となるベースの部分でマイナスが大きすぎる点は変わらず。球際の強さ、運動量といった現代サッカーでボランチに必須で求められる要素が上がってこないと宝の持ち腐れになってしまう感が強い。
夏に甲府へ出場機会を求めて移籍したが思ったような結果が出ず。年齢を考えるとそろそろ環境を変えるべきかもしれない。


#23 外山凌

30試合出場(うち先発28試合)2415分 6得点 5アシスト

今季のMVP候補。出場停止を除けばほぼフル稼働し、得点+アシストで2桁に乗せるという大車輪の活躍。昨年から引き続いて連戦の中でもコンディションを崩さずに試合に出続けるタフさは本当に感謝しかない。
元々攻撃性能が高い選手ではあったが、今季は得点力が開花。ウィングバックにペナルティエリア内まで飛び込んでクロスに合わせることを求めていた背景も相まって、右からのクロスにファーで詰めるシーンが多かった。いわき戦での2ゴールは今季ハイライトのひとつだろう。
持ち味の豊富な運動量と正確なクロスに加えて、今季は内側に入ってのプレーも可能という選手としての幅を広げた一年となった。インサイドハーフのような立ち位置を取って常田克人の上がりを促したり、長いサイドチャンジを蹴ったりと、それ外山凌の仕事なんかな?と思う場面もあったけど良い経験にはなったはず。
昨オフも契約更新が遅かったし、他チームからオファーがあって決めかねていたのではないかと推測。そして今オフも当然彼のもとには魅力的な話が舞い込んでくるだろう。それだけの成績を残しているし、年齢を考えても選手としてのピークを出来るだけ上のカテゴリーで迎えたいというのは至極当然の考えである。なんかお別れが近い気がするので、2年間本当にカオスな状態で懸命にプレーしてくれてありがとうございました。とお礼を。


#24 吉田将也

2試合出場(うち先発1試合)117分 0得点 0アシスト

思ってたんと違う!案件のひとりだろう。4バックを基本システムにすると聞いていたから再び松本に舞い戻ってきたのだが、蓋を開けてみれば大半の時間を3バックで過ごし、彼も試合に絡むことなくシーズンを終えてしまった。
おそらく縦ズレのことを指していると思うけど、守備戦術が身についてきたという理由で7節・8節と出番が巡ってきたが、それ以降はぱったり。個人的には悪くなかったと思うんだけどなあ。ペナルティエリア内まで侵入していく大胆さは下川陽太と比べても秀でていた部分だったと思うし。鳥取戦で中山陸を右ウィングバックで起用したのを見て、あー吉田将也じゃないんだ現実は厳しいなと感じたのを覚えている。
純粋な4バックのサイドバックの選手だと思うので、3バックを基軸にしているチームにいても出番が多くはなさそう。来季の霜田監督は4バックをベースに考える人だけど、サイドバックにはアップダウンを繰り返す突貫型というよりは、パス出しがうまい司令塔型を好む傾向にある。残ってくれたら吉田将也にとって選手の幅を広げるチャレンジになるとは思うけど、彼のキャリアを考えると強みを生かして他チームでバリバリ主力を張っていたほうが良い気もする。


MF編①は以上!ありがとうございました!

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