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2022 松本山雅FC選手総括【DF編】

振り返ってみると、なんだかんだ今季全試合を2回以上フルタイム視聴するという狂ったサイクルを続けていたので、それなりに各選手について思い入れがあったりする。

ということで、ポジションごとに各選手の個人的な総括を書いていこうと思う。

GK編はこちら!


見方

#背番号 選手名
リーグ戦出場試合数(うち先発試合数)出場時間 得点 アシスト


#3 田中隼磨

1試合(うち先発出場なし)3分 0得点 0アシスト

松本の誇り。今シーズンは偉大な選手のラストダンスとなった。昨季開幕戦で限界に達した膝の痛みと向き合いながら懸命のリハビリを続けてきたが、ホーム最終節を前にして突然の現役引退を表明。
名波監督の粋な演出もあって、相模原戦でベンチ入りし、再びアルウィンのピッチに帰ってきた。
試合後のインタビューで右足ではクロスを上げることすら出来ないほど膝の状態が悪化していたことを明かしていたが、左足で懸命に届けたボールから決勝点を呼び込むあたり”持っている選手”なのだろう。もしくは、これまで真摯にサッカーに向き合ってきた田中隼磨を労って、サッカーの神様からのプレゼントだったのかもしれない。
痺れたのは、彼がピッチに入ってきた瞬間からアルウィンの空気が一変したこと。昇格の可能性がほぼ消滅し、ややゆるいプレーに終止していた選手たちだったが、田中隼磨が手を叩き声をかけると一瞬にして引き締まり、キレを取り戻した。
強烈なリーダーシップ。これこそが直近2年間、松本山雅に欠けていたものであり、苦境に立たされたチームが欲していたものではなかったか。時は戻らないのだが、僕も彼がいてくれれば…と正直思ってしまった。僅かな時間ではあったが、それくらいの絶大な存在感を見せつけてくれたことに感謝したい。
引退後も松本山雅に関わってくれるのかどうかは分からない。生真面目なほどのサッカーへの接し方から学ぶことはサポーターの立場でも多かった。ぜひとも未来の松本山雅を担う人々に受け継いでいきたい偉大なる選手である。

このゴールは一生忘れない。ありがとう、お疲れ様でした。



#5 前貴之

16試合出場(うち先発15試合)1230分 0得点 0アシスト

今季の松本山雅が掲げていた”カメレオン戦術”において最重要な選手だったと断言できる。右センターバック、右サイドバック、右ウィングバック、ボランチ、アンカー、インサイドハーフ。3バックと4バックを使い分けていたチームにおいて右サイドと中盤のほぼ全ポジションを高い水準でこなせる前貴之は欠かせないピースだった。
試合中にシステム変更を行おうとすると、それに合わせて選手交代が必要になることが多い。さすがに前半のうちに選手交代枠を使えないのでハーフタイムまで待たざるを得なかったりするのだが、前貴之がいることで選手交代せずとも柔軟なシステム変更が可能だった。相手の出方を見て、振る舞い方を自在に変えることができたのはシーズン序盤の強みになっていたし、後出しジャンケンみたいなものなので猛威を振るっていた。
しかし、そんな彼は夏の移籍期間で古巣の山口へ戻っていった。キャプテンを任されいる選手がチームを捨てるのか?裏切りでは?など厳しい批判の声も挙がっていたが、個人的には彼自身も相当悩んだと思うし、決断を尊重したいと思っている。プロ選手が上のカテゴリーでプレーしたいと思うのは普通の感覚だし、ましてや残留争いをしている古巣から請われたら心が揺れるだろう。
そうはいっても彼の移籍した穴を埋めるのは容易ではなかったし、穴は埋まらなかった。チームは4バックを使うことを断念し、ピッチ上の指揮官を欠いたことで試合中の修正力はガクッと低下してしまった。シーズン後半、プランAが噛み合わないとそのまま押し切られてしまう試合が増えたのは、彼の移籍とは切り離せない。
チームとしての枠組みがしっかりしているチームで良さを発揮できる選手なので、個々の組み合わせの最適解を見つけるようなチームづくりをしていた今季の松本山雅とはちょっと合わせづらかったのかもしれない。スペシャルな選手だった。もう一度J1で見てみたいなあ。


#11 安田理大

5試合出場(うち先発出場なし)46分 0得点 0アシスト

元日本代表、オランダでもプレーした百戦錬磨の新加入選手。千葉でやっていた時から、さすがに往年のスピードやキレはなくなってきている様子だったので、試合を締めるカードになるのかなと思っていた。その観点だと、コンディションの問題なのか思ったより試合に絡めずに終わってしまった印象。
それでも、ピッチ外の部分でチームに与えた影響は計り知れない。田中パウロ淳一が自身のYouTubeで「今の自分がいるのは理くんのおかげ」と語ったり、外山凌や浜崎拓磨が「安田チルドレン」としてクロス練習に付き合ってくれたことや安田理大の声掛け・プライベートでのサポートに感謝していたり。比較的若手や出場経験の浅い選手が多かったチームを陰ながら支えてくれていたことには感謝しかない。数多くのチームを渡り歩いてきた彼が言うからこそ言葉に重みが出るのだろうし、明るく接しやすいキャラクターもシャイな松本の選手にとってはありがたかったはず。
今季で契約満了となってしまったが、まだまだ現役で見ていたい選手。


#13 橋内優也

13試合出場(うち先発1試合)260分 0得点 0アシスト

260分という出場時間は、彼のキャリアを見てもずば抜けて少ない数字。今季は、クローザーとしての役割が多くなっていった。
そういった起用になった背景には、昨季の反省があるだろう。昨季は負傷離脱している期間が長く、残留争いに巻き込まれて苦しんでいるチームを横目にリバビリを続けるしかなかった。リーダーとしての役割を託されながらトレーニングにも参加できない状況が悔しかったとインタビューで語っていた。
その反省も生かして、名波監督も慎重な起用をしていた。もちろん、大野佑哉に最終ラインのリーダーを任せて独り立ちさせたいという意図もあっただろう。そして橋内優也も与えられたタスクを忠実にこなす。試合終盤になって足が止まり始め、ズルズルと下がる最終ラインの中央に入り、大声を張り上げてラインを上げさせる。自陣に引きこもっていては、かえって相手に押し込まれて偶発的な失点を喫するリスクが増えてしまう。そういった難しい決断を迫られる時に橋内優也がいてくれるのは本当にありがたかった。


#20 浜崎拓磨

8試合出場(うち先発3試合)387分 0得点 1アシスト

4-4-2のダブルボランチ、もしくは右サイドバックで起用されることが想定されていた今季。蓋を開けてみればハマりどころが見つからないままシーズンを終えることになってしまった。昨季もどこで使うのが最適解なのだろう?と悩んでいる間に出場機会を求めて東京Vへ期限付き移籍してしまっていた。
個人的には彼自身の能力やシステムではなく、相棒が見つからなかったのが一番の要因だと思っている。仙台では椎橋とのコンビがバチッとハマっていた感じがある。中盤の底にどっしりと構えて、スペースを埋めつつ泥臭い仕事を一手に引き受けてくれる相方が必要だったのだろう。パウリーニョ・安東輝・稲福卓動き回り過ぎだし、佐藤和弘や米原秀亮は守備専任という選手ではないので、最適な相方を見つけることができなかった。
浜崎拓磨を中心に据えるようなチームだったら話は変わるのだろうけど、松本はゆったりとしたボール保持を主戦とするわけではないので、彼自身がアジャストする必要があった。その部分で苦しんだ2年間だったかなと。セットプレーのキッカーとして優秀なのは十分理解しているが、途中出場で出てきて1回のキックで魅せてくださいというのはやや難易度の高いタスクだったか。
縦への速さを持ち味とする2トップを据える以上、中盤には攻守に走り回れる運動量と球際でのプレー強度が求められるので、もう少しボール保持の要素が強いチームのほうが活きるのかもしれない。
ユニ買うくらい推しなので、もっと見たいけど。


#27 二ノ宮慈洋

リーグ戦出場なし

高卒1年目はリーグ戦の出場は叶わなかった。まあぶっちゃけ想定内だろう。最終ラインは若手・中堅・ベテランがバランスよく揃っていて、複数人の同時離脱がない限り出番は回ってこなそうであった。
実際のプレーを見れていないので何とも書きづらいところではあるが、個人的に興味深かったのはキャンプを離脱無しで乗り切ったという点。身体が出来上がっていない年齢で、加えて昨季の反省を踏まえてめちゃくちゃ走らされていたにも関わらず、最後までついていった根性はさすが。高体連出身らしいというか。笑
このまま来季もチームにいて出番がもらえるかは不透明。J3に留まることになって、即戦力補強に動くことが予想されるので今年以上に厳しい競争にさらされるかもしれない。ひょっとしたらレンタルで武者修行というコースもあるかもね。


#28 三ッ田啓希

リーグ戦出場なし

まさかの出場なし。いやー想定外だった。
J3の岐阜でたっぷりと経験を積んで帰ってきて、比較的層の薄かった左センターバックのレギュラー争いを繰り広げると思いきや試合にすら絡めず。左利きの大型センターバックというロマンを抱えながら、松本では本領を発揮できないまま契約満了となってしまった。
何が足らなかったかと考えて真っ先に思い浮かぶのはスピードかなと。下川陽太や宮部大己とセンターバックで起用していたことからも、単純な高さより機動力を重視していたことは明らか。前線からハイプレスを掛けていくということは、その分最終ラインの背後には広大なスペースが生まれ、センターバックには広い守備範囲をカバーすることが求められていた。
その点三ッ田啓希は、バチバチに競り合うタイプなので名波監督のイメージとやや合わなかったのかもしれない。また、J3のアタッカーにスピードや俊敏性で勝負する選手が多かったのも、彼の立場を難しくしたように思う。
チームによってはまだまだ輝ける選手だと思うので、来季もJ3のどこかで出会えたらいいな。


#33 大野佑哉

31試合出場(うち先発31試合)2729分 0得点 0アシスト

今季の守備のリーダー。安定感では橋内優也の方が勝っていたと思うけど、名波監督は大野佑哉を中心に据えることを選んだ。その期待に応えるようにコンスタントに出場を続け、例年よりもコーチングやライン統率といったリーダーシップを発揮する場面も増えた。
それだけに契約満了というリリースはショッキングだった。大卒4年目、直近3年間で90試合近く出場している生え抜きを切るのかと。
ただ、冷静に振り返ってみると少し分かってきた。第3節鹿児島戦、無理をしなくて良い場面でボールを残して失点につながってしまった。第13節愛媛戦、不用意なタックルでフリーキックを与えてしまい茂木に叩き込まれてしまった。
3バックの中央に入るということは、自分がかわされたらGKと1対1の場面を作られてしまうリスクを常にはらんでいる。アタックしてはいけない場面で相手の懐に突撃してかわされてしまったり、不要なスライディングが目立ったり、センターバックの選手として致命的なミスがちょこちょこあったのも事実。プロ4年目という年数も加味して、厳しい現実を突きつけられることになってしまった。
ただ、彼のスピードは間違いなくリーグ屈指。空中戦でも競り負けることは少ないし、年齢を考えてもまだ伸びしろはある。次が見つかることを祈ってる。ありがとうございました!


#37 宮部大己

27試合出場(うち先発11試合)1229分 1得点 0アシスト

プロ1年目よりも出場試合数は増えたが、先発が18→11に減少し、途中出場が多かったことでプレータイムは伸び悩んだ。立ち位置としては、センターバックの4番手、右ウィングバックの2番手という微妙な序列。下川陽太・前貴之が負傷で離脱することが少なかったのと、野々村鷹人の台頭もあって思うようにレギュラーを確保できなかった。
それでもリードした試合を締めるカードとして重宝されていたのは事実。特に輝いていたのは信州ダービー。アウェイの地で長野の切り札デューク・カルロスを完封すると、ホームでも1対1で完勝して反撃ムードを断ち切ってみせた。
なんて表現するのが良いかわからないのだけど、相手の懐に入るタイミングが良いし、腰で相手を弾き飛ばすような体幹の強さもある。相手とボールの間に強引に身体をねじ込んで絡みとってしまう守備は、ぜひスタジアムで一見の価値あり。守備で魅せられる選手。
来季こそはコンスタントに出場機会を得たいところ。


#39 篠原弘次郎

5試合出場(うち先発5試合)398分 0得点 0アシスト

長期離脱から復帰した不屈の男。プロ選手として続けていくかも危ういくらいの怪我だったが、懸命のリハビリにより復活。主に右センターバックで出場した。
彼のプレーをちゃんと見たのは今季が初めてだったのだけど、こんなにしなやかな選手は始めて見たかもしれない。止める・蹴るという基本技術は高い水準にあり、それゆえにボールを受けることを恐れない。足元の技術に自信があるから自然と顔が上がり、広い視野から鋭いくさびのパスやロングフィードを供給できる。
さらに凄いのは、彼が積極的に高い位置でボール保持に関わることで、彼のひとつ前のポジション(つまり右ウィングバック)の選手を押し上げることが出来る。右ウィングバックに入った宮部大己がペナルティエリア内に侵入するほどの攻撃性能を見せられたのは、篠原弘次郎の後方支援があったからだった。
不在だった1年半が悔やまれるような高パフォーマンスを示してくれていたが、長くは続かなかった。コンディションの問題なのか、野々村鷹人の好調ゆえなのかは分からないが、終盤に再び出番を減らして終わってしまったのは残念だった。
松本に来て2年。契約年数を考えると満了の可能性もあるが、ようやく本領発揮しはじめているので、もう1年くらいいてほしい選手ではあるけれど。どうなるかなあ。


#43 常田克人

30試合出場(うち先発29試合)2588分 4得点 3アシスト

3バックの左センターバックで1年間主力を張ってくれた。プレータイムも昨季より延び、累積警告での出場停止と、あえてメンバーから外された時以外はフル稼働だった。
彼の左足から繰り出される正確無比なロングフィードは、間違いなくチームの生命線。自陣左サイドからやや内巻きの回転で敵陣左サイド深くに落ちる起動は美しかった。彼を欠いた試合では、尽く左サイドのビルドアップがノッキングを起こしていたことからも、彼が不可欠な存在であったかがわかる。
加えて今季は、主力選手としての自覚の芽ばえが見れたのも嬉しかった。ライン統率の部分で声を出したり、セットプレー時にキッカーに話しかけに行くようになったり。
プレー面でも、ドリブラーに弱いという課題を着実に克服しつつある。印象的だったのは、第29節岐阜戦。前回対戦時は、下川陽太を手玉に取った窪田相手に、カウンターの局面で1対1で完勝。相手との距離感、縦突破を誘導するようなコースの切り方から、縦に突破したところへスライディングでボールを奪いきってみせた。個人的に最も成長を感じたシーンベスト5に入るだろうなー。
昨季も書いた気がするけど、来季いるかどうかはわからん!


#44 野々村鷹人

16試合出場(うち先発11試合)1136分 0得点 2アシスト

今季最も成長を見せた選手の一人だろう。「俺、空中戦にはめっぽう強いっす!」という一方で、それ以外の部分に課題が山積みだった昨季。
センターバックにも運動量が求められると知れば、キャンプからめちゃくちゃ走り込んでみたり、パス精度がいまいちだと思えば地道な練習を続けてきた。
ようやく成長した姿を見せるける場面がやってきたのは、前貴之の電撃移籍を受けた緊急事態の時。彼は見違えるように成長していた。右センターバックながら、何度もウィングバックを追い越して攻撃参加。ビルドアップでも近くの味方に落ち着いて繋げるようになっており、逆足である左足での精度も向上していた。
その甲斐あって最終盤にレギュラーとして定着。エアバトラーとしてだけでなく、よりモダンなセンターバックへ着実に進化を遂げている。もしかすると来季は最終ラインの軸となっているかもしれない、期待感のあるシーズンだった。


案の定、ちょっとずつボリュームが薄れてる気がしなくもないが、続けていきます!
引き続きよろしくお願いします!

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