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【Simple Is The Best】J2第12節 松本山雅×SC相模原 マッチレビュー

スタメン

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前節に続いて主将の佐藤和弘を欠く松本は、アンカーに前を配置する3-5-2システムで臨む。小手川は加入後初スタメン。その他は前節とメンバーの変更はなし。ここまでチームトップの6得点を挙げている鈴木と対象的に、いまだ初得点が遠い阪野豊史はベンチスタートとなっている。

対する相模原は、ユーリとホムロの助っ人外国人が欠場5/6のリリースで、ホムロは家庭の事情で退団が決まったことが発表された)。代わって前線には4試合ぶりに藤本淳吾が先発に名を連ねている他、古巣対戦となる後藤圭太も最終ラインの一角に入っている。


徹底していた狙い

試合前のコイントスで風上を選択した相模原。この日のアルウィンも最大8メートルにもなる強風が吹き荒れており、風下に立つことになった松本は前半耐える展開が続くかと思われた。

ただ、ここは聖地アルウィン。柴田監督も織り込み済みで、松本はシンプルに相手の背後へロングボールを放り込み、横山の速さを活かす攻撃を展開する。相模原の両ウィングバックが攻撃時に高い位置を取るので、その背後にできる3バック脇のスペースを有効活用したい狙いがあった。また、サイド奥にボールを蹴り込むことで相手最終ラインを押し下げることも目的のひとつ。最終ラインを下げさせることで、アンカー脇のスペース(すなわちバイタルエリア)を空けさせて、そのエリアを主戦場とする鈴木や河合、小手川にプレーエリアを供給することもできていた。

先制点も同様の狙いから。自陣深くでボールを奪うと前貴之は迷わず右サイド奥にロングボールを蹴り込む。鎌田と競り合いながら横山がボールを追うと、鎌田のクリアが横山に当たってエリア内にこぼれる。素早く反応した横山がなんとかGKより先に触れると、最後はカバーに入っていた後藤に当たってオウンゴール。泥臭く何度も裏を狙い続けた横山のランニングは流石の一言、与えられたタスクを愚直にこなす素直さは彼の最大の魅力だ。また、前が内巻きのボールを蹴り込んだことで、鎌田がゴール方向へ戻りながら右背後から来るボールに対応するという難易度の高いシチュエーションを作り出したのも秀逸。逆風によりロングボールが押し戻されることも計算のうちだっただろう。

対して相模原の狙いはセットプレー。風上に立ったメリットを最大限活かすためにも、前線の平松めがけてロングボールを放り込み、松本最終ラインのミスを誘う。クリアされても、コーナーキックや深い位置でのスローインとなれば、藤本淳吾の正確な左足キックや船木のロングスローのチャンス。松本が総失点の40%以上をセットプレーから喫していることを考慮しても、合理的な攻め手だと言えるだろう。


効果的だったシステム変更

点をとった松本は20分すぎくらいからシステムを変更する。小手川が一列下がって前とダブルボランチを組み、シャドーに河合と鈴木、1トップに横山を配置する3-4-2-1。おそらく先制点を取っていなくてもこの形に変更していたと思う。

その背景としては、藤本がアンカー脇のスペースに落ちて受けようとする動きが厄介だったことと、守備時のマーキング対象を明確化したいという狙いがある。

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3-5-2でアンカーを置く相模原に対して、3-4-2-1にシステム変更した松本は前から順にマーク対象を整理した。まず横山・河合・鈴木の3トップで相手の3バック+アンカーを抑える。数的不利ではあるが、ボールサイドのHVをと中央のリベロ、アンカーを抑えにいって逆サイドのHVは少し放置すれば対応可能である。その他、サイドはウィングバックの1on1で、中央は松本のダブルボランチがインサイドハーフにほぼマンツーマンで見る。最終ラインは2トップに対して3枚いるので数的優位を形成。

と、このように誰が誰を捕まえに行けばよいのかが非常に明確になっている。もちろんサッカーは相手ありきのスポーツで、ピッチ上では選手が敵味方ともに動き回るため、必ずしもこの通りに行くとは限らない。ただ、どこに制限を掛けて奪うのか?がチーム内で統一されたことで、松本が主導権を握る時間帯が続いた。31:26~のプレスを掛けて相手のミスを誘ったシーンは、おそらくやりたかったことが出た場面だ。

前々節から柴田監督が少し変わったな、と個人的に思う点がある。それは、理想を追求して選手に難しいことを要求するのではなく、”選手個々のタスクを整理して頭の中をシンプルにする”ことにシフトしたように感じているからだ。今まではボールを繋ぐことにこだわったり、選手の能力とは少しズレたプレーを選択していたことでミスも多く、歯車が噛み合っていなかった。しかし、今は選手個々の持っているポテンシャルやストロングな部分を最大限発揮させることを第一にしている。選手に与えるタスクは極力シンプルで思考を挟まずに判断できるものまで削ぎ落として、その結果、プレーの判断スピードが向上し、本来J2トップクラスである選手の質が発揮されるようになってきたのがここ数試合だろう。

相模原としては、前節の北九州戦のように最終ラインから持ち運べると状況は多少変わったかもしれない。アンカーへのパスコースをちらつかせながら左右のHVがドリブルで持ち上がれば、松本のシャドーの対応が曖昧になり、ボールを前進させることはできる。ただ、選手の特性を考えると難しいところも大きく、松本のプレスに手を焼いた前半となった。前半19分の船木のロングスロー以来前半は一本もセットプレーを奪えなかったことが苦戦した様子を示唆している。ちなみに、89分までコーナキックのチャンスは巡ってこなかった。。。


試合を殺しにかかる松本

ハーフタイムに2枚替えを敢行したのはリードしている松本。浜崎と横山を下げて、常田と阪野を投入する。3-4-2-1に変更してからのプレスがかなり効いていたし、特に大きく変える必要はなかった。横山はもともと45分で体力使い切るコースだったのだと思うし、浜崎もまだ90分フルでは使うつもりはなかったはず。そんな中今日の浜崎はボールとのフィーリングがイマイチで、加えてイエローカードももらっていたことも考えて、少し早めの交代となったのだろう。

後半の松本は3-4-2-1が基本布陣ながら、自陣での守備時は河合がボランチ脇まで下がってきて5-3-2のような形を形成。積極的に人を捕まえに行こうとするよりかは、まずは自陣のスペースを埋めることを最優先としていて、いるべき場所に戻ったらそこから前に出てプレスに行く流れが徹底されていた。なので、例えば前がサイドに流れてプレスを掛けたときは、河合が中央まで戻ってスペースを埋める動きをしていたし、時には鈴木もバイタルエリアまで戻ることもあった。このあたりは相当意識してトレーニングを積んでいるのだろうし、段々と練度が高くなってきた部分であると言えるだろう。


ツメの甘さは相変わらず

相模原が選手交代はするものの、なにか流れを大きく変えるような修正を見せられていなかったため、松本は引き続き試合を締めにかかる。表原と戸島章を投入して、前線~中盤の運動量を担保してスペースを埋める動きの強度を維持。あわよくばカウンターから追加点が取れたら万々歳という思惑だ。

果たしてこの狙いがまたも結実してしまう。相手のミスを見逃さなかった戸島のボールキープから粘り強くつなぎ、最後は鈴木のシュートを阪野が絶妙なトラップから押し込んで追加点。阪野にとっては待望の今季初得点となった。このシーン、もちろん阪野のゴール前での落ち着きや柔らかいトラップ技術は素晴らしかったが、個人的にはその前のシュートを放った鈴木にも注目したい。浮いているボールに対して上半身を上から被せるようにして打つことでシュートを抑えることに成功し、さらに腰を大きく捻ってファーサイドへ打ち込むという難易度の高いシュートだった。瞬時の判断でこの難しいシュートを枠に飛ばせるのだから、相当身体のキレが良いのだろう。今後にも期待である。

さて、下川に変えて田中パウロ淳一を投入し、ドリブルからのシュートで会場を沸かして試合終了....かと思われた後半アディショナルタイムに、ゴールキックの流れから2回競り負け、最後は平松のパスを受けた和田に流し込まれて失点。なんとも締まりの悪い形での3連勝となった。


まとめ

まずは残留圏内を争っていたチームとの3連戦で3連勝したことは称賛に値する。これで降格圏からは6ポイント差とまだまだ安心はできないが、少し離れることができた。それどころか4位の磐田とも勝ち点差はわずかに6ポイントとなっており、このまま連勝を続ければ上位進出の可能性もまだまだ残されている。

そんな中で次節は無敗で首位を快走しているアルビレックス新潟。今季対戦した相手の中で最も選手個々の質だけでなく、組織としての熟練度が高異相手で、まさに3連勝がフロックではないことの証明をするにはうってつけの相手だろう。

今季のJ2は天皇杯を除けば11月までミッドウィーク開催のゲームがなく、シーズン終盤まで3連戦が組まれていない。3連戦+3連戦の6試合目ということで選手の疲労もピークに達しているだろうことは予想されるが、アウェイの地で今季初めて首位チームに土をつける、そんな試合に期待したい。



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