失敗しても大ケガしない程度のチャレンジ
これは「許容可能な損失(Affordable loss)の原則」と呼ばれます。
エフェクチュエーションに基づく意思決定は、目的から考えるのではなく、まず手持ちの手段(資源)で「何ができるか?」を具体的に行動のアイデアとして生みだすことです。
そうしたアイデアは少なくとも自分にとって意味があり、実行可能なものであるはず。しかし、それだけでは、不確実性が極めて高い環境下で実行に移すには不十分です。
どれほど精緻に予測したところであてにならないのであれば、むしろ、予期せぬ事態は避けられないこととを前提としたうえで、最悪の事態が起こった場合に起きうる損失をあらかじめ見積もり、それが許容できるならば実行すれば良い、という基準で意思決定を行う。これが、「許容可能な損失(Affordable loss)の原則」。損失の中には、資金以外に、時間や労力、協力者からの期待、犠牲にした別の機会が含まれます。
この原則の利点は、
第一に、うまくいかない可能性が事前に考慮され、なおかつそれを自分が受容できることがわかっているので、新しいことを始める心理的ハードルが低くなる。
第二に、最悪の事態が起こった場合に失うものに対して、事前にコミットメントを行うため、成功するかどうかの予測に無駄な労力を費やす必要がない。
第三に、うまくいかなかった場合でも失敗が致命傷とならないために、再度別の方法でチャレンジすることが可能になる。
さらには、この原則によって、成功上がる。なぜなら、
・小さくても行動を起こすことで初めて得られる成功や失敗の経験が、重要な学習機会となる
・手持ちの手段(資源)の創造的な活用を促し、無駄を減らすことができる。
そして、
・本当に自分にとって重要な取り組みを選択することを可能にする。
これが一番の肝。
つまり、うまくいかなかった場合を想定してコミットメントを行う意思決定では、起業家が自信の内面的な要素や価値感を改めて振り返る意思決定になる可能性が高い。
なぜなら、
・自分が損失を覚悟したうえで、「本当に自分はそれをやりたいのか」を自問することになる。
そして、
・挑戦しなかった場合に失うだろう機会損失には、自分のアイデンティティや志、自己実現の可能性といった要素が深く関わっていることに気づくからです。
いわゆる「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の「バリュー」にあたる部分は起業家の「アイデンティティ」に相当します。ここが大切。失敗してもまた立ち上がれるかどうかは、この純度にもよるのでしょう。
実際に、許容可能な損失の範囲で行動するためには、着手する時点で最初に投入する資源をできるだけ小さくすること。そのための工夫は、
・新たな資源投入を必要としない行動から着手する
・できるだけ一歩の幅を小さくする
・新たな資源投入が必要となるタイミングを延期する
最後は、ひとりで抱え込まず、
・許容不可能な損失はパートナーシップの可能性を考える。
私が、個人事業主として活動を始めて、すぐに資本投入したことは…
①ジョブクラフティング講座
②レゴシリアスプレイ認定ファシリテータ養成コース
③大学院入学
①は、③の意思決定を行う上での判断材料でもあり、また、②は①を補完し強化するもの。つまり、いずれもそれぞれ関係していて、小さな歩幅の積み重ねでした。
新卒から55才で早期退職するまで、同じ会社(化学メーカー)で31年勤務。
在職中、最初の20年は事業部に所属し、国内営業から事業開発、事業企画に携わり、その間、オランダ・ドイツ、米国西海岸(サンディエゴ)と海外駐在を7年経験。その後、40代前半で人材育成部門に異動。
中年期での大きなキャリアチェンジ(ショック)を経て、今に至ります。
将来は、個のキャリアと組織開発の支援を続け、「77才」を一つの区切りに生涯現役を目指しています。
「オヤジになるとなんだか楽しそう」
そんな社会づくりに貢献したいと願っています。