起業して1年の振り返り〜エフェクチュエーション
起業といっても、実際には案件ベースで顧客企業と業務委託契約を交わして働くフリーランス。
法人化せず、個人事業主としての登記で開業して1年が経ちました。
当初は、失業手当をもらいながら旅行したりスポーツしたり、のんびり過ごそうと思っていました。というのも、在職中に無償でいろいろ試してみたものの、なかなか集客できず。資格を取って専門性を高めたり、デジタルマーケティングに挑戦してみたものの、手応えを感じることができなかったのであまり多くを望んでいなかったのです。
ところが、思いのほか引き合いをいただけることに。一番は、大手の案件をいただいたこと。
・管理職昇格者向けのコーチング研修
・キャリアデザインワークショップ後のフォロー面談
いずれも共通しているのは、在職中に社外で学んでいた時の「学友」つながりからいただいた引き合いでした。
前者は、やめると決めたその日に、たまたまその方が出張で近くにいらっしゃっていて、夕食(お好み焼き)を一緒に食べることに。
後者は、同窓会的に集まった勉強会の後の居酒屋でテーブルを一緒にしたことがきっかけでした。
いずれもそこから発展して、複数の案件やベースとして収益を支える事業機会につながっています。
やめる=手放す(Let go)ことでしか得られないことはあるんだと、実感。
エフェクチュエーション
経営学者サラス・サラスバシー教授によると熟達した起業家がとる思考様式には共通しているところがあるらしく、「エフェクチュエーション」と称されます。大手企業では当たり前の「コーゼーション」とは対照的。料理にたとえると、何をつくるかを決めてからレシピを見て、必要な材料をそろえて作り始めるのが「コーゼーション」であるのに対し、「エフェクチュエーション」というのは、冷蔵庫を開けて、そこにある材料をもとに何がつくれるかを考えて料理をし始める…という感じです。
エフェクチュエーションの原則には5つあって、
「手中の鳥」
「許容可能な損失」
「クレイジーキルト」
「レモネード」
「飛行機のパイロット」
この中でも、特に、「クレイジーキルト」の原則というのが大事だなぁと思います。
会社にいたころは、大きな絵を描いて、現状と比較して足りないピースをどう埋めていこうか?という発想だったのですが、一人で仕事をするいようになってからはむしろ、「誰と」一緒に仕事をしようか?というところから始まります。
そもそも、どんな仕事や誰と一緒に仕事をするかを自分で「選べる」というのが、会社員ではなかなか叶わなかったところ、一人で仕事をするようになって、自分で自由に決めることができるわけです。さらに、この思考様式こそが「熟達した起業家」へと通じる道であるということで、なんともありがたい。
「クレイジーキルト」の原則というのは、ジグソーパズルではなく、端切れと端切れを縫い合わせてつくるパッチワーク。あの人と一緒に仕事をすると何か新しいことが生まれそうという、人と人とのコラボレーションをベースにした発想なのです。これも素敵ですね。競争ではなく共創なので。
とはいえ、いつもいつもうまくいくとは限りません。
むしろ失敗することの方が多い。なので、「失敗」は想定内。
予測精度を高めて成功確率を高めるというよりも、プロセスをコントロールすることが大事(「飛行機のパイロット)。「失敗」しても致命傷にならないくらいの取り組みに抑えることと(「許容可能な損失」)、そして、失敗しそうな無理難題(レモン)がやってきた時にこそ、それを逆手にうまい方法(レモネードがつくれないか)を考える…というわけです。
新卒から55才で早期退職するまで、同じ会社(化学メーカー)で31年勤務。
在職中、最初の20年は事業部に所属し、国内営業から事業開発、事業企画に携わり、その間、オランダ・ドイツ、米国西海岸(サンディエゴ)と海外駐在を7年経験。その後、40代前半で人材育成部門に異動。
中年期での大きなキャリアチェンジ(ショック)を経て、今に至ります。
将来は、個のキャリアと組織開発の支援を続け、「77才」を一つの区切りに生涯現役を目指しています。
そんな私が、個人事業主として活動をして1年。
なんとか軌道に乗ってきたのは「エフェクチュエーション」と称される5つの原則を意識して活動してきたからなのかもしれません。
エフェクチュエーション」について、詳しくは…
エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」 吉田満梨・中村竜太著
私がこの本を教わったのは、
「人生のヒントが見つかる」かぴばら書店
九段下にあるとてもとても小さな本屋さんです。