Form Energy社の工場
前から注目していた、Form Energy社の工場が起工したようです。
長時間エネルギー貯蔵に良いと言われている「鉄空気電池技術(iron-air battery technology)」ですが、こういう新しいテクノロジーは大好きです。
ソリンドラの二の舞にならないことを祈っています。
阪口
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米国ウェストバージニア州で、新興企業Form Energy社が長時間エネルギー貯蔵(LDES)用途の電池を量産する工場の起工式が行われました。
先週金曜日(5月26日)、ウェストバージニア州ウィアトンの製鉄所跡地で起工式が行われました。
この工場では、Form Energy社が独自に開発した「鉄空気電池技術(iron-air battery technology)」やこの電池を使ったエネルギー貯蔵システムの製造を目指します。
2017年に元Tesla幹部のMatteo Jaramillo氏の主導で立ち上げたForm Energy社は、鉄の酸化(錆びる)を軸に、100時間以上の持続時間で電気エネルギーを蓄積して放電できるバッテリー化学を、コスト効率よく開発したと謳っています。
とはいえ、この電池化学は、MITが支援する企業がステルスモードから抜け出した後も、厳重な秘密として扱われていました。
ジャラミロはこの技術について下記のように語りました。
・ 鉄空気電池は、リチウムが適さない長時間のアプリケーションを行う補完的な技術であるという点で、「全く逆」である。
・ 同時に、鉄空気電池は、リチウムイオンが得意とする短時間・高出力の用途には向いていません。
・ リチウムと鉄空気電池を組み合わせれば、石炭やガスなどのいわゆる「ベースロード」資源に代わる「低コストで信頼性の高い再生可能エネルギー発電所やシステム一式」を作ることができます。
同社は、この電池は豊富な材料を使って作ることができ、個々のプロジェクトやクリーンエネルギー資源のポートフォリオの需要に近い場所に設置できる可能性があると述べています。
石炭発電所と歴史的製鉄所の再活用
2月にウェストバージニア州知事Jim JusticeがForm Energy社への1億500万米ドルの助成金に署名した際に、同社が55エーカーの工場の建設地としてWeirton Steel工場などのラストベルトを象徴する場所を選んだことについて、「対称性がある」と述べています。
また、ジャスティス氏によると、ウェストバージニア州は、Form Energy社に対し、工場建設に最大2億9000万米ドルの「融資」を提案したとのことです。
Form Factory 1は、インフレ抑制法(IRA)の成立以降、米国で発表されたクリーンエネルギー製造・普及のための投資案件のひとつで、1,500億米ドルが公開されています。
ウェストバージニア州には、リン酸鉄リチウム(LFP)電池メーカーであるOur Next Energy(ONE)が、5億米ドルを投じて新設する製造拠点でグリッド規模の蓄電システムを構築し、同社が太陽光+蓄電のマイクログリッドを提供することも検討されており、関連する開発も行われている。
ウィアトンは、米国16州の約500カ所を検討した結果、河川、鉄道、道路網へのアクセスの良さなど、既存のインフラが整っていることから選ばれたもので、工場稼働時には750人以上が雇用される予定ですが、年間生産予定量はまだ公表されていません。
同社は、製鉄所の再利用だけでなく、電力会社Xcel Energy社向けに、石炭工場を再利用したグリッド規模の鉄空気電池を導入する予定です。
このプロジェクトでは、Form Energy社への投資家であるBill Gates氏のBreakthrough Energy Venturesが、最近2千万米ドルの助成を約束しています。
また、ミネソタ州の「Great River Energy社」とのパイロットプロジェクトでは、1MW/150MWhの鉄空気電池を導入することが発表されており、Form Energy社は、Georgia Power社とプロジェクトの可能性について協議していることが知られています。
同社はこれまでに約8億米ドルの資金を調達しており、直近の資金調達ラウンドでは4億5,000万米ドルのシリーズDを実施したと考えられています。
金曜日のイベントでは、米国エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官、ジョー・マンチン上院議員、シェリー・ムーア・カピート上院議員などの要人や、ウエストバージニア州経済開発省のミッチ・カーマイケル長官が挨拶に立ち、準備を行いました。