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みんなが気づいていない M:I-3の魅力

映画サイトRotten Tomatoesでは7作中5位
映画情報誌VARIETYでは7作中7位
Filmarksの評価は3.7
トム・クルーズの宿命とはいえ、みんな興行収入の影響を受けすぎ。「M:I-3」の素晴らしさについてここに書きます。


冒頭の10分の密度


映画マニアに馴染みの言葉でマクガフィンと呼ばれるもの。
観客の注意を惹き続けるために登場させるもので、ただストーリーを追うだけではなく、物語に参加してもらうための謎と言ってもいい。荷物を預けられたら、いつ返せばいいのかずっと気になります。それと同じ。

この映画ではラビットフットと呼ばれるものを巡って争いが続きます。
ヒッチコックもマクガフィンを見せる必要はないと言っていて、この映画でも最後まで出てきません。機械なのかメディアなのか、何に使うか、大きささえわからない。
これがいきなり登場してくる勝負の速さ。
M:I-2みたいにオープニングが最大の見どころってことはないものの、シリーズで最高の10分間の始まり。

M:Iシリーズは数年ごとに封切られるため、トム・クルーズ(と所属している組織)の立場と世界情勢がちょっとずつ変化していて、その設定を説明するためにも見事な10分間。
身分を隠して生活していることと、それでも隠しきれない圧倒的な能力が見れて楽しいです。この時期のヘアスタイルが好きなので。普段着のシーンが多いのはファンとして嬉しい。



お約束を見事クリア


M:Iはシリーズものとしてクリアすべきお約束があります。これは規定演技のようなもの。右に本作の点数をつけました。

 テーマ曲が流れるタイミング  10/10点
 指令をどんなかたちで受け取るか それがどう消滅するか    7/10点
 変装のためのマスクを作るときのドキドキ   
9/10点
 もっとも不可能と思われる方法で目的を達成するためのアクション  
 9.5/10点

指令を受け取るところだけは映画館で「もっとすげえの見せてくれよ」と思ったけれど、それはM:I-2が強烈すぎたから。
いま見直すとこの映画の行方とトーンを示す良いシーンになっています。


アイテムの程よいチープさ


バチカンに侵入するところがわかりやすいですが、意外とショボいアイテムを効果的に組み合わせることで困難を可能にしていきます。これが「このボタンを押したら建物の監視カメラをぜんぶ壊しちゃうぜ」なんてのだと醒めちゃう。
ほどよいチープさというか、やっぱり人の力がいちばんってところがM:Iシリーズの特徴。近未来やSFの領域に踏み越えちゃっていない。
マスクを作るとき「このカードの文章を読め」と脅して声をスキャニングしていくところ最高です。シャレやユーモアがあってスパイ大作戦へのリスペクトかも。



編集が奇跡のレベル


困難があって、時間との戦いでクリアしていく基本的にミッション・インポッシブルはその繰り返し。トム・クルーズがメインだけれど、他の人が戦っていることもあります。
誰のために?
何のために?
それを明らかにしながら、延々と繰り返されていく。その

テンポとリズムが最高!


ああ、今度こそもうダメかもしれない・・・セーフ、のタイミングが絶妙。
大丈夫だろうな、えっ、いやそんな・・・アウト、の加減も抜群。

ディズニーランドの乗り物は人がどう感じるかをモニタリングして、ものすごく早くて怖い乗り物を作るのではなく、ものすごく早くて怖いと感じる乗り物を作る努力をしているとか。もっと早いジェットコースターはたくさんあるけれど、やっぱりいちばん楽しい、何度でも乗りたい、と思える所以。

シーンの切り替え、キャストのバトンタッチ、ハリウッド映画はそういうメソッドが確立されていると言いますが、緊張と緩和の連続を気持ちよく見られるのは編集の力によると思います。



脇役にキャラが乗ってきた


トム・クルーズの映画にケチをつけるとしたら脇役が弱いところ。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」や「レインマン」は別にして、スターになってからさらに弱くなった気がします。
でもM:I-3には悪役としてフィリップ・シーモア・ホフマンが怪演を見せていて、トム・クルーズとの対比が見事。シリーズでいちばんのキャラでは。
のちに欠かせないキャラになるサイモン・ペッグもこの作品からで、ハマってないけどジョナサン・リース・マイヤーズがいるのも嬉しい。

余談ですが、Wikipediaによるとトム・クルーズは170cm、フィリップ・シーモア・ホフマンは177cm。マスクして声を変えても・・・むむむ。
でもこの変装の場面は最高です。



ちょっとダサめのアクション演出


ダンスを踊るようと言えばいいのか、二人がすれ違って回転したり、銃を渡すときに大袈裟に投げたり、ダサめで華やかです。「ジョン・ウィック」より進んでいたと思う。
シン仮面ライダーを撮影していた庵野さんが、振付師に「こんなの段取りじゃないか。俺が求めているのはアクションだよ、相手を倒そうとして魂を込めて、命を削っているところが撮りたいんだ」といったことを話しで現場を凍り付かせていましたが、この映画はエンタメとして徹底していて、画面でいかに華やかに見えるかっていうギリギリのところを見せてくれます。

カメラワークも派手になりすぎることなく、動きを綺麗にフォローできていて、肉眼でも追えるので、この時代がいちばんアクションは華やかでワクワクさせてくれたように思います。
シーンごとに着ている服がアクションに最適化されていて、どこに力が入っているか見えやすいのもポイント。


カメラを構える


何を扱ってもかっこいい俳優がいます。ポール・ニューマンとかスティーブ・マックイーンとか。ナイフも銃も車もコートも腕時計も抜群。自分の愛用品みたいに馴染んでいて、小道具として効いている。
そのスティーブ・マックイーンだったらカメラをどう構えたかなって思います。自分の仕事道具だけれど、驚くようなカッコよさと手際を見せてくれたかも。

トム・クルーズがカメラを構えるシーンを他の映画で見た記憶がないです。
おもちゃみたいなカメラで、ちゃんとファインダーも覗かないけれど、それでも嬉しい。


まだ書きたいことがたくさんあるけれど、そろそろ見直したくなってきたのでは。
最初に見るM:Iとしてもオススメです。ぜひ!

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