登場人物の着こなしがカッコいい映画
村上春樹さんはポール・ニューマンの着こなしが好きで、それを見るために映画「動く標的」を映画館に10回は見に行ったとエッセイに書いています。
そこまで古い話じゃなくても、「トップガン」を見てトム・クルーズに魅了されてG-1(海軍のパイロットが着る寒冷地仕様のレザーブルゾンで、襟にボアがついているのが特徴)を買った人はたくさんいて、街にあふれていました。
映画がファッションの流行に影響を与えるような時代は、もう終わったかもしれないけれど、「映画はいつもおしゃれの教科書だった」という言葉の響きがとても好きです。女性ものの企画はたまに見るのに、男性ものでいいのがなかったので、選んでみました。
「大脱走」や「華麗なる賭け」のスティーブ・マックィーンのような、永久定番はあえて外してあります。
「(500)日のサマー」
白シャツに緩めたニットタイ、グレーのベストというような着こなしに表れているように、ジョセフ・ゴードン・レヴィットの童顔と良く合ったナードなスタイルがすごくいいです。
大きめのヘッドフォンをして流行遅れのロック(The Smithが重要な場面で使われています)を聴き、たすき掛けにしたレザーのショルダーバッグなど、トータルでこの主人公のキャラクターを際立てる役割をしています。
「ラスベガスをぶっつぶせ」
(アイビー ファッション 映画)といった検索ワードで調べてみると、古い映画だとまずは「卒業」と「ある愛の詩」、あとは「炎のランナー」。
でもこの「ラスベガスをぶっつぶせ」はもうちょっとモダンにアレンジされたアイビーです。主人公が「J.PRESS」でアルバイトしているくらいだから(笑)
もうアメリカの東海岸の大学に行っても、アイビールックの学生を見ることはほとんどないと言いますが、いまの学生たちがアイビーをどう消化しているか見るのも楽しいです。
「キングスマン」と「シングルマン」
スーツだったらこの二本。
スーツは時代によって、ラペル(スーツにおける襟のところ)の幅や、ウエストの絞り(ドロップという数字で表されます)、着丈、肩のライン、それに合わせるシャツとネクタイなどで微妙に違いがあり、逆に言えば小さな違いでしか時代性を表現することができないですが、それを読み取っていく楽しさがあります。
「裏切りのサーカス」では、スーツのディテールの違いを登場人物たちのキャラクターの描き分けに利用していて、これも見ていて楽しいです。
「コンドル」
原題が「Three Days of the Condor」なので、三日間の話。
事情があってトラブルに巻き込まれ、命を狙われるところからの逃走劇を描いているため、たまたま着ていた少ない服で着回すお手本のようなロバート・レッドフォードのかっこよさは見どころのひとつ。
個人的にあらゆる上着の中でピーコートがいちばんカッコイイと思っていて、女性なら「はなればなれに」でのアンナ・カリーナ、男性ならこの映画のロバート・レッドフォードが最高。
「VINYL」
映画ではなくAmazon制作のドラマシリーズ。
スコセッシとミック・ジャガーが組んで、60年代後半ごろの音楽業界を描いているため、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドがステージに立っていて、それをウォーホルが見守っていて・・・といった夢みたいな、でも当時は実際にあった出来事を別のパースペクティブから描いていて、ロックファンにはたまらない。
ファッションもその時代のものを完全に再現しています。たぶんヴィンテージ。
ロックスターの役だから革ジャンを着せておけばいいんでしょ、的な雑なところがまったくありません。DVDの特典映像にスタイリストが登場して使用した衣装を見せるけれど、これだけでも見る価値あるくらいすごいです。
「リプリー」
同じ原作による「太陽がいっぱい」もスタイリッシュな映画でしたが、こちらは総指揮をつとめたシドニー・ポラックのセンスなのか、オープニングからスタイリッシュでイカしてます。
マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、ケイト・ブランシェット、フィリップ・シーモア・ホフマン、それぞれがまだ若手俳優だった時期に作られているため、その競演による瑞々しさがこの映画の華になっていて、とくにマッド・デイモンとジュード・ロウの、アイビーと言うよりプレッピー的な着崩し方は最高。
マッド・デイモンが靴にブラシを掛けている場面が二度あり、ゴルフ場ではお客さんの茶色のウィングチップ、自分の靴はモカ縫いのUチップ、といったディテールまで楽しめます。
「ブラウン・バニー」
主演、監督、脚本、スタイリング、すべてオレ、といったナルシズムの塊みたいな映画。ロードムービーになっているため、これも少ない服を着回す(ボトムスは多分ずっと同じ)のが見どころ。
ダブルカフスのシャツを雑に着ていたり、たぶんリーバイス646だと思われるジーンズに穴が空いていたり、撮影用の衣装ではなく普段着な感じがいい。映画もとても好きです。
また思いついたら追記します。
お勧めがありましたら教えてください。このシーンだけでも見る価値ありますよ!といった情報も歓迎です。