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怪談師の怪談をムリヤリ音楽のジャンルに喩えてみる【クダマツヒロシ編】

最近流行り?と言えば流行りですよね、怪談。
毎週いたるところで怪談イベントがやっています。私も音楽のライヴより怪談ライヴ行く回数の方が近年多くなっていますが、ふと思いました。

怪談師の怪談って、音楽のジャンルに共通するところもあるんじゃないかって。話の展開とかテンポ感とか。

そこで、無理矢理、独断と偏見で怪談師の語る怪談を音楽のジャンルに強引に喩えてみようと思うに至りました。
初回は関西の怪談師でオカルト怪談作家、クダマツヒロシさんの話を喩えてみることにします。続くかわかりません。
苦情も受け付けません。
Youtube上に動画があるものはリンクを貼りますので、ご覧になってみてください。

それでははじめていきます。

『燃える家』スラッジ(ドゥームメタル+ハードコア)/ポストメタル
後輩が体験した、燃えるように映る家で起こった人の業が怪異に至るまでの顛末。
⇒業を感じる生暖かさが緩やかに高まり、狂気が爆発していくような展開がそのように喩えられるような印象。
バンドで言うなら、Neurosisに近いと言えば近い怪談。序破急や緩急のついた怪談なので。特にアルバム『Fires Within Fires』のような深い味わい。
https://youtu.be/cad2hnGCfM0?si=AZ1A9wFtCvT2j1VC

『ガンジーのエロビデオ』ポルノグラインドゴアグラインド
女性の胸が好きすぎる同級生が観ていたビデオの正体は…。
⇒ジャンルとして緩急があるわけではないが、エロいものかと思えば実は違った、という展開はポルノグラインド入りのゴアグラインドそのもののヒトコワ怪談。
バンドで言うなら、Waco Jesusがベタですが当たります。というか大体下品だけど過激なのがこれの常なので、この話にピッタリと言うよりないですね。

『豚の椅子』スラミング・ブルータルデスメタル
体験者がしようしていたオフィスチェアが壊れはじめ、羞恥を煽るおぞましい怪異譚に…。
⇒ポルノグラインドと迷ったんですが、合間に出てくるSMじみたやり取りがスラミングに思えてきて…。スラムデスでよく出てくるピッグスクイール(豚の鳴き声を模した歌唱法)なんかも、この怪異にぴったり。
バンドはもう、この話読んでるとSlaughterboxのEPのジャケットが浮かんできてしまってもうこれしか考えられなくなったっていう。

お話のタイトルや執筆のお供はDir en grey「Schweinの椅子」インスパイア。

『透明トンボ』ブラックゲイズ
少年が祖父と過ごした時間に迷い込んだのは異界か冥界か。
⇒全体的に儚い叙情性が染み渡った話の構成や、白昼夢へ迷い込んだかのような筆致は、まさしくブラックゲイズそのもの。
バンドとしては、まさにAlcestです。アルバムも『Souvenirs d'un autre monde』。本作に通じる美しさがこのお話にはあります。話のタイトルをフランス語(「Libellule transparente」)に訳しても何かありそうじゃないですか。

『散眼』カオティック・ハードコア
寄り目遊びをしていた少年たちが巻き込まれた怪異。
⇒全体として急しかない、悪ふざけとカオス擦れ擦れの話の展開、着地点が見えない恐怖と緊張感はまさに。本来は実在のポップソング交じりな箇所も、フックをもたせる意味で機能しています。
バンドで言うならThe Sound That Ends Creationみたいな感じですね。予測不能でトリッキーな感じと悪ふざけも混じった感じが似ている気がします。
The Blood Brothersでもいいかもしれません。

『美容院』スロウコア
とある美容院で遭遇した不気味な怪異。
⇒淡々と、忍び寄るような怪異の恐怖とどことなく透明感のある語りの雰囲気はスロウコアの凍てついた空気にも似ているように思います。ブラインドを上げる所作もゆっくりとした空気感を感じます。
バンドで言うならLowですね。孤独感強めの彼らの音が、若干の透徹した雰囲気の怪異によく似合うと思います。
https://youtu.be/LsU5iP1DrIU?si=RgBF4PdpvpkYizyg

『誕生日』トリップホップ
自分の誕生日にまつわるじんわりまとわりつく厭さと亡くなった妹に対する家族の謎。
⇒絶えずダウンテンポで進行していくようなこのお話は、怪異の怒りの表情や不可解な出来事と相反する、悲しみが横たわっている気がしてなりません。ダウナーで聴く者・読者を陰鬱な空気に引きずり込むアブストラクトな怪談であるように思います。
Massive Attackの『100th Windows』のような冷たい透明な空気感がありますね。
あるいはPortisheadの『Dummy』のような陰鬱な透明感。怪異の透明にさせられた哀しき叫びに通じるものがあります。
https://youtu.be/WCpMukmsiKg?si=PedBZvCoa1xeVJ8B

『予兆』Djent
ある日、帰宅した女子高生が遭遇した異様な臭いと何かを焼く母親のようなもの…。
⇒ギャインギャインと不協和音を鳴らすような、着地点が見えず、なのに何かの法則に組み立てられたような話の流れがまさにDjentのような感覚に陥ります。通底しているのは、不可解なのに感情的、無表情なのに怒りを感じる不気味さといったところでしょうか。
バンドで言うならMeshuggahが真っ先に浮かびました。不条理なのにテンポが速く、謎と考察を考えさせる余白もある。ずばりじゃないでしょうか。

『球体X』『モルダー先輩』テクニカル・デスメタル
先輩が出会った女の正体は…?
⇒前後編(『球体X』が前編、『モルダー先輩』が後編)のこの話は禍々しく複雑に積み上げられた謎の展開に思わず唸るテクニカルな側面もあります。
何言ってるのかわからないかもしれませんが、この話は何だか壮大な空気感と邪悪さを感じるんですね。
バンドで言えば、まさにGiganです。彼らのような禍々しい歪さと喉元に突きつけられる鋭に刃のような言葉がそれに近い読後感をもたらします。

『オートマタ』サッドコア
アンティークドールから流れるオルゴールの音色に導かれる希死念慮。
⇒話全体に通底する底知れない悲しみと、わずかに漂う生への爽やかな諦観。それがまさにサッドな雰囲気を呼び込む気がします。
何とも言えない、されど救いがない。ようであるような茫洋とした空気感。
L'Altraの持つ繊細でメランコリックな音響の妙に裏打ちされた空気感によく似た雰囲気のお話であるように思いました。『In the Afternoon』というアルバムの穏やかで掴みどころのない悲しさに似ている気がします。

『じょうろ』エクスペリメンタル/メタルコア
クダマツさんがイベント会場で遭遇した不可解な人間たち。
⇒形容しがたき感情、笑いと恐怖のるつぼに落とされるこの話はエクスペリメンタルやアヴァンギャルドといった方向の怪談にも解釈できます。ヒトコワ的要素も孕みながらも、この世ならざる怪異という線も捨てきれない。
異質な肌触りを持っているのに、聴いたものはこの話の中毒性に取り込まれます。情報量も不思議と多く、Fire-Toolzのようなエクスペリメンタル・ミュージック、もしくはBring Me The Horizonの『POST HUMAN: NeX GEn』のような新しい手触りを持つクダマツさんの必殺の怪談です。
怪談会でこの話を聴けたなら、きっとそのイベントは大当たりです。

いかがでしたでしょうか。
書いてて自分しかわからないような怪文書ですが、気にしません。

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