『猫と回転寿司』(初めての物語)
〜猫と回転寿司 〜
『今日の猫集会は、あの空き地の大きな木の下にゃ。』昨日の街猫回覧板。
時間は、朝の4時。まだ少し肌寒い、朝の涼しい風。1匹、また1匹と待ち合わせの猫集会の場所へと集まって来ました。
『今日のご飯は何にゃ?』
『今日はね、僕のお家はカリカリとふわふわと‥』
『今日さ、皆んにゃでくるくる回るお寿司やさんに行かにゃい?』
『行くにゃ』
『行こう、にゃーにゃー』
街の猫10匹で、あの魚屋さん、ラーメン屋さんを通り越した辺りにある回転寿司に、お手手を繋いで歩き始めました。
猫の通うお寿司屋さんは、朝が早い。
猫による猫のためのお寿司屋さん。着いた頃にはちょうど、お店の空く朝4時半に。
『ニャン名さまですか?』
『ちょうど10匹にゃ』
丁度くるりと回る回転寿司の周りに、椅子が10個。窓辺にはテーブル席も3つ。皆んなお寿司を食べる前の毛繕い中。手も足も綺麗に舐めてっと‥早速注文の時間。
僕は、イワシのシャリ抜きニャ。
私はサーモンとまぐろの海鮮丼のご飯抜きニャ。
えっと僕は、ブリとアジのシャリ抜きニャ。
街の猫のための回転寿司屋さんの、風景。
シャリ抜きはもちろん、わさびにゃんてガリにゃんて出て来ないし。蛇口をひねればお湯ならぬ、お水に牛乳。
『美味しいにゃー』
『にゃー』
『すみませんにゃ。チュールのマグロ味と贅沢サーモン味を2個くださいにゃ』
『にゃー。僕もチュール、えっとまぐろ味を3つに贅沢まぐろをひとつくださいにゃ』
店員は大忙し。3つのテーブル席も満席、子連れのニャン家族も来ていて。子猫と言っても遊び盛り。キッズルームならぬじゃらしルームではその子猫2匹が走り回ったり舐め合ったり終いには猫パンチ。遊び疲れた子猫2匹は、お母さん猫の方へ駆け寄っていき‥
『お母さん、ぼくチュール食べたいにゃ』
『わたしはふわふわにミルクにゃ』
すると店員さんが来て、
『あちらのじゃらしルームの蛇口を捻って見てくださいにゃ。じゃらしルームだけは蛇口から、このボタンを押せば食べたいチュールが出て来ますにゃ』と。
さっきまで走り回っていたじゃらしルームに、今度はお母さん猫と行った子猫2匹。壁にくっついている蛇口、その横にある幾つかのボタン。マグロ、イワシ、サーモン、アジ‥他にも何種類かのチュールのボタンが備え付けられていた。
『何味のチュールがいいにゃ?』
『ぼくはまぐろとアジのチュールがいいにゃ』
するとお母さん猫が言いました。
『蛇口をひねってみにゃさい』
子猫が蛇口をひねると、まぐろのチュールが一本分ちゅる〜。子猫は大喜び、蛇口から出てくるチュールをぺろぺろと美味しそうに舐め2本目のアジのボタンを押してちゅる〜、またぺろぺろぺろり。大満足な子猫はその場でお腹を見せるようにコロリンと、2匹ともにお腹いっぱいの様子。
そうして、ちょうど6時頃。4時半に着いた頃はまだ日の出前、薄暗い空でしたが・・・陽は昇りようやく街も動き始めた気配。猫達の早い朝、車やバイクの音に耳を澄ませ気を配りながら、ひと踏みひと踏み、行き道を戻ってゆく街猫達。
街猫達の大冒険。
街猫達の回転寿司屋さんは、今日も早い朝から賑わって大繁盛。10時には閉店しました、とにゃ。
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