14年と4ヶ月。
それは初恋ではなかった。
でも、何故か色濃く私の中に残っていた恋情だった。
中学校に上がる春。それが彼との初めての出会いだった。彼は明らかに他の人とは違っていて……言葉にするのがとても難しいのだけど、強いて言うなら、『雰囲気』が。雰囲気がどこか儚げで、私は一瞬で目が離せなくなってしまっていた。
それから私は転がるように彼を好きになってしまっていて、どうしようもなくなっていた。
私は一途な方だったから、三年間ずっと彼を見続けていた。途中から、彼も私のことを好きな素振りが見えて、更にどうしようもなくなっていた。
ただ、自分から「告白」する勇気はなかった。
1年生から2年生の間は奇跡的に同じクラスになれたが、3年生では違うクラスになってしまった。
その時、私は「あなたとはなれても、全然寂しくない」素振りを彼に見せてしまったのだ。それがきっかけで、私達の恋は小さく歪んでしまった。
この恋に明らかな亀裂が入ってしまったのは卒業式でのこと。久々に顔を合わせたというのに、私は彼が何か言おうとしているのを強がって無視してしまったのだ。視線の端で、彼が明らかに傷ついた表情をしていたのを私は見逃さなかった。でも、私は暫く話していないという不安故に何もできなかった。私は無力だった。
それから高校に上がったが、彼をすぐに吹っ切れる筈もなくズルズルとここまで来てしまった。
風の噂で彼に可愛い彼女ができたことを知ったが、他の人に行ってしまおうとは毛頭思わなかった。それ程彼のことが大事で、大切だったから。
26歳になっても私はまだずっと彼のことを忘れられずにいた。こんな愚直な思い、どうにもできないことはわかっているのだけど。一生背負い続けていくのもありか、と自嘲気味に笑いを浮かべていたのだが、突然その時は来た。
「彼への気持ち」を過去のものとして受け止められると不意に思ったのだ。ここまで拗れていつの間にか執着じみた気持ちになっていた所をなんとか終止符を打つことができた。
14年と4ヶ月だった。
一つの恋が終わるまでにこれほどかかる人がいるのだろうか。いないのではないかと私はどこかで思っている。
8月11日は私の『脱・恋記念日』だ。
今までありがとう、好きだったことは忘れない、また会えたらちゃんと心置きなく笑い合えるように。