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【分析】石破政権で鍵を握る農水族と国防族、資金力と集票力とは?


石破茂が日本の次期総理候補として注目される中、石破茂総理の政権で影響力を持つであろう「農水族」「国防族」に焦点を当てることが重要です。二つの族議員は、石破政権のリーダーシップの下で、政治資金や選挙票に大きく関わり、政策意思決定や政権の基盤となる可能性があります。今回は石破政権に関わる農水族と国防族について語りたいと思います。

石破執行部の骨格固まる

まず石破茂自民党執行部について語りたいと思います。

総裁:石破茂(鳥取1区・12期) 旧石破G
副総裁:菅義偉(神奈川2区・9期) 旧菅G
幹事長:森山裕(鹿児島4区・7期 参1期) 旧森山派
総務会長:鈴木俊一(岩手2区・9期) 麻生派
政調会長:小野寺五典(宮城6区・8期) 旧岸田派
選対委員長:小泉進次郎(神奈川11区・5期) 無派閥
国対委員長:坂本哲志(熊本3区・7期) 旧森山派

いかがでしょうか?なんと総裁を除く農水大臣経験者が2名、防衛大臣経験者が1名入っているのです。森山総務会長は石破執行部で幹事長に就任する見込みですが、実際に農水政策に強く、おまけに無派閥や菅前総理、二階元幹事長、岸田総理と近い存在であるなど、党内の人脈も強い方です。そうした意味からの起用でしょう。今回、国対委員長に入った農水大臣の坂本農水大臣に関しては、TSMCを誘致した選挙区の国会議員であり、森山派所属だった農水族です。

そして政調会長に就任した小野寺氏は国防族(防衛大臣経験者)ですが、それだけでなく出身大学が水産業、さらに選挙区が東日本大震災で被害に遭った地域の代議士であることから、石破政権の政策の骨格となる防災省やアジア版NATOなど実際に肝入りで登用された政調会長でしょう。

内閣でも重宝される国防族、農水族

続いて内閣人事の方も見ていきたいと思います。

【国防族】
防衛大臣:中谷元
外務大臣:岩屋毅
【農水族】
農水大臣:小里泰弘

まず防衛大臣はかつて平和安全法制の時に大変厳しい中で防衛大臣を担った中谷元防衛大臣の再登板ですね。岸田政権では人権担当の首相補佐官に任命され、石破内閣では防衛大臣に再登板みたいです。
外務大臣には岩屋毅元防衛大臣、こちらは石破陣営の選挙対策本部長として、支えてきた存在であり、なんと岸田総理の同級生です。(早稲田大学)

外務大臣はこれまで岸田さんや河野さん、茂木さん、林さん、上川さんの5名が第二次安倍政権以降の外相です。面白いことにそれぞれ強いキャラをお持ちで、岸田外相は酒豪かつ幼少期の留学経験、河野外相は高校から米国留学で最多訪問です。
茂木外相はタフネゴシエーターという異名を持つ剛腕で、林外相はピアノや音楽鑑賞など多趣味な一面があります。上川外相は米国議員のスタッフを務めていたなど、どの外相もそれぞれ面白いユニークな外相であり政権を支えたと記憶しています。

岩屋さんは外務副大臣の経験があり、鳩山先生の元秘書であられたことも踏まえると、安全保障の観点でアプローチが強い外相である気はします。

いずれにせよ次の外相に注目です。

小里さんに関しては岸田政権で総理秘書官を務めていた経緯から、農水大臣就任は適材と言えるでしょう。ただ・・・課題はありそうです。

農水族のから

農水族議員の影響力:農業の未来を左右する力

石破政権において、農水族が特に注目される理由は、農業政策が選挙結果に直結するためです。吉川貴盛元農相は、かつて「商工族」出身でありながら、後に「農水族」として知られるようになった代表的な例です。吉川元議員は北海道を地盤とし、農業の重要性を認識し、農協幹部や地元業者との強い連携を築きました。

しかし事件が起きます。

 吉川貴盛元農相(70)は、農林水産分野に強い「農水族議員」として、業者に寄り添う姿勢を見せていた。鶏卵業界を代表するアキタフーズ元トップとの間の現金授受疑惑は、東京地検特捜部によって本格的に捜査されることになった。

 「農業は地元北海道の基幹産業だから、しっかりやらないといけない」。安倍内閣で農水副大臣に就いた2013年ごろから、吉川氏は周囲に農政への思いを語るようになったという。

出典:東京新聞 2020年12月26日 アキタフーズ元代表、政治家との関係誇示、農水族に照準 河井元法相が仲介 吉川元農相の現金授受疑惑

農業分野では、アキタフーズとの現金授受疑惑が大きな話題となっています。吉川氏は農水省との強いパイプを活かし、鶏卵業界の利益を代弁してきました。吉川氏の影響力は、自民党内でも強く、、実際に農林・食料戦略調査会の会長代理を務めるなど、農政の方向性を決める立場にあったほどです。

このような議員たちは、地元の選挙においても地元の農業者の支持を集め、
大きな集票力を持っています。

現在は立憲の松木謙公衆院議員が現職ですが、依然として自民の不祥事を忘れてはいない有権者が多いでしょう。

また、日本の農業の労働生産性は依然として課題です。米国と比較しても40分の1に過ぎず、イノベーションの導入が急務です。実際にスタートアップも結構大きな規模で成長させる必要があり、利権固めの旧来の組織はイノベーションを受け入れながら、柔軟に対応する必要があります。

以前、組織票についてお伝えはしましたが、187,740票(2022年参院比例)を持つ農業の力を石破政権ではどのように扱うのか?注目していく必要があります。

アグリビジネスの拡大が今後の課題として挙げられる中、農水族議員たちはこれを推進する立場に立たされており、その資金力と政策への影響力が今後さらに増すと予想されます。

国防族と石破内閣

国防族と防衛予算の拡大

一方、石破政権の国防政策においては、国防族が重要な役割を果たすことが予想されます。石破氏は、米国との軍事同盟を強化し、日本の防衛力を拡大する必要性を強調しています。アジア版NATOの創設を提案し、米国の「核の共有」「持ち込み」を検討すべきだとしています。

これにより、日本は中国や北朝鮮、ロシアの核の脅威に対抗する抑止力を強化できると考えています。

なお国防族の集票力についてですが、こちらも参院の全国比例で鑑みて判断しますと、宇都隆史氏が101,840票獲得され落選されたことから、実際は農協や労組、医師会や看護系よりも集票力は低いものの、近年は外交安全保障環境に対し関心が高まった経緯から、より重要視される族議員だと思われます。

防衛費と増税の議論

防衛費の増額に伴う財源確保が課題となっており、石破政権下では増税が議論の焦点となるでしょう。防衛増税は法人税や所得税の引き上げを伴い、国民からの反発も予想されています。しかし、国防族は、国防力の強化が国家の安全を守るために不可欠であると主張し、増税の必要性を訴えています。

また防衛大臣を担える人材が少ないことが課題です。今回の中谷防衛大臣は2回目であり、浜田元防衛大臣も2回務めています。小野寺五典新政調会長は防衛大臣を3回務めています。自民党でさえこの人材不足ですから、立憲や維新でも防衛大臣に相応しい人材は数に限りがあります。

だからこそ防衛大臣に相応しい人材を作らなければならないことも、本来は考えていくべきでしょう。

いずれにせよ石破内閣の人事はそういった観点を改めて認識させられるものでありました。


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