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ブイの撤去、なぜ出来ないのか? ブイと領土関係を振り返る
ブイの撤去、なぜ出来ないのか?
尖閣諸島沖における問題の背景
尖閣諸島沖の日本と中国の地理的な中間線の日本側に、
中国が大型ブイを設置した問題は、発覚から約10カ月が経過しています。
日本政府は中国側に抗議を行っていますが、
自身での撤去には慎重な姿勢を崩していません。
尖閣諸島沖の日本と中国の地理的な中間線の日本側に、中国が大型ブイを設置した問題は、発覚から約10カ月が経ちます。日本政府は中国側に抗議していますが、日本による撤去には踏み切らず、慎重な姿勢です。しかし、海洋法に詳しい坂元茂樹・神戸大名誉教授は「撤去は法的に可能」と指摘します。
しかし、海洋法に詳しい専門家は「撤去は法的に可能」と指摘しています。
問題の背景として、そもそも日本と中国の間で排他的経済水域(EEZ)と
大陸棚の境界画定がなされていないことがあります。
日本は地理的中間線を暫定的な境界としていますが、
中国はこれを認めていません。
日本側の主張では、国際法上の判例に基づけば日本の立場が妥当であり、
中国の主張には根拠が乏しいとされています。
注釈: 排他的経済水域(EEZ)とは、沿岸国が天然資源を探査・開発する権利を持つ200海里(約370キロメートル)までの海域のことです。
2012年、野田内閣が尖閣諸島を国有化して以来、
尖閣をめぐる日中の争いは熾烈を増していました。
産経によると最長記録更新です。
明らかな領土侵害で、こちらも主張は必須ですが、
同時に和平的な行動も必須でしょう。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海外側にある接続水域で29日、中国海警局の船2隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは160日連続。日本政府による2012年9月の尖閣諸島国有化後、最長の連続日数を更新した。
この両国を巡る争いは海だけでなく、アジア全域を巻き込んだ
ケースになってはなりません。
衆院外務委員会での論戦
13日の衆院外務委員会では、
ブイの撤去を巡って外相と野党議員の間で激しい論戦が繰り広げられました。
産経によりますと無所属(会派・立憲)の松原仁議員は、
「ブイを撤去しないと国益を守れない」と強調しましたが、
上川陽子外相は「有効な対応を適切に実施していく」
と述べるにとどまりました。
この議論は平行線をたどり、未だ解決の糸口は見えていません。
ブイの設置が確認されたのは昨年7月で、
岸田文雄首相も日中首脳会談で習近平主席にブイの即時撤去を求めていますが、
中国側に応じる気配はありません。
13日の衆院外務委員会では尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の排他的経済水域(EEZ)内に中国が大型の観測ブイを設置した問題を巡って上川陽子外相と野党議員が論戦する場面があった。無所属の松原仁衆院議員は上川氏に対し、「ブイを撤去するかどうか明確にしないと国益は守れない。事実上放置する判断をしているとしかみえない」と指摘したが、上川氏は「有効な対応を適切に実施していく」と述べるにとどめ、議論は平行線をたどった。
一方で日本もブイの撤去には動いておらず、
この問題が平行線で1年経過するのは
あってはならない問題でしょう。
中国にとってブイの設置は、
尖閣周辺海域での管轄権を既成事実化する狙いがあると見られており、
中国の研究者がブイの観測データを基に学術論文を発表していることも
明らかになっています。
海外の実例:エストニアとロシアのケース
AFPBBの海外の実例として、
エストニアとロシアの国境を示すブイが
ロシアにより撤去されたケースがあります。
【5月25日 AFP】欧州連合(EU)は24日、ナルバ(Narva)川に設置されていたエストニアとロシアとの国境を示すブイをロシアが撤去したと非難した。
EUのジョセップ・ボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表(外相)は「国境での今回の出来事は、バルト3国の海陸の国境などでのロシアの広範な挑発およびハイブリッド行動の一環」だと指摘し、「容認できない」と非難した。
EUはこれを非難し、「バルト3国の国境でのロシアの挑発行動の一環」と
指摘しました。エストニアもロシアに対してブイを直ちに元に戻すよう
求めています。こうした国際的な対応も参考にすべきでしょう。
もちろんここで善悪を判断することは控えますが、
少なくともロシアがブイを撤去しているのであれば、
日本も我が国にブイを置かれたならば
撤去する選択肢を持つべきではないでしょうか?
エストニアはロシアの国境警備隊が未明にブイを撤去したと発表しており、
これを「挑発的な国境事件」として扱っています。
エストニアは、ロシア側に説明を求めるとともに、
同盟諸国と連携して対応を強化しています。
日本政府の対応とその限界
尖閣諸島周辺のブイの問題については、日本政府も中国に対して即時撤去を要求していますが、中国は応じていません。政府は国際法上の「グレーゾーン」として頭を悩ませており、具体的な行動に踏み切れない状況が続いています。UNCLOSに基づけば、日本のEEZ内での構築物の設置には日本の同意が必要ですが、これが事前協議なく行われたことは国際法違反です。
注釈: UNCLOSとは、国連海洋法条約の略で、海洋に関する国際法の枠組みを提供する条約です。
問題の複雑さは、日中間の海域のEEZ境界が未画定であることにあります。日本は中間線を境界としていますが、中国側はこれを認めていません。また、UNCLOSには今回のような違反に対する具体的な物理的措置の規定がなく、判例の蓄積も不足しています。このため、政府は慎重な対応を続けています。
中国の戦略と日本の対応の必要性
尖閣諸島周辺の状況を見ると、
中国は超限戦という戦略を採用しており、
法律戦や心理戦を組み合わせた複雑な戦略を展開しています。
中国はランドパワーからシーパワーを意識しているのは
フィリピンや台湾との衝突を含め、
有名でしょう。
中国は戦狼外交で国際社会に対して日本を道徳的に非難し、
認知戦を展開しています。
これは国内でのアピールにも使え、
世界に中国の存在をアピールする機会ともいえます。
ブイの設置も、日本を混乱させるための新たな手段として、
法律戦・心理戦の一環と見られます。
注釈: 超限戦とは、軍事・非軍事の境界を超えた全方位的な戦争のことを指します。
日本政府は国際法を巡って逡巡している間に、中国は既成事実を積み重ねています。この状況は日本の対応の遅れを意味しており、より迅速かつ効果的な対応が求められています。国際法上の問題を検討しつつも、具体的な行動を取ることが、日本の主権と国益を守るために不可欠です。
結論として、日本政府は慎重な姿勢を保ちながらも、
ブイの撤去を除外せず具体的な対策を講じる必要があります。
中国の行動に対して適切な対応を行うことで、
日本の主権と安全を確保し、国民からの信頼と
国際社会における地位を守ることが重要です。
以上のように、日本と中国の間でのブイ設置問題は、単なる海洋境界の問題に留まらず、国際法、外交戦略、心理戦の複雑な要素が絡み合っています。
岸田政権はこれらの要素を総合的に考慮し、
迅速かつ効果的な対応を取る必要があります。
そうでなければ自民党の再生はさらに可能性が低くなる
恐れもあるため、建設的かつ安定的な日中関係の
構築が求められます。