産業保健と法律

法律が苦手な方も多いと思います。
私もとても苦手です。
4年間も学んだもののやっぱりまだ苦手で、逃げたいな…
と思うときもありました。

産業保健のお仕事は、法律や政令、判例などとお友達になると、とても楽しいと思います。なぜなら、根拠が分かるからです。根拠がわかるということは、自分の活動に自信を持てますし、予算の編成や会社の偉い人を説得することもできます。
学生時代や病棟看護師時代に、指導者が気分屋さんで、感情で指導をする人に遭遇したことはありませんか?
私はあります。本当にこの時には、何故?どうして?と考えても答えが得られず、非常に苦しみました。
何かを伝えるときには根拠がしっかりしていると、相手方も理解が早いと思います。

私の忘備録的な記録として、自分の普段の頭の中の整理として、少しだけ書いていきます。

最高法規、日本国憲法

 日本で生きる上で一番重要なものは、日本国憲法です。戦後作られました。
 この憲法のもと、民法や刑法等様々な法律が作られています。
(※ 民法や刑法等は、大日本帝国憲法の時代に作られたものを、改正して使用しています)
 憲法、民法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、商法という基本六法というものがあるので、気になった方はどんな法律かな~?と、一度ご覧ください。
 日本で暮らす私たちを守っている法律たちです。

そんなもんは中学時代にやった。私は産業保健でどういうものが必要なのかが知りたいんだ!!
と思われるかと思います。
まずは、産業保健の産業について、つまり、労働者について考えて生きたいと思います。

話の前提として、日本という国で暮らして、生きているという前提でお話を増します。
日本国憲法では勤労が三大義務の1つとして記載されています。(§27-1)
勤労…つまり、働くためには、多くの人は会社に採用されてお仕事をしていきます。
この際、会社と私たちは労働契約を結んでいます。
労働契約には労働契約法がありますが、一番のベースとなるものは民法です。
民法のルールは、私たちが生きている社会の中に様々あり、身近なものでは結婚も1つの契約と考えることができます。

民法は契約のルールなどを定めている

コンビニでおにぎりを買うのも、1つの契約により成り立っています。
意識していないだけで、私たちの生活にはこの契約がたくさんあります。

産業保健の世界にも、民法に関する訴訟はたくさん起きています。
訴訟になるということは、守らないといけない面倒くさいやつだなと思う方もいるかもしれません。

基本六法がない世界とは

 基本六法をはじめとして、法律たちは、日本で生きる私たちを守るために存在しています。
法律がない世界だったら…物理的に強い人がルールを作り、北斗の拳のような世界になってしまうと思います。
日本でいうと、戦国時代のような…そんな、ルール無用の残虐ファイトがその辺で起きてたりするかもしれません。

刑法も看護職の仕事と関わる

 このほか、刑法も私たちのお仕事では重要です。
刑法§134 秘密漏示
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
刑法では看護職は入っていませんが、私たちが業務上知りえた情報を、家族や友人にお話ししたり、SNSでわかるように書いてしまうのは刑法でダメだよと記載されています。
保健師や看護師は同じような内容が保助看法§44-2で規定されています。
保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなつた後においても、同様とする。

法令は身近に存在している

 こんな感じで、基本六法は私たちの業務でも実は重要で、知っていると自分の身を守るものであります。

車を運転する人、自転車に乗る人は道交法が。
会社を設立したり運営している人は会社法が。商売をする人は商法が。
というように、基本六法は日本で生きる上でとても大切なルールになります。
知らなかったからといって、違法なことをしても良いわけではありません。
特に刑法§38第3項では
法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
と記載されています。
ただ…この一文だけで、何でもかんでも知らないといけないのか?ということについては説あり、一概に違法であるということを知らなくてもいい場面もあると考える人もいます…実は難しい内容で、私自身も良く理解できなかったところです。

そんなわけで、私はお仕事をする上では法律を知り、活用していく必要があると考えています。

法律の落とし穴

 ただし…法律にはすべてのルールが記載されているわけではありません。
また、その記載内容が難しく、実生活ではどう解釈したらいいのかな?と悩む場面も多数あります。
 そんな時には、省庁からでる通達等をみたり、過去の類似判例を見て考えていくことになると思います。
 明確な根拠がなく、悩むこともたくさんあると思いますが、大原則を知っているだけでも、少しは安心できると思います。

参考

私がお仕事の際に見たりしているサイトたちです
e-Gov 法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/
e-Gov 所管法令・告示・通達
https://www.e-gov.go.jp/laws-and-secure-life/law-in-force.html
裁判所 判例検索
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
JISHA中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター 法令・通達
https://www.jaish.gr.jp/user/anzen/hor/horei_index.html


産労総合研究所 労働判例
https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/rodohanrei/
労働新聞社(様々なニュースなど見るのに便利です)
https://www.rodo.co.jp/

個人的におすすめ

 労働に関する判例は、産労総合研究所の労働判例に解説が掲載されているので、わかりやすいと思います。
また、会社によっては、人事労務系で労働新聞を定期購読していたり、図書館によってはおいてある場合もあるようなので、無理に買わなくてもいいと思います。
 様々な判例があり、全てに目を通すのは難しいので、まずは業務で気になったことを見ていく感じで、少しずつ触れていってみてください。
少しずつ触れていくことで、こういうルールがあるんだなぁ…と知って頂ければ幸いです。


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