入院の思い出
今からさかのぼること20年ほど前。中学3年の頃のこと。
体調不良で病院へ行ったところ髄膜炎かもしれないと言われた。
髄膜炎って何???
どんな病気かはわからなかったが、とりあえず入院することになった。
俺自身は大人のつもりでいたけれど、中学生までは小児病棟らしい。
というわけで、小学校低学年ぐらいの子と同じ部屋に入れられた。
あまりうるさいのはイヤだな、と思っていたが、幸いにも、その子はとてもおとなしかった。
数日間は、夜も安らかに睡眠。よかった。
が!ある夜!
あまりのうるささに、俺の睡眠が妨害された。
な、何事!?
子供が泣いたり騒いでいる音ではない。擬音語で表すなら
ボリボリとか
ガリガリって感じ。
とりあえず、その音が、隣の子のベッドの方から聞こえてくるのは間違いない。
そーっと、カーテンの間から隣の様子を覗く。
すると、そこには
センベイをかじるおばさんの姿!
だ、誰だっ!?
冷静に考えれば、隣の子の母親であることは明白。
しかし、見舞いに来てセンベイ食うか・・・しかも病室で。
ちなみに、その音にも動じず眠り続ける子どもの姿がそこに。
慣れてるんだろうなあ・・・。拍手。
と、まあ、そんなわけで、俺が再び夢の中へといざなわれたのは、おばさんがセンベイを食い終わった数分後だった。
静かになった病室で、徐々に深い眠りへ・・・
!?
俺が再び目覚めたのは、どれほど後だったのだろう。
胸の辺りに異様な不快感を感じて目が覚めた。
視線を自分の体に移すと・・・
血!?
ベッドのシーツと俺の胸の一部を赤く染め上げるのは紛れもない血液!
何が起きたのかわからず、頭はとにかく混乱。即座にナースコール!
看護婦さんがすぐにやって来る。
「あ、点滴はずれちゃいましたね」
あ・・・。
よく見れば、右腕にしていた点滴がはずれ、血を流している。
先ほど起きた時にはずれかけていたのだろうか。
何だ。吐血とかじゃなくてよかった。
「シーツ取り替えますから、着替えましょうね」
優しい看護婦さんに感謝。
やれやれ。やっと本当に眠れる。
そう思って布団に入ると
すでに窓の外が明るく・・・。
二度と入院はなんてするものか!
固く心に誓った俺はその後二度と入院していない。
ちなみに、検査の結果は髄膜炎ではなく気管支炎でした。