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私が一生勝てない、大っ嫌いで恩人な人。

昼ドラすぎる人生の始まり

一般ピーポーのパパ。ヤンキーの子のママ。そして、とてつもない有名ミュージシャン。

この三角関係の末に生まれた私。

ミュージシャンと結婚する気満々だったママはパパへの愛が1mmもない。「子どもは親の奴隷だよ」と私に発言した人から生まれたパパはきっと愛しかたが分からないのだろう。あの家に標準的な愛は存在しない。

愛ってなんなんだ?
好きってなんなんだ。

この家に限っては「子どもは愛の結晶」ではない

そんな家から始まった人生だったけど今があるからそこまで後悔はない。だけどモヤモヤはある。きっと私の家の人達は彼らなりに「愛」に向き合いもがいているような気もする。

私だってもがいている。

一般的には、愛は時間では無いらしい。

「過ごした時間じゃない、質だよ」みたいなセリフをドラマでよく聞く。結婚の記者会見とか。

その言葉に縋ってみたい時期もあった。

だって私には時間では勝てない相手がいるからだ。それが最初に出てきたミュージシャン。ママは中学生から好きで両親公認だし多分なんにもなければ彼と結婚してたのだろう。

それがかくかくしかじかあってパパと結婚した。私が生まれて、弟が生まれてしまった。

普段ママは、「パパと結婚して良かったのはあなた達と出逢えたこと」と言っていた。表面は。彼女は知らないだろうが酔うと「もしあなた達がいなければミュージシャンと結婚できたのに」が口癖だった。

彼のライブに行けば、彼が見えた瞬間ママは私を突き飛ばし彼ものとへ駆けつける。

「この人には一生勝てないんだ」
「子どもが1番というのは幻想だ」

時間に勝てない人間もいるのだと子どもだった私は悟った。特段死ぬほど悲しいとか悔しいとかそういうのはあんまりなかった。でも周りの人やドラマの中で、「あなたが1番」って言われてるのいいなぁって思うくらい。

感情を捨てられるようになってからはどうでも良くなったけど、今両手を繋いで歩いている親子を見るといいなぁと思ってしまう。一生感情が感じられない方が楽だったかもしれないけど嫉妬をするのも人間らしくていいか、とも思うようになってきた。


大っ嫌いだけど恩人だった彼。

そんな、私が勝てない彼。でも彼がいなければ私がいない、恩人であることには間違いないのだ。

そんなミュージシャンの彼は亡くなってしまった。亡くなってすぐ、ある番組の功労賞を受賞した。

彼が作る音楽は贔屓目なしにとても凄い。魅力も才能も人を惹きつける能力も持ち合わせてるすごい人。

一緒に仕事をする約束もしてた。それが終わったら純粋に恨んでいたこと。でも、あなたがいなければ私もいなかったという感謝を伝えようと思ってた。それは叶わなくなってしまったし、もう一生勝てなくなってしまった。

ママの愛は彼にしか向いていない。きっと。

彼が無くなった3日後、ママが死にかけた。きっと彼が連れていこうとしているんだと思った。でも今ままに死なれたら私は後悔すると思った。

だから、色んなリスクを犯して病院まで行ったし生きてて欲しいと思ってた。でも一命を取り留めた彼女が私に放った言葉は、

「彼の元に行きたかった」

だった。それから彼女は「死にたい」しか言わなくなった。私は、何か間違いを犯しただろうか。私が後悔すると思うから生きてて欲しいと思うのは私のエゴなのだろうか。

私だって、ずっとネガティブに付き合ってるのは辛いしこのまま彼女らと付き合い続けると当事者を抜けられない葛藤と闘っている。

でも、死んでいいよ彼の元に行っていいよとは言えるものじゃないよね。

ここまでママから愛される、亡くなったあともたくさんの人が覚えてて、グッズがプレミア化して、たくさんの人から賞賛される彼はすごい。

私が生涯でいちばん嫌いな人であり、1番の命の恩人の人。

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