ミュージカル「マリー・アントワネット」の話

 こんにちは、雪乃です。ミュージカル「マリー・アントワネット」の感想をまだ書いていなかったので書こうと思います。タイトルの通り、フランス王妃マリー・アントワネットのたどる運命にマリーと同じイニシャルを持つ貧しい女性であるマルグリット・アルノーを絡めて描いた作品です。

 「マリー・アントワネット」の重大なネタバレが含まれていますのでご注意ください。しかも勢い余って1789のネタバレもしてるので重ねてご注意ください。加えて、原作未読、旧演出版未見(CDは聞いた)で今回の再演を一回しか観てない人間が書いているのでご了承ください。全部私個人の見解と解釈です。

 まず、全体を見て思ったことが、「マリー・アントワネット」の主題は革命そのものではなく、「人は生まれを選べない」ということだったのではないかということ。
 マリーは「孤独のドレス」で「王妃でさえなければ」と歌い、ルイ16世のソロ曲のタイトルは「もしも鍛冶屋ならば」。しかもマリー、フェルセン、オルレアン公、マルグリットがメインになって歌うナンバーのタイトルは「もしも」。このあたりから思いました。
 また、王の従兄弟であるオルレアン公が王座を手に入れようとする動機に関して、「生まれは選べないからこそそれを覆したかった」からではないかと解釈したら私的にはしっくりきました。
 そして、マリー・アントワネットと対になるもう一人の主人公と言えるのがマルグリット・アルノー。彼女は劇中で、王妃マリー・アントワネットの異母妹であることが明かされます。原作未読なのですが、この設定は原作からあるの……かな? すいません、早急に原作読みます。
 王家を憎んでいたマルグリットに、王妃と同じ血が流れている。この設定で、「生まれは選べない」というテーマが炙り出されるように作られているのかな、と感じました。

 個人的に一番好きだった演出は、フェルセンが王妃の死を知るシーンから始まって、2幕でまたそのシーンに戻ってくる点ですね。あとフェルセンのソロナンバー「遠い稲妻」が本当に好きなのですが、新演出版で追加された新曲である関係で旧演出版のCDに入っていないのが結構辛いです。新演出版もCD出してほしい。

 同じフランス革命を題材として扱ったミュージカルだと「1789 バスティーユの恋人たち」があります。私が観たのは東宝版のみなのですが、マリー・アントワネットを観たら1789が恋しくなり、さらに宝塚版も改めて通しで全曲聞きたいなということで、さっきキャトルレーヴの会員登録してCDポチりました。

 1789は、貧しい生まれで革命に身を投じる青年ロナンが主人公。マリー・アントワネットの原作は遠藤周作ですが、1789はフランス生まれのミュージカル。2作品見ましたが、革命をがっつり主題にしていたのは1789だと感じました。まあそりゃ本場が作った作品だからね。1789の革命は主題にして物語の軸にして主旋律、マリー・アントワネットの革命は歴史的なバックグラウンドという感じでしょうか。

 1789のヒロインは貴族の女性オランプ。王太子の教育係として王家に仕えながらもロナンと恋に落ちる、という役どころ。オランプはロナンを亡くした後、「自由とは、他人を害さないすべてのことをなし得ることである」と宣言します。フランス人権宣言の有名なフレーズです。ちなみに私はここで号泣しました。貴族として生きてきたオランプがこの台詞を口に出すことで共和制の成立を示すとともに、オランプを新時代の象徴として昇華するこの演出が本当に好きです。2018年のPVにこのシーンが収録されているのですが、もうPVで見るだけで泣けます。
 そしてマリー・アントワネット。こちらでは、マリーの首にギロチンが落ちる瞬間とフランスの三色旗が舞台上に降りてくる瞬間を重ねることで共和制の成立と近代の幕開けを示す演出でした。このシーン、ゾクっときましたね。1789のオランプは「新しい時代の幕開けの化身」に見えましたが、マリー・アントワネットはマリーを「一つの時代を終わらせる依り代」にしたみたいに見えて。1789もマリーアントワネットの演出も、甲乙つけがたいくらい好きです。
 ギロチンと言えば、スカーレット・ピンパーネルのギロチンのシーンを思い出します。あれは生々しかったな。初見で衝撃を受けました。

 マリー・アントワネットで結構驚いたのがラストナンバー。まさか「復讐は終わるか」「過去から学べるか」まで大きなテーマに行くとは思ってませんでした。このあたりもマリー・アントワネットにおいて革命そのものは主題ではないと思った所以です。CDでしか知らない旧演出版だとラストナンバーは「自由」だったようですが、こっちのバージョンも聞いてみたかったなあ~。

 1789の話も混ざりましたが、マリー・アントワネットのファーストインプレッションはこんな感じです。本日もお付き合いいただきありがとうございました。
 

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