満州アヘンスクワッド 1・2巻感想

 こんにちは、雪乃です。今日は、前から気になっていた漫画「満州アヘンスクワッド」の1巻と2巻を読んだ感想を書こうと思います。

 舞台は昭和12年の満州。片目の視力を失った日本人兵士・日方勇が、アヘンの栽培と密売に手を染めていく物語です。
 ペストに感染した母親の薬を買うために、勇は中国最大の秘密結社・青幇のボスの娘である麗華と手を組んでアヘンを売りますが、母親は薬が届く前に亡くなってしまいます。そこで勇は、妹と弟と共に日本へ帰るための費用として1万円(当時の金額)を貯めるまで、と麗華と約束して本格的にアヘンを売ることを決意します。ここまでが1巻のおおよそのあらすじ。

 昭和初期の満州が舞台でアヘンが題材ということもあり、重めな作品かと思っていましたが、テンポは良かったです。
 虚実織り交ぜたスタイリッシュ昭和アヘンバトルと言った感じですが、絵柄に重厚感があるので軽すぎることなくまとまっていたと思います。

 あと、主人公の勇が冒頭で片目の視力を失うのですが、それによって嗅覚が研ぎ澄まされてアヘンの存在に気が付く、という流れはかなり好きでした。そしてこの嗅覚が2巻でも生かされるところも好きです。本を読むシーンや植物や化学への造詣の深さがきちんと描写されているので、勇が発煙筒を作ったり異民族の習慣を勉強するなどの行動にも説得力がありました。

 勇以外のキャラクターもすごく濃くて良いですね。勇と手を組む麗華は行動力と判断力とビジネスセンスに優れ、色仕掛けまで何でもこなすスーパ―ヒロイン。麗華お姉さま、抱いてくれ。
 勇とその妹弟に料理を振舞うシーンは、アヘンの密売という反社会的な動機で繋がっているにも関わらず、どこか疑似家族のようで大変エモかったです。

 そして青幇お抱えの凄腕密売人・リン。まだ子供ながら異次元レベルの記憶力を持っています。いつか両親と再会できる日を夢見てアヘンを売っていましたが、両親がすでに殺されていることを知り、勇によって連れ出され仲間に加わります。連れ出しに来た勇に「家族になろう」と言われて求婚されてると思い、その後も勇に頼られて喜ぶなど、年相応な面が可愛いです。結婚してくれ。
 そんな一面もありつつ、関東軍相手にも怯まず堂々と渡り合う肝の座った女の子。やっぱり結婚してくれ。

 忘れてはいけないのが、勇の妹であるセツ。1話でアヘン畑の存在を知った勇を口封じに殺そうとした顔見知りの男性を撲殺するという衝撃的なシーンがあります。勇から「危険な目には合わせない」と言われたものの、青幇が派遣した殺し屋に目をつけられた経験から腹を括り、アヘン製造にも関わっていくことになります。この作品、何気にセツが最強なのでは……?

 男性陣ですと、モンゴル民族出身の青年・バータルがいい味出してます。満州の大学を卒業した彼は語学に堪能で中国語やロシア語にも通じ、通訳として登場します。
 女好きで気のいい兄ちゃんという感じ。シャツの上に民族衣装を合わせているスタイルも好きです。関東軍相手にサーベルで応戦したりと、どうやらバトル方面もいけるっぽい。2巻の148ページはマジでカッコいいから見て。あとシンプルに顔が好みです。好き。

 バータルはモンゴル民族の出身ということで、モンゴルの習俗が登場します。モンゴルと言うとスーホの白い馬のイメージしかなかったので、この辺りは新鮮でしたね。

 2巻の終盤で、李姚莉(リー・ヤオリー)という映画女優が登場します。しかし彼女は本当は日本人で、本名は山内洋子。おそらくモデルは実在の女優・李香蘭でしょう。作中に登場する映画のタイトルも、「白蘭の恋」は「白蘭の歌」、「満州の夜」は「支那の夜」がそれぞれモチーフでしょうか。
 2巻は満映(満州映画協会)に麗華たちが潜入しようとしているところで終わります。

 3巻は来年の2月発売みたいですね。楽しみです。

 本日もお付き合いいただきありがとうございました。