東独にいた 4巻感想
こんにちは、雪乃です。遅ればせながら「東独にいた」の4感を購入しました。表紙のエミリア様がお美しいです。
4巻もすごく面白かったので、感想を書いておこうと思います。3巻の感想はこちら↓から。
3巻で軍人であるアナは、反政府組織「フライハイト」の頭目としてのユキロウ、つまりはフレンダーと対峙しました。そこでアナは改めてフライハイトを斃す意思を告げ、ユキロウはアナの前から姿を消します。続く4巻では、アナが所属する部隊MSGによるフライハイトのアジトへの潜入が描かれました。
話の時系列が少し前後してしまうのですが、4巻はフライハイトの重要人物であるノアゾンのお父さんの話から始まりました。政府の高官でありながらフライハイトの幹部でもあるグローマンも登場。ノアゾンのお父さん、MSGを作ったマイザーさんとも関わりがあったんですね。余談ですがノアゾンのお父さんをノアパパと書こうとしていたのですが、よく考えたらノアゾンの名前自体が「ノアの息子」という意味なので、ノアパパはノアで良いんですね。
前巻までは見られなかった、エッボの戦闘面での強いところも見られて嬉しいです。イーダさんがいないのが寂しい。「東独にいた」の遊びのようなちょっとしたギャグ演出が好きなのですが、エッボがマモーになってて笑いました。
MSGがフライハイトのアジトに潜入したことで、3巻終盤で登場したフライハイトのヘラさんも再び登場。作戦中に対峙したエッボから「こいつは人間か?」と思われていましたが、エッボ、あなたもかなり人間の範疇からは外れてるよ……。
アナとヘラ、超人同士のバトルも見られて良かったです。チート級のバトルが繰り広げられる中、ビアンカだけは等身大のただより良い未来を願う一人の人間という感じがして。ビアンカやっぱり好き。「遅滞作戦」の意味を雨(ウイ)ちゃんに訊くところも、この二人の関係性が窺い知れてニコニコしました。
2巻のフレンダー奪還作戦でクロードの前に倒れたエリゼがすごく好きなキャラクターなのですが、雨ちゃんがエリゼの最期の思いを汲み取ってくれていて嬉しかったです。エリゼのこと好きで良かった……!
ビアンカの持ちかけた交渉にも冷徹に対処するアナがすごくカッコよかった。アナの最強ヒロインたる所以が存分に発揮されていました。
4巻、最後にとんでもないエピソードが収録されていました。作者さんのツイッターで拝見して存在だけは知っていたのですが、とうとう最強の殺し屋「違う顔」の登場です。
全員同じ顔を持って生まれる少数民族「アジャーエフ族」にたった一人生まれた、違う顔を持った子供。それが「違う顔」と呼ばれる人物の正体でした。しかも「違う顔」のさらに特異な点は、アジャーエフ語ではない独自の言語を話すこと。「違う顔」本人曰く、「そっちの文法に引っ張られ」ることがあるらしいのです。どういうことだろうと思って読み進めていくと、急に「違う顔」のセリフが読みづらくなりました。日本語の語順がめちゃくちゃになったのです。「引っ張られる」という「違う顔」にしか分からない感覚が語順の乱れという形で唐突に可視化されたこのシーン、鳥肌が立ちました。もうこの「違う顔」さんのスピンオフが読みたいです。というかアジャーエフ族と「違う顔」を題材にした長編SFが読みたいです。時間を表す言葉を持たず、前や後といった言葉すら持たないアジャーエフ語も「違う顔」だけが話す言語も、すべてが気になります。今はもう「違う顔」のことで頭がいっぱいです。
「違う顔」との対話によって、改めてユキロウの反政府組織の頭目としてのスタンスが明らかになりました。彼は基本的に「この国を斃すとしたら、それは自分たちフライハイトではなく東ドイツの民衆」というスタンスなんですよね。革命家としては結構特異では。
「違う顔」はフライハイトに手を貸すことを承諾。また新たな火種の発生を感じさせるところで4巻は終了。5巻が楽しみです。
「東独にいた」の表紙は今の所奇数巻をMSG、偶数巻をフライハイトがそれぞれ担当しているので、5巻の表紙はイシドロさんかなと予想しています。4巻がエミリアさんだったあたり、6巻はノアゾンのはず。
閉塞的で仄暗い空気感と超人バトルが絶妙に調和している「東独にいた」、今後も目が離せません。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。