
レ・ミゼラブルを観ました
こんにちは、雪乃です。観てきましたよ、今年のレミゼ!!!!!めちゃくちゃ良かったです!!!!!!
いつもは地下から劇場に行くのですが、地下から劇場ロビーに入る入り口が閉鎖されていたので外から入りました。地下から向かっていたことが多かったせいで、帝劇の外観はあまり見ていないので新鮮でした。
今回は珍しく2階席でした。ちょうどセンターだったので、舞台全体を見渡すことができて良かったです。1階席で観たときは没入感が凄まじく、19世紀前半のフランスにいたんじゃないかという感覚を味わっていたのですが、今回は神の視点から物語を俯瞰しているようでこれもまた新鮮でしたね。俯瞰で物語全体を眺めたぶん、レミゼ全体にある陰鬱さに着目できたというか、タイトルに違わず「哀れな人々」のドラマが際立って見えたのも印象的でした。
また2階から観たことで、客席の一番後方から差し込む照明の光の筋が見えたのも印象的でした。まさしく天上から降り注ぐ光といった感じで、神々しかったです。
舞台全体を見て、「レミゼってこんなに油絵みたいなタッチだったっけ?」と思いました。どのシーンを切り取っても絵画のようで美しかったです。音の聞こえ方もすごく良くて、見るなら1階、聞くなら2階という印象。
マリー・アントワネットを観に行ったときも思いましたが、やはり生オケは最強。体に伝わる音の振動が段違いです。開演前の音出しを聞くのが何よりも好きなので、生オケが聞けて良かったです。開演直前にオケピの皆さんが音を取り始めたあの瞬間の高揚感は本当にかけがえのないものだなと改めて思いました。
さて、キャスト別感想です。
まずはバルジャン!NHKで放送されたレミゼ特集の番組で拝見した際は、バルジャンにしては結構お若いかな?と思っていましたが実際に生で拝見するとそんなことはなく。ラスト、バルジャンに迫り来る「老い」の表現がすごく良かったです。まっすぐ帝劇の天井まで届く美声は圧巻でした。ロングトーンも聞き応えがあって最高。お芝居も丁寧ですごく好きだったので、別のお役でも拝見したいですね。
次はジャベール。見ていてずっと苦しかったです。褒めてます。
ジャベールは原作だと獄中で生まれたという設定があり、それゆえに社会から阻害され、社会を襲うか守かの二択を迫られて警察官になった男。今日のジャベールは他のお役でも拝見した際に、歌声とまっすぐなお芝居が好きだなあと思っておりました。そしてジャベールはまっすぐすぎたが故に歪むことも曲がることもできなかった苦しみが痛いほど伝わってきました。歌も本っっっ当に最高で、バルジャンとの掛け合いもバランスがすごく良かったです。バルジャンという光が強くなればなるほど、その光に立ち入ることもできず、むしろ光の方から拒絶されてしまったようなジャベールが際立って見えて、ひたすらにしんどかったです。
終始自分の信じる正義に縛られていた印象のあるジャベールでしたが、そんな彼が唯一解放されているというか、唯一苦しげに見えなかったのが、名曲「星よ」のシーン。幸せとまではいかずとも、あのシーンのジャベールだけは、彼の中にあった正義を存分に燃やすことができていたのだろうと思います。まあ、このシーンが良ければ良いほどに2幕が辛いのですが。
レミゼは最終的にバルジャンが亡くなり、バルジャン含め神の国で救いを得た人々がマリウスとコゼットを見守るシーンで終わりますが、あのシーンにジャベールの姿はありません。どこで聞いたか失念してしまったのですが、彼は自殺をしていて、それがキリスト教的にアウトだったから神の国には行けない……みたいな話を聞いたことがありまして。一番救われるべきジャベールが死によってすら作中の価値観では救われていないのが辛すぎて、ラストシーンはジャベールのことを憶って号泣しました。「誰かを愛することは神様のおそばにいることだ」という歌詞がラストにありますが、神の国に入れなかったジャベールは?と思ってしまい、普通にしんどいまま終演を迎えました。もうジャベールは私が幸せにするしかないな。
次はファンテーヌ。中の人的に「ソフィア様……」ってなりました。「夢やぶれて」では、たった一人で劇空間を埋め尽くす圧巻の歌唱力で卒倒しそうになりました。ファンテーヌが主役かと思ったくらいです。
そしてエポニーヌ。唯月エポニーヌを拝見するのは2019年に引き続き2回目。2019年のときにも感じましたが、エネルギーが凄まじいです。強くて脆くて儚くて、決して悲劇のヒロインにはならないエポニーヌ。今年はさらにエポニーヌが持つ魂の気高さも感じました。よく通る美声と歌唱力はただただ素晴らしいの一言です。
マリウス。内藤マリウスも2019年に引き続き2回目。等身大でまっすぐでピュアで、コゼットに恋をして周りが見えなくなるところも含め、言動や歌声から滲み出る圧倒的好青年感が好きです。等身大の青年だったからこそ、「カフェ・ソング」でたった1人生き残ってしまった辛さが突き刺さりました。
東宝版「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」のミラ役で拝見した際には「内藤さんって音楽座にいたんだっけ?」と思ってしまうくらいには音楽座世界の住人になっていたのですが、レミゼでは原作から抜け出てきたかのようなマリウスで、演技力もですが「染まり力」が素晴らしいなあと思いました。
次にコゼット。熊谷コゼットもまた2019年に引き続き2度目。実はこの方のコゼットを見たいがためにこの日のチケットを取ったといっても過言ではないほど楽しみにしていました。
光そのものに命が宿っているような、内側からエネルギーと生命力にあふれたコゼットでした。ユゴーがコゼットに与えた物語上の役割は、きっとコゼットとして生きることそのものだったのだな、と思わせてくれるような確かな説得力のあるコゼット、今年も素晴らしかったです。透き通るような歌声も大好きです。
「プリュメ街」でマリウスへの恋心に心躍らせるところや、過去のことを話したがらない父親(バルジャン)に能動的に向かっていくところもまた等身大の人間らしさがあって、「生きる光」としてではない、自分のために自分の人生を生きているヒロイン像が立体的でひたすらに感動しました。
テナルディエ。レミゼの中では悪役寄りの立ち位置ですが決して悪役に振り切ることはなく、テナルディエもまた自分の人生を生きていただけなのだと思うことができました。
マダムテナルディエは、もう登場時からの圧倒的ラスボス感が凄かったです。このマダムにテナルディエは絶対に勝てないな、と思いました。
そしてアンジョルラス。原作で一番好きなのはこのアンジョルラスです。小野田アンジョルラス、四季版ウエストサイド物語のトニーで拝見したときも思いましたがやはり歌が上手い。とにかく上手い。柔らかな歌声も好きです。バリケードでの「マリウス、少し休め」という台詞は、マリウスだけではなく全体のことを見渡し、仲間のことを全体的に考えて出てきた言葉という感じがしました。
過去3人のアンジョルラスを見てきましたが、上原アンジョルラスは明るくて陽のエネルギーに溢れた太陽のようなアンジョルラスでした。そして上山アンジョルラスは北極星。静かにブレずに輝く星明かりのような高潔さに溢れていました。
今回の小野田アンジョルラスは月明かりという印象を受けました。太陽の下では生きていけない人のことを考えて行動を起こしたようにも感じられる、優しい革命家。しかしその一方で、バリケードの上で銃弾に倒れ、荷車で無造作に遺体が運ばれていくその様は、革命の成功という夜明けにたどり着くことのできなかった運命の儚さを感じました。アンジョルラスもまた、「哀れな人々」の物語に生きる一人であることを思わずにはいあられなくて涙腺崩壊。荷車で息絶えたアンジョルラスが運ばれていくシーン、政府から見たらアンジョルラスは革命家ではないことを痛感してしまうのですごく辛くて、でもすごく好きなシーンです。
ガブローシュは運命も吹き飛ばせそうな明るさがある分、バリケードで犠牲になるシーンがもう耐えられませんでした。グランテールとの絡みも良かったです。
リトル・コゼットは歌声も可愛かったし、バケツを運ぶシーンはもう原作そのままでした。
リトル・エポニーヌはテーブルの上で足をブラブラさせるところが可愛かったです。
プリンシパルごとのキャストはこんな感じです。2階から観ていると、1階で観ていたときよりテンポが速く感じたのは私だけでしょうか。席が選べるときは1階席を選びがちですが、2階席も全体を観られるので良いですね。
ジャベールに感情移入してしまったがゆえにしんどい気持ちを引き摺ったまま帰宅しました。原作だとジャベールが死の直前に警察の状況改善への進言を書き残すシーンがあって、原作はそこを心の支えにしているのですが、舞台だとそのシーンはないんですよね。だからジャベールだけが苦しいまま終わってしまったような気がしてしまって、観ていた間も観終わってからもずっと辛いです。レミゼは観るたびに泣いて終わるのですが、まさかラストの涙が辛さゆえの涙になるなんて思ってませんでした。ジャベール……。
幕が開くことが当たり前ではないと実感した昨年を過ごしたからこそ、改めて生で観劇できることはとてもありがたいと思います。拍手に包まれ満たされる劇場が、やっぱり私は大好きです。
手持ちのチケットは今ないので次の観劇がいつになるかわからないのですが、体調に最大限気を配りつつ楽しみたいと思います。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。