やっぱり私は劇場に行きたい
社会人になる直前の春休み、劇場に3回行った。四季劇場春、自由劇場、東急シアターオーブ。春劇場は、改装後に行くのは初めてだった。私が人生で初めて行った、大好きな劇場。柿落とし公演の開幕前に劇団四季の公式ツイッターで公開された劇場の動画で、もう泣いた。早い。そして当日、ロビーに入っただけでこみ上げてくるものがあって、客席を見た瞬間に泣いてしまった。
自由劇場は、あの外観も、落ち着いた色合いのロビーの照明も全てが好きだ。私が「ジーザスクライストスーパースター」に出会った、かけがえのない劇場。あの箱の大きさで上演するがゆえの迫力と一体感。
そして東急シアターオーブ。最初に行ったのは、「パリのアメリカ人」の初演だった。駅から外に出ることなく行けるから助かる。2回目はこの前この「マリーアントワネット」だ。観劇前に少し余裕があったのでヒカリエに行ったのだが、あまりにも煌びやかで、王族の舞踏会に迷い込んだマルグリット・アルノーの気持ちになった。まさしく100万のキャンドル。
どうしてこんなことを書いているのかというと、今日の「おちょやん」を見たからだ。一貫して芝居の素晴らしさを描いてくれている印象のある「おちょやん」だが、芝居と同等かそれ以上に、劇場ないし劇空間の美しさを表現しているように感じる。
今日の回は圧巻だった。赤くない——一つ残らず客席に客が座っている劇場。割れんばかりの拍手、歓声、笑い声。ドラマの中の劇場を見て、頭をよぎったのは、自分が行った劇場のこと。客席はすべて埋まっていなくて、舞台上から見たら、きっと赤かったことだろう。時世的に仕方ないとは言え、埋まっていない客席を見るのが辛かった。ご贔屓様には、いつだって赤くない客席だけを見ていて欲しいのに。
もうない劇場もある。私が初めて「ミス・サイゴン」を観た青山劇場、初めて「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」を観たルテアトル銀座。もっともっと行きたかった。
関西圏の劇場は、京都劇場と宝塚大劇場にしか行ったことがない。家族旅行を兼ねて、京都劇場は「オペラ座の怪人」を観に行った。そして、奇跡的に「神々の土地/クラシカルビジュー」のチケットが取れて遠征した宝塚大劇場。両方とも忘れられない体験だ。
「レ・ミゼラブル」を観るために、初めて帝劇に行ったのも忘れられない。帝劇には、「レディ・ベス」や「1789」も観に行った。今年もレミゼのチケットが取れれば行く気でいる。というか行けないと困る。
そういえば、私はまだミュージカルの生配信を観ていない。家でリアルタイムで観られるのはありがたいし、それこそ宝塚はチケットが取りづらいから活用したいと思っているのだが、なかなか手が出せない。観たらきっと、劇場に行きたくなってしまうだろうから。
やっぱり私は劇場に行きたい。非日常で満たされるロビーが、虚構と現実が互いを溶かし合うあの板の上が、スポットライトが、そして客席が大好きだから。