灼熱カバディの好きなところをひたすら語らせてくれ
こんにちは、雪乃です。定期的に私が灼熱カバディで騒ぐ時間がやってまいりました。やること先にやってから書こう!と意気込んでいたのも束の間、やっぱ我慢できねえ!となって今キーボードを打っています。さっきから視界にチラチラ先行研究が入るけど気にしない。
アニメのキャスト情報(とキャント)も続々解禁されており、なんかもう楽しみで仕方ないです。ってことで、来年の4月までに一人でも多く沼に沈めるべく、今日も元気に布教活動!あとリアルで灼熱カバディ知ってそうな友人がいないので、寂しいから勝手に喋ってます。
前置きはこれくらいにして、本題に入ります。ネタバレは単行本1巻~15巻までです。ご注意ください。
ここが好き①硬質で美しい日本語
灼熱カバディのどこが好きってね、絵とかストーリーもあるんですけどやっぱり「言葉」なんですよ。台詞、モノローグ、ナレーション等々、とにかく名言が多い。そんなわけで、好きな台詞やナレーションを引用します。
いつも『最善』を尽くしてきた…! でも俺は何度も負けた…
だから俺は!! 俺の『最善』を超えていく!!(3巻)
練習試合の際の主人公・宵越のモノローグ。スポーツ漫画らしいアツさとまっすぐさ、そして宵越のスポーツに対する姿勢や人間性が表れていて好きです。
でもそれは成長するためには大事な感情で、口だけで終わらせなきゃ結果もついてくるハズなんだ。(5巻)
若菜くーーーーん!!!!……すみません、取り乱しました。強豪校・英峰高校で、小柄ながらスタメンとして活躍する若菜くんの台詞です。この台詞ね、耳が痛いんですよ本当に。ちなみに長さの関係でカットしてしまった部分があるのですが、「それ」とは悔しさのこと。誰よりも悔しがっていたからこそ努力できるし、その分成長できる。彼が言うからこそ生まれる説得力は、痛いほどのリアリティを持った、血の通った言葉として強く響きます。
気持ちに従って戻ってしまえば、きっと期待という重石を課せられる。でもあの日からずっと、なんの目標もなく空回るこの脚を、地面に着けてくれるのは……(7巻)
重いけどつらくはない。期待(これ)は、フラフラ悩む僕を支えてくれる…『碇』。見ててね。僕は、エースだから。(7巻)
埼玉紅葉高校のエース・佐倉学くんのモノローグです。佐倉くん、好きだ……。ある理由により一度は競技から離れた彼の背中を押したのは、仲間の力。今読み返して泣いてます。大会でも「佐倉のワンマン」と評されたことが作中で言及されているエース。そんな彼にとって、周りからの期待が、重石から碇に変わった瞬間を鮮やかに描き出す言葉選びのセンスがヤバイ。
後悔は成長に必要な感情だが、自分の中にあれば十分だ。(10巻)
主人公たちが最初に大会で当たった伯麗インターナショナルのカバディ部部長・外園の台詞です。伯麗戦はマジで泣くから皆見て。
ネタバレを言ってしまうと、勝つのは主人公サイドの能京高校です。外園にとっては高校生活最後の夏。敗北を喫した部員を前に、この台詞です。このシーンで泣かない人います????
タイトルで「硬質で美しい」と書いたのは、この台詞によるところが大きいんです。シンプルでまっすぐ。自分自身の感情以上に、表に出すのは「仲間のために何を言うべきか」の一点のみ。最後までキャプテンであることを貫いた象徴のような言葉です。外園結婚してくれ(真顔)。
語彙力なさ過ぎて表現しきれない!ツラア!
なんとなく『得意』だったり『勝てそう』だから好きになるんです。
失敗体験から『好き』は生まれない。逆に冷めていく事が多いでしょう。(11巻)
能京が2回戦で当たった大山律心高校の部長・大和の回想シーンにおける台詞です。スポーツに限らず色々な分野で刺さると思います。たとえ勝ち負けのないジャンルであったとしても、同じ分野で活動する人がいればまあ優劣はどうしたってついてしまうわけで。そんな中で、果して自分はそのジャンルを好きでい続けることができるのか。
「日本一になれる確率が高そう」という理由で野球からカバディに転向した大和だからこそ言える台詞です。
台詞はこの辺にしておきます。本当はもっと引用したい台詞があるのですが、長くなってしまうので。まだまだ素敵な台詞はたくさんあるので、ぜひ本編を読んでください。
ここが好き②描き込まれた多彩な表情
台詞の美しさは前述したとおりですが、ここに表情が加わることで、さらにヤベエシーンが数多く生み出されています。そんなわけで、ここは見て!と思ったシーンを挙げていきます。
①4巻80ページ
アマゾンのレビューやマンガワンのコメント欄で「騎馬ディ」と呼ばれている体育祭のエピソードです。カバディ部は、旧体育館の使用権を賭けて野球部と体育祭の騎馬戦で勝負することに。その際、野球部の部員に先輩を馬鹿にされたときの宵越の表情がすごい。「ウチの先輩を、笑うな。」という台詞と相まって、宵越の成長を感じられるシーンです。
②10巻88ページ
外園の表情です。前述したように、伯麗は能京の前に敗北を喫するのですが、外園の横顔がすごく良いんですよ。魂がそのまま出力されているんじゃないかという涙の描き方と、「…最後くらいいいよな…?」の合わせ技で、読み返すたびに泣くシーンです。
③11巻123ページ
大山律心戦で、エースである大和を守備で追い出すことに成功した能京の2年生・水澄。彼が、部長である王城さんに「君がいて良かった。」と言われたときの目の描き方ですよ。一度は自分自身に対して「いない方がマシなんじゃ」とすら思った彼がですよ。目元だけでここまで感情が伝わるシーンもそうそうないです。あと、次の目を押さえて上を向くシーン、表情が描かれてないのに表情が見えるシーンなので必見です。
④12巻190ページ
やっと出せた!!!高谷煉!!!!練習試合で能京と対戦した奏和高校のエース・高谷が埼玉紅葉の佐倉くんを前に、試合直前に見せた表情よ。佐倉くんが一度カバディから離れたことに、やめときゃいいのに突っ込んでいく、それが高谷煉という人間です。「テッペンの器じゃねーよ。」ってサラっと言っちゃうのはもうこの人だけ。ちなみに私はこのページの表情で高谷煉ファンクラブ会員になりました。
ここが好き③シャープでエモーショナルな演出
灼熱カバディね、私演出面が大好きなんですよ。漫画だからこそできる、時に現実離れした演出によって、むしろリアリティや臨場感が増す演出。
特徴的かつ繰り返し使われる演出の一つが、「黒目と白目の反転」。能京のエースである王城さんは攻撃時に白目と黒目が反転するシーンが多く登場します。数は少ないですが、能京のコーチである久納さんもありましたね。
この白目と黒目の反転、才能やそれに裏打ちされた天才の狂気を表す演出だけにとどまらないのがすごいところ。
また佐倉くんの話になるのですが、合宿で英峰との試合に負けた直後、片目だけ白黒反転するんですよ。「早く、闘いたい…」という台詞と共に。で、その次に同じことが起こるのは、大会の抽選で高谷に「気になるっしょ?二年のテッペン。」と言われたとき。その上で、とうとう両目とも反転するのが、奏和との試合が終了し、敗北が決まったその瞬間。今度は「覚えとけよ。高谷。」という台詞があります。王城さんの魔王演出を踏まえたうえで、佐倉くんの覚醒を段階を踏んで表現していくのが好きです。何より、覚醒の瞬間が「真のライバルを得た」タイミングっていうのがエモい。
さらに佐倉くんの話ですが、王城さんを師と慕い、攻撃を学んだ佐倉くんから、王城さんの影がふっと離れていくシーンも好きです。師匠の影から脱却する瞬間めちゃくちゃ好き。
あと、あえて表情を描かないという演出も好きです。14巻で宵越を尊敬する伴くんが「…そんな横顔だったんですね。」と横に立つ宵越を見るシーンがあるのですが、「そんな横顔」は実際には描かれません。この余白で魅せる演出、すごく刺さります。
ここが好き④成功ではない、ということ
練習試合に負けた宵越が見せた悔しさ。その負けにすら立ち会えなかった畦道。身に付けた新技を完全な形で成功させられず、止められた際の迷い。万年2位の屈辱を抱える英峰のエース・神畑が見せた怒り。師匠との決戦の機会を逃し、宵越に自分の思いを託す佐倉。灼熱カバディでは、あらゆる形で失敗や敗北が描かれます。タイトルで「成功ではない」と書いたのは、どのキャラクターも、失敗や敗北から学ぶ誠実さを持っているから。
その一方で、外園の心象風景や本筋には関わらない高校生たちの後ろ姿を通して、「終わる」という現実も描く。まだ後がある1・2年生と、後がない3年生。終わりを通して表現される青春の重みが大好きです。
ここが好き⑤「積んでいる」ことへの敬意
負けるのは他の奴がもっと『積んで』きてるって事だ。(3巻)
これも好きな台詞なんですが、こちらで取り上げます。練習試合で惜敗した能京。スポーツ未経験からカバディを始めた同級生の畦道に対して宵越がかけた言葉です。
ここね、単純に「努力してるから」って書かないのが好きなんですよ。あくまで「積む」という表現。灼熱カバディでは、「いかに積んできたか」が重視される傾向にあると感じます。作中で突出した才能の描写がないキャラクターであっても、それまで積み上げてきたものが点に繋がる。逆に、才能やポテンシャルに恵まれていたとしても、「積み方」が甘ければ失敗する。積んでいないキャラクターに対して厳しくはあるのですが、安易な勝ち、時に綺麗すぎてしまうような勝利がないからこそ、安定感と真摯さに溢れた作劇になっています。
この「積んでいる」という表現、どのようなものなのかは合宿編の宵越の台詞を引用しようかな。
当然、才能によって伸び方は違うが…差ができる1番の理由は努力の質。
目指す方向が自分にとって正しいかどうかが大事なんだ。ただ汗流すなら誰でもできる。(6巻)
ちなみにこの合宿編の後にある守備特訓編で宵越は一度監督によって折られ、立ち止まるのですが、あのくだりこそまさしく「目指す方向」の正しさが問われていたと思います。
宵越の弱点は守備。攻撃だけでなく、守備も伸ばさなくてはならない。それは宵越も理解していました。しかし宵越は、守備に関して本人の言葉を借りれば「積んで」いない状態。それどころか誇りに思っていた攻撃ですら、監督によって倒されてしまう。この作品の持つ厳しさがよく表されています。しんどい。
私は宵越にゴリゴリに感情移入して読んでるので、守備特訓編は読むのがつらいんですよ。早く皆私と同じつらさとしんどさを体験してほしい。
おわりに
本当はもっと書きたいことが色々あるのですが、そろそろやめておきます。マジでこのまま書き続けたら明日になってしまう。あと打ち間違えが増えてきたのでそろそろ潮時ですね。もしかしたら後で書き足すかもしれません。
近々、「王城正人というカバディ選手に人生を狂わされたオタクの話パート2」をやる予定なのでよろしくお願いいたします。ちなみに今回の記事では、ひっそり「王城さん以外の人の話題にする」という縛りを設けていました。王城さんのことに関してはあとでじっくりやるよ。
本当は見開きの魅力とか、天才と凡才とかのテーマも掘り下げたかったんですけどね、後でやります。
長くなりましたが、本日もお付き合いいただきありがとうございました。