両親にカバディのプレゼンをした話
こんにちは、雪乃です。今日はカバディの話をします。
カバディです。あの、競技名の知名度は高いけどルールはそれほど知られていないマイナースポーツ、カバディ。
私は、日本の競技カバディのファン。といっても初めて生観戦をしたのが昨年の11月なのでファン歴とかは全然浅いんですけど、ファンをとりあえず名乗ってます。好きなので。
カバディにハマったきっかけは、漫画「灼熱カバディ」。カバディに全力で取り組む高校生たちの青春を描いた、熱血王道スポーツ漫画です。「灼熱カバディ」を読み始めてリアルな競技カバディの世界にも興味を持ち、配信という形で観戦を始めたら完全にカバディの虜に。その後生観戦に向かい、あのリアルタイムの熱狂の渦の中で拍手をするまで時間はかかりませんでした。
そしてありえんくらいの勢いでカバディにのめり込んだ私に、両親が真っ先に聞いてきたのが、
「ところで、カバディって何?」
でした。
私もなんとな~く「鬼ごっこみたいな格闘技」や「ドッジボールっぽい競技」みたいなぼんやりした説明をしていたのですが、ハマればハマるほどに「これは、ちゃんと説明した方が良いのでは?」と思い始めます。なぜなら、あまりにも「カバディって何?」と訊かれすぎるので。いや初めに説明しておかなかった私も私だけど。
カバディ、名前だけは知っている人が多いかと思いきや、名前すら間違えられるんですよ。濁点が一個多い、なんてのもよくあるし、一番ヤバかったのは「カルディ?」って聞き返されたときです。
なんかね、競技名すら間違われたときに、すっっっっっごく悔しかったんです。こんなに面白いのに!って。試合会場に行けば360度どこからでもカバディ用語が聞こえてきて本当に天国みたいなのに、体育館を一歩出ると、とたんに熱が伝播していかないような気がして。
これまでにもnoteで試合の感想を書かせていただいているのですが、やっぱりまだまだスポーツを書くことに慣れていない分、精進したいなと思うことも多いです。
もっとこの熱を言葉にしたいし、形にしたいし、それを伝えていきたい。だからまずその第一歩として、家族から始めてみよう。そう思って、家庭内プレゼン大会(?)を開催する運びとなりました。というか運んだ。パソコンを、実家のリビングに。1月1日に。23歳の誕生日に。
というわけで、私の誕生日に開催したプレゼンの様子をお送りします。
登場人物
私:今回プレゼンをする人。スポーツに関してはまったく興味がなかったが、カバディにハマった。両親の年齢をよく間違える。
母:プレゼンされる人。スポーツは冬季オリンピックのスケートだけテレビで観ている。父の年齢をよく間違える。
父:プレゼンされる人。スポーツは野球やサッカーを中心にテレビでそれなりに見ている。今年の娘の誕生日に娘の年齢を間違えた。
母:雪乃がなんでそんなにハマったのか、気になるよね。
私:それを今から解説します。
まずは、カバディの概要から解説を始めました。
母:走る格闘技って言われてるんだ。
私:うん。
母:じゃあ、けっこう激しいんだ。
私:イメージは、格闘技要素のある鬼ごっこ。
母:へ~鬼ごっこ。
私:鬼を捕まえてもいいの、逃げる人が。
母:カバディ、カバディって言う?
私:言うよ。
カバディ、カバディと言うスポーツ。カバディに対して抱かれているイメージといえばやはりこれでしょう。カバディを語る上では外せない要素なので、こちらもプレゼン資料に入れてあります。
母:どっちがカバディって言うの?
私:攻撃。タッチする方が攻撃で、鬼を捕まえる方が守備。
母:攻撃しながら鬼を捕まえるの?
私:いや、攻撃が鬼で、逃げる人が鬼を捕まえてもいい鬼ごっこ。鬼はタッチして帰って来るだけ。
母:けっこう複雑だね。
父:なんでカバディって言うの?
私:「ひたすら唱え続けることで’無’になることが大切」……って公式(※)に書いてある。
母:じゃ、言わないとダメなんだ。
(※:日本カバディ協会発行のリーフレットに書いてありました。なお「カバディ」という単語に特に意味はないらしいです。)
やっぱり実際のカバディの映像を見てもらうのが一番だろうということで、YouTubeでインドのプロカバディのハイライトを流しました。
母:インドにプロリーグあるの?
私:あるよ。日本から行ってる選手もいる。
父:レスリングみたいな感じ?
母:格闘技だからね。
そして映像を見ながらルールの説明。
私:真ん中の線を越えて帰ってくると得点。
母:ドッジボールみたいっていうけど、ボールは投げてないの?
私:ドッジボールのボールを人間がやってるって感じかな。タッチした分だ
け得点が入るから。
母:じゃあ、球技じゃないんだ。ボールはないのね。
ここで我が母、まさかのカバディを球技だと思っていたことが発覚。たぶん私が「ドッジボールみたいな要素がある」と説明していたからだと思うのですが、けっこう衝撃でした。念のため書きますが、カバディは素手でのみ行われるスポーツです。
私:これがコート。
このコート、何かの記事で使うんじゃないかと思って事前にExcelで作り置きしておいたものです。コートの作り置きって何?
そして一旦まとめ。
私:これを覚えておくと、試合は大体わかるよ。
ここでプレゼンは、「カバディのここが好き」へと突入。
母:アメトークみたい。何かに似てるなって思ったら、アメトークだ。
カバディ芸人?
父:(ここでカバディ芸人にツボる)
言われて初めて気が付いたんですけど、確かに流れがアメトークっぽいですね。あとカバディ芸人の称号を母から賜ってウケました。
ここからは、私の考えるカバディの面白さをご紹介。
私:カバディはとにかく見ていて分かりやすい。
私:あとローナ。全員触られたら全員コートから出るじゃん。そのときは、
相手に2点入れて戻れる。
母:そうなんだ。
私:ローナで逆転とか全然あるから。
私:スーパータックルっていって、守備が3人以下のときに鬼を倒すと2点。
私:鬼は誰も触らないで帰れる。だけどそれが2回続くと3回目では絶対触って帰らないといけない。
母:逃げちゃダメだってことだよね。逃げてばっかりだと相手の得点になっちゃう。
マイマザー、理解が速くて助かる。
私:ボーナスライン。奥に1本線があるんだけど、あそこを越えると守備が6人以上のときに1点入る。
母:そこまで踏み込んだってことか。だいぶ分かってきた。
なお、こちらがコート。この、エンドライン寄りに引かれた線がボーナスラインです。
母:個人戦もあるんだ。
私:1対1になるときもあるから。
カバディ、単純に「コート内の人数が減って1対1になる」という状況が生まれるのはもちろんのこと、割と守備が何人でも「個の守備」が見られるのが好きなんですよね。的確な角度と確かなスピードでアンクルキャッチ(守備が攻撃手の足首をつかむこと)が決まった瞬間はグッときますし、あそこからチーム全体による連携の守備に繋がっていくと思うと感慨深いものが……(マジで長くなるので以下省略)。
私:人数が多いときは連携がすごいよ。人数が少ないときは、「筋肉」をすごい感じられる。
母:だいぶ感情移入してる。本当好きだね。さすがカバディ大好き芸人。
父:(カバディ大好き芸人にツボっている)
当方、カバディ芸人からカバディ大好き芸人に昇格した模様です。あと父はさっきからずっとツボってる。
私:カバディは7人対1人とか普通にあるから。
母:いろんな場面でちゃんと見応えが感じられるってことね。
マイマザー、理解が速くて助かります。さすが私が小学生のときに「事前に何も言わずいきなり劇場に連れていく」という力技の布教で娘を演劇沼に引きずり込んだガチオタなだけのことはある。
父:1回の試合はどれくらいなの?
私:男子は20分ハーフ。女子は15分ハーフ。
母:けっこう短時間なんだ。短期決戦なのね。
私:ひと試合見ても1時間くらい。
母:「帰る」っていうのがあるのね。
私:指1本でも帰れば得点になる。
母:審判大変だね。
私:審判すごいいるよ。試合に出てないチームが招集されるから。
母:見た見ないが命取り。
私:パワーがあると守備を引き摺って帰れるし、リーチのある選手は倒れ込んで足先とかだけで帰ったりするし。
母:掴まれてでも帰るんだ。ずるずるしながら。
私:あと距離が近い。
母:まあそうだよね。
私:前で観られるから。
母:前で観てんの?
私:観てるよ。
母:個人対個人になっても楽しいんだもんね。逆転もあるからドラマチック。
母:ドラマ。さっきお母さんが言ったやつだ。
ドラマ。そうそれです。すべての瞬間がドラマチックにしかなり得ないスポーツ、それがカバディです。
私:これで終わりです。
母:ありがとう。わかりやすかった。
これにて私のプレゼンは終了。母には伝わったっぽいです。父には……どうだろ。「どういうスポーツか」までは伝わったと思うのですが……。私の伝え方も改善の余地があるなあ……と思いました。
今回のプレゼンで初手の例えとして「鬼ごっこ」を持ち出した結果、ずっとレイダーのことを「鬼」と言ってました。カバディの話をするのにレイダーって単語がここまで出てこないことってあるんですね。あと守備は「鬼を捕まえる方」とか言ってたので、アンティという言葉もまったく使わず。カバディの試合に観に行くと常にレイドとアンティという2単語に囲まれるので新鮮でした。
カバディプレゼン大会、楽しかったです。資料を作ると、改めてカバディのどんなところが好きか整理することもできましたし。今後は両親から「カバディ大好き芸人」の称号を賜りましたゆえ、「カバディ大好き芸人」として生きていこうと思います(?)
今回プレゼン資料を作るにあたって意識したのは、「カバディにしかないものは何か?」ということ。守備の人数の増減や「帰る」という行為の持つ意味など、カバディでしか味わえないであろうことを考えながら作った……つもりです。
そして一番言いたかったのが、プレゼン資料の最後の1ページに書いた言葉。
「カバディは、ドラマしか生まないスポーツだ。」
ドラマチックなんですよ、カバディって。10点差が目の前で覆ることや、人間の「意地」を可視化するルール。レイダーとアンティの接触が発生した瞬間の、あの一瞬の間に熱が爆ぜる感覚、全身で浴びる振動。靴とマットが擦れる音、キャント、アンティがレイダーにプレッシャーを与えるときの声、レイドやアンティが決まった瞬間や、試合が終わった時に鳴り響く拍手――あの空間を構成するすべての音が、光景が好きなんです。体育館を満たす橙色のあたたかい光に、選手を照らす光と同じものを浴びることのできるあの時間は、何者にも代え難い。だから、今後もずっとずっと、この世界を見続けたい。この競技と、私はひなたの道を歩いていきたい。だからこそ私は、ずっと書き続けたいと思います。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。