141年の歴史に幕を閉じた小学校② 最後の卒業式、閉校式、そして新しい学校 へ -みまさかぞく#037
2016(平成28)年3月、岡山県美作市立梶並小学校は141年の歴史に幕を閉じ、閉校しました。閉校の年の児童数は7名。私はこの学校に閉校までの6年間勤務しました。
今回は、“梶並小の集大成と新たな一歩”のお話です。主人公は子どもたち(かじの子7)と、時々藤小雪庵。
いくつか音楽動画も入れているので、童心に返った感じで読んで頂けたら幸いです。
1.最後の1年間
校内では、①閉校に向けて、②次年度に向けて、やることが山積していました。
まずは学習について、複式(二学年同じ教室で学ぶこと)から、元の状態に戻す「複式解消」をしていかなくてはなりません。加えて、年間行事+思い出づくり。
梶並小学校の子どもたちは、みんな一輪車に乗る練習をします。一輪車リレーとパフォーマンスは運動会のメインイベントです。
夏休みには、子どもたちの夢「学校に泊まりたい」が実現した“思い出キャンプ”を行いました。
↑このメダカは、近くの川で獲りました。
みんなでカレーを作ったり、スイカ割り、きもだめしをしたり。お風呂は夜のプール、そして教室で就寝。
秋の学習発表会
ダンス曲は、♫「let's go いいことあるさ」♫。先生たちの練習時間は放課後。校長先生も事務の先生も一緒に練習しました。
みんな、一緒に踊れて楽しかったよ!
秋が過ぎると、校内の片付けも本格的になりました。
時はあっという間に過ぎていき、3月がやってきました。
2.最後の卒業証書授与式
卒業式など儀式での、私の役割はピアノ。私にはこだわりがありました。CDに頼らず、入退場も国歌も全て、ピアノ伴奏でやる。それは「私からの愛」で、私ができることのひとつ。
実を言うと、私はピアノが得意ではありません。演奏中に間違えて、頭が真っ白になる経験もしているから、毎年、儀式の前は口内炎で散々な状態になっていました。リポビタンファインとチョコラBBに頼る日々。でも、やる!
特に今回は最後の卒業式。来賓の方も多く、マスコミも来られる。失敗できない…。選曲は冬休みに終え、「週末は3時間練習する」と決めてやっていました。
体育館はとても寒く、身体も手も硬くなります。先生方は「毎日、あれだけ練習したんじゃけん大丈夫!私らも大きな声で歌うけん」と励ましてくれました。
私の緊張は子どもたちにも伝わり「先生、緊張しとる?がんばれ!」と。
ありがとうーー!一緒に頑張ろうな!
↓最後の卒業式で弾いたピアノ曲を、梶並小の音楽室の映像でお届けします。良かったら聴いてみてください。撮影は2016年2月下旬。(各2分半ほどです)
♫卒業生入場曲♫「さくら」♫
♫卒業式、在校生の歌♫「大空がむかえる朝」♫
→卒業式にぴったりでとっても素敵な曲です。YouTubeで見つけた♫歌の動画♫もぜひ。
♫卒業生退場曲「拝啓 15の君へ」♫
7人だけど、体育館いっぱいに響く歌声。子どもたちの一生懸命頑張る姿は、本当に感動します。この瞬間に出会えるから、教員って素敵な仕事だなといつも思います。
3.閉校記念式典
卒業式の2日後、3月20日(日)に閉校式がありました。式典には梶並小学校、梶並幼稚園の卒業生、勤務された先生方、地域の方々で体育館がいっぱいになりました。
閉校式でも私の役割はピアノでした。まずクリアしたいのは国歌「君が代」です。これだけは「ズッコケた」は通用しない。「テンポを守って、絶対に失敗しない!」と目を閉じてもできるくらい練習しました。
↓当日の朝。上映するスライド『明日への扉』を確認する先生。
『明日への扉』は、子どもたちの朗読や歌とともに、思い出の写真が流れるもので、会場のみなさんの涙を誘いました。
↓スライドの一部
このスライド作成中、1人の先生が「閉校式で、“365歩のマーチ”を歌おうや。会場みんなで歌えるし元気出るし」と提案されました。
子どもたちに話すと「自分たちでダンスも考えたい!」と。音楽の時間、みんなで歌いながらダンスを考えました。
このピアノ伴奏も、私にとっては難関でした。指の動きが早いので、動かなくなったら終わり…。「みんな、私のピアノが止まっても歌い続けてね」と何度言いそうになったか…。
↓↓音楽室で練習時に撮りました。良かったらお聴きください。
♫閉校式♫「365 歩のマーチ」♫
閉校式は感動の中で終わりました。安堵と同時に私は、この日までに会議を重ね、計画的に準備をしてくださった多くの方々、そして時間を空けて来場してくださった方々に感謝しなければならないと思いました。
4.記念碑除幕式
閉校式が終わり体育館を出ると、運動場は車でいっぱい、驚くほど大勢の方がおられて、私もようやく実感が湧いて来ました。
除幕式の時、梶並小から転勤された先生方が声をかけてくださいました。「子どもたちの歌、良かったよー。ピアノご苦労様」。「ありがとうございます」。その時、緊張が緩んだのか初めて涙があふれました。
その先生は、「子どもたちの立派な姿に感動したよ。閉校は寂しいけどこれも時代の流れかな」と言われていました。
そう、確かに寂しい…込み上げてくる想いはある。でも、この時、7人の子どもたちと、私たち教員は、
「次のこと」を考えていたような気がします。
卒業生2人は中学生になることを、在校生5人は統合先の新しい小学校のことを、そして私たちは次の赴任先のことを、退職される先生は第2の人生のことを。
私にとって重大なことも、待ち構えていました。それは、次年度、子どもたちが登校する小学校に一緒に行く教員が、“私ひとり”だということ。
全校7名から、100名以上の小学校へ。
どうか無事スタートが切れますように!
5.明日への扉
文集の最後に、「先生からみんなへ」のメッセージを書きました。
長文になってしまいました。
読んでいただきありがとうございます。
次回は、「③地域から学校がなくなることについて」をお送りします。
久しぶりに梶並を訪れた私が、廃校になった校舎や運動場、プールを見て感じたことは…。
お楽しみに。