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玉手箱が開いたような日 その1
突然過ぎだよ、アフザル
先週の金曜日、メッセンジャーがピコンと鳴った。何の気なしに開けたら、「明後日、日本に着く。奥さんと一緒に行く。11月24日から27日に大阪に滞在する。その後東京に12月1日まで滞在する。会えれば会いたい」という英語のメッセージ。え?…名前を確認するとアフザルという懐かしい名前が!…え?え!え?えー?!あさって〜!?
およそ30年前、学生だった私は仲間とパキスタン北部の杏の花咲く美しい村に度々お邪魔していた。その村はヒマラヤ西部の中にあり、ヤギも歩くカラコルムハイウェイから氷河も越える三泊四日のトレッキングをしてやっとたどり着く村だった。その村は、電気や水道はもちろんなく、農業と牧畜で自給自足の生活を送る少数民族の村である。岩だらけの山をいくつも越え、氷河がとけて流れている濁流の川を歩いて渡りやっとたどり着く、瓦礫の山の中に突如としてその緑の村は現れる。
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アフザルというのは、その村に暮らす当時10歳前後で、クリクリした大きな目から大粒の涙をポロポロ出して泣く、泣き虫で甘えん坊な男の子だった。
その子が日本にやってくるというのだ!
明後日の火曜日は平日で私は出勤。アフザルには会いたいけれど、ムリだわ〜と思い「急すぎて会えないよ!」と返事をした。「それは残念ですが、神様の思し召しです。また会いましょう」とイスラムチックな返信が💧
けれど…。
30年前、何度もその村を訪れ、村の人に大変お世話になったのに…とか、村の話も聞きたいな…とか、奥さんはどんな人だろう?村の人かな?…とか。いろいろ懐かしく思い出すうちにどうしてもアフザルに会いたくなり…。
火曜日、拝み倒して仕事を休みました😅
彼らが泊まる大阪市内のホテルのロビーに10時に待ち合わせすることになった。ホテルの駐車場に車を止めてロビーに向かうと…。すぐにアフザルとわかって「アフザルーッ!」と叫ぶと、「ユキサーンッ!」お互い猛ダッシュして激突し、力いっぱいハグした。「突然すぎだよ〜!」「会えてうれしいです!」「ゲンキだった?」「コンニャロコンニャロ!急すぎるんだよお〜!」
改めて彼の出で立ちを見ると、30年前の可愛い男の子ではなかった。でも、髭を伸ばしたがっしりした男性ではあったけれど、30年前と同じクリクリした大きな目をしていた。
そして奥さんを紹介してくれた。彼女はビビさんといい、彼と同じ村の出身とのこと。目が美しく、クレバーな感じのする可愛らしい女性だ。
挨拶もそこそこに2人を乗せて、奈良へ向かった。
私が村を離れてから30年、彼とは全く連絡を取っていなかったから、彼が今どこでどんな生活をしているのか全く知らなかった。驚くことに彼らはカナダに住んでいた。アフザルは港で働いており、ビビさんは看護師として働いているという。ビビさんは、カナダに行った当初は英語も話せず学校に通い、その後勉強して試験を受けて看護師になったという。ものすごい努力家だ。
道中、昔話に花が咲いた。懐かしい村の友達の名前、それぞれの近況、そして今の村の様子。話は尽きない。
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しかし、ハンドルを握っていたのは私だけれど、久しぶりの英語だし、30年前のことを思い出すのが大変だったり、村の友達の近況に驚いたり笑ったり。運転するのが、大変だった😅
つづく。