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2023年Q1のアメリカにおけるソフトウェアエンジニアの採用市場動向

2022年Q4 は多くの方がご存知の通り、大量のレイオフが発生する血みどろの労働市場となりました。また、新年に入り事態は落ち着いたかと思いきや、Google や Amazon でさらにレイオフが発表されるなど、状況が良くなる兆しはありません。これまでに明らかになっている大規模レイオフ上位10社をまとめると、

  1. Amazon: 累計 18,000 人

  2. Google: 12,000 人

  3. Meta: 11,000 人

  4. Microsoft: 10,000 人

  5. Salesforce: 8,000 人

  6. Cisco: 4,100 人

  7. Philips: 4,000 人

  8. IBM: 3,900 人

  9. Twitter: 3,700 人(それ以上との情報もあり)

  10. SAP: 3,000 人

となり、これだけでも合計7万7千人以上がレイオフされています。layoff.fyi に報告されたものだけでも、2022年初来からレイオフされた従業員数は約22万8千人以上にのぼり、これは中央区、港区、千代田区の全就業者(約20万8千人)全員が仕事を失う以上のインパクトがあります。また、Q1 はまだ始まったばかりであるにも関わらず、レイオフ数も、レイオフされた従業員数も、既に前期を上回るペースで伸びています。

2020年初来からの四半期毎のレイオフ数とレイオフされた従業員数(出典: layoffs.fyi

FRED で参照できるソフトウェア関連に限定した求人数も、減少傾向にあります。FRED のデータは少し遅れて入ってくるので、執筆時点では11月25日が最新の日付になっており、2020年2月時点との比較で 44.4% 多い求人件数となっています。この数値は、今後さらに低くなっていると予想します。

Indeed 上のソフトウェア関連に限定した求人件数の2020年2月時点との比較(%、出典: FRED

しかし、ここまでレイオフが相次いでいるにもかかわらず、未だ2020年2月時点より求人数が多いというのはとても興味深いです。2020年2月時点で「景気は強い」と言われていたので、今はそれより強いと考えるのは、少々無理があるように感じます。これはソフトウェア関連の仕事だけに留まらず、むしろ全業種の統計では若干上昇傾向であるようにさえ見えます。

(似ているグラフなので、注意してみて下さい。)

Indeed 求人件数の2020年2月時点での求人件数との比較(%、出典: FRED

ソフトウェア関連が弱いということはこの二つのグラフの比較からも分かることですが、アメリカ全体の全業種ではまだ比較的強いということになります。FRED はアメリカ中央銀行の Federal Reserve が運営しており、中央銀行は営利目的の団体ではないため、わざわざ強いデータを出したいインセンティブはそれほどありません。また、ソフトウェア関連の求人が綺麗に右肩下がりであることを考えると、データ元の Indeed 自体が成長している可能性も考えにくいでしょう(し、そこはさすがに正規化しているでしょう)。しかし、他にも求人市場を判断するためのデータソースがあった方が良さそうです。Q2 の記事を書くときまでには、アメリカ全土の雇用統計や ADP のデータも加えて検討する予定です。

次に、スタートアップの資金調達市場の状況を見ていきます。

四半期毎のディール件数とバリューの関係(出典: PitchBook)

2022年Q3 の時点で既に大きく減少していましたが、Q4 はさらに減少となりました。ここまで下がったのは2019年Q4以来であり、スタートアップがこの状況を乗り切れるかどうかは、まさに今が踏ん張りどころといった感じでしょうか。しかし、Fed はまだ 0.25-0.50% の利上げを残していますので、金利の上限が見えつつあるものの、ここからさらに状況が悪くなってもおかしくありません。

じゃあ世の中のお金は中央銀行が回収してしまって全然無いのかというと、そんなことはなく、ベンチャーキャピタルは虎視眈々と投資資金を集めています。

ベンチャーキャピタルのファンドアクティビティ(出典: PitchBook)

つまり、今はかなり慎重に投資先を見定めている状況だけど、景気が上向きになりそうな傾向が観測でき、本当に力強く成長できそうなスタートアップが現れれば、溜め込まれたキャッシュがスタートアップ市場に投資される可能性は十分にあります。

今この状況で心に留めていくことは、2つあります。

Stripe の IPO

2021年はたくさんの IPO で活気のある年でしたが、2022年は IPO による資金調達がなんと 94% も減少しました。額にして $155.8 billion から $8.6 billion まで減少しました。さすがに一度ここまで冷え込むと、すぐに2021年のピークを超えてくるというのはなかなか想像できません。そういったIPOの壁は、ある意味業界全体で努力して破っていかないといけないところだと思いますが、その筆頭となるは Stripe ではないかと思います。先日も、1年以内に IPO を目指すという報道がありました。ここで Stripe がどのような結果を出せるかというのが(もちろん、Stripe だけでは無いですが)、この先数年のスタートアップ市場を活気づいたものにするかどうかの指標となる可能性もあります。

その他、大型 IPO として報道されている会社には、RedditInstacartDiscordSpaceX(あるいは Starlink のスピンオフ)があります。これらの会社も Stripe 同様、継続的に見ていこうと思っています。

H1-B ビザの応募

H1-B ビザは主に大学を卒業した学士を持つ人材に対して発行されるビザです。発行数は毎年 6,5000 と上限が決まっており、上限を超えた際は抽選となります。リーマンショックから力強く景気が回復した結果、2013年から毎年抽選が必要な状況となっていましたが、今年はレイオフの影響から応募減が予想されます。そのため、抽選無しで応募できるようになる可能性があり、まさに10年に一度あるかないかというチャンスの年であるといえます。仮に今年の後半、景気の見通しが良くなり求人件数が戻ってきた場合、2024年の応募も抽選となってしまう可能性は大いにあります。今年はチャンスです。どうしてもアメリカに行きたい人は、2月中に死に物狂いで仕事探しをしましょう。


不況下においても、投資家のように働くスタートアップを選ぶべきという原則に変わりはありません。しかし、楽観的に投資できない状況下では、ベンチャーキャピタル同様により厳しい視点でスタートアップを評価する必要があります。この Note では、

  1. 投資家のようにスタートアップを目利きし、

  2. 日本にいながらリモートで仕事を得て外貨を稼ぎ、

  3. 日本人にもっと儲けてもらう

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