「学校が楽しい!」と言う息子と、参観日で感じた先生の大変さ
息子の小学校生活が不安だった。とっても不安だった。
今の小学校は教員不足で大変だというニュースをよく見るし、先生たちは激務で疲労困憊。席に座っていられない子どもは椅子に縛りつけられ、水すらも好きな時間に飲めない。子どもも大人も暗い顔をしている、まるで牢獄のような場所……
つい数カ月前まで、私の頭の中の「小学校」は、こんなイメージだった。日ごろから自分用にカスタマイズされたニュースサイトを見ていたら、恐ろしいことにそういう思考に陥ってしまっていたのだ。しまいには、なぜそんな場所に大事な息子を送り込まなければいけないのか? 小学校へ行かせない方法はないの?ホームスクーリングという方法はどうか?……と真剣に考えていた。
*
が、入学式から2週間が経ち、私の心配をよそに、息子は非常に楽しそうに学校へ通っている。担任の先生の話題を振っただけで息子は思い出し笑いするし、「学校楽しい!!」と、翌日の教科書の準備を自分からする。1歳半から保育園に通い、その後卒園するまでの4年半、ただの一度も「園に行きたい!楽しみ!」と言ったことがない息子が、「明日楽しみ!」と言うのだ。拍子抜けというか感動というか。表情も、園時代よりむしろ活き活きとしている。
私の過剰なネガティブ思考が少しくつがえされたのは、入学前の学校説明会だった。
2月の説明会の日、一年生の教室がある2階に足を踏み入れると、ろうかとの仕切りがない開放的な教室と、子どもたちののびのびとした絵や工作品が目に入った。こども園と違って怖い先生も多いんだろうな……と思っていたが、園と同じように、あたたかい眼差しで子どもたちを見つめる先生が多い気がした。
その後、3月、4月頭と学校へ足を運んだが、「意外といいところなのかも?」というイメージは変わらず、むしろ綺麗で洗練された図書室や、楽しそうに校内を駆けまわる上級生たちの様子を見て、私の中の安堵感は増していった。
そして、4月6日の入学式の日。
式中に、担任の先生の発表があった。校長先生に名前を呼ばれ、「はい!」と元気よく息子たちの前に立つ、若い男の先生。ニィッと満面の笑みを浮かべて、おどけた表情で子どもたちを笑わそうとしている。緊張の面持ちで椅子に座っていた子どもたちも、何人か笑っていた。私はまだちょっと警戒心を抱きつつ、「もしかして……優しい先生?」と思った。緊張がほぐれた瞬間だった。
*
担任の先生は、入学式での印象どおり、愛情を持って子どもたちに接してくれる先生だった。「園時代とはうって変わって、小学校は放置される」という噂もネット上でよく目にしたけれど、これまでに2度放課後に電話をくれ、息子の様子をていねいに教えてくれた。
ただ、そんな素敵な先生だからこそ、心配になってしまった点もある。
というのも先週、参観日があった。先生は、まだ長時間座っていることに慣れない一年生たちを、クイズや手遊びを交えて上手に惹きつけていた。それでも、授業も後半になると、席を立ったり、先生の指示と違うことをしたり、誰かがふざけたのが伝染して、先生の話そっちのけで子どもたちが爆笑したりするシーンがあった。私から見れば一年生らしくて微笑ましい。
ただ、もしこれが、先生が上(校長先生など)から「きちんと授業を進めなさい」などとプレッシャーをかけられているとしたら。仮に私が担任なら……怒鳴りつけてしまうかもと正直思った。
先生が、学校から
「子どもたちは体力が有り余っています。ずっと座らせる必要はありません。自由にのびのびと授業を受けさせてあげてください!」
と言ってもらえているなら全然いいのだ。でも、
「教科書のこのページを今日終わらせなければいけない」
「全員◯◯できるようにさせなければならない」
というタスクを抱えているのだとしたら、真面目な先生ほど、上記の子どもたちの行動を......悲しくて考えたくもないけど、邪魔に感じるだろう。
以前ニュースで見た、椅子に子どもを縛りつける教師の心境が、このとき、(本当に信じがたいし許せないけれど)少しわかってしまったのだ。
*
しかも、小学校の先生は、朝8時半から14〜15時まで、たったひとりで30人弱の子どもたちを見ている。
こども園時代は、担任の先生がクラスにいるのは給食の時間までで、以降は別の保育士さんたちが一緒に遊んでくれていた。さらに担任の先生のほかにもう一人、補助の先生が必ずいた。集団の輪から外れて行動する子ももちろんいるし、「担任ひとりっきりで対応できるはずがない」と考えられているからだと思う(園の先生が大変じゃないと言っているのではなく)。
それがどうして、一歳しか違わない小学生になると、いきなり「担任の先生がひとりでまとめあげる」のが当たり前になってしまうのだろうか。アルバイトでもパートでも、「担任の先生のサポート」という立ち位置でもう一人つけることはできないんだろうか……?
以前何かの記事で、「近年、精神科で発達障害と診断される子どもが急増している」と読んだ。その時は単に、「発達障害」という言葉が浸透したことで、気になって受診する保護者が増えたからかな? と思っていた。
でも、授業を実際に見て、ごく普通の子どもらしい行動だとしても、大人にとっては都合が悪いから、学校が保護者に電話するなどして、心配した保護者が受診して診断される……という感じではないのかな? と想像した。間違っているかもしれない、あくまでも私が感じたことである。
*
息子の通う小学校は、「わが校の学力は市内の平均より低い!(笑顔)」と学校説明のDVDで公言しているくらいだから、先生たちへの重圧はそこまで高くないのかもしれない。でもやっぱり、私だったらあの状況を一日5時間×週5日……発狂してるな、と思ってしまう。
息子の担任の先生は何も言わずに進めていたけれど、内心では大変だと思っているんじゃないのかな。いつか爆発してしまったらどうしよう。大事な息子を預ける先生、先生自身も、心も体もずっと健康でいてほしい。