
DRXから考えるアビス【防衛Aサイト編】
DRXのアビス戦績について
個人的にDRXはアビスが一番上手いと感じたので、実際データとしてはどうなのかを調べるところから始めてみた。
TheSpikeggによると、VCT-Champions2024における勝率は100%(2-0)。数字だけ見ると凄まじいが、母数が少なすぎる。全大会に範囲を広げて見てみると、勝率は75%(3-1)。やはりまだ母数が足りない。
そこで視点を変えて、攻撃と防衛それぞれのラウンド取得率に着目してみることにした。またもやTheSpikeggによると、VCT-Champions2024における攻撃取得率は57.9%(11/19)。防衛は62.5%(15/24)だった。全大会で見ても攻撃が53.1%(17/32)、防衛時が60.4%(29/48)と、防衛を得意としているのが読み取れる。
ちなみに、全チーム全イベントで勝率を見ると(104戦)、攻撃が53.34%、防衛が46.66%。一般的には攻めマップと言われているアビスだが、プロシーンでもその傾向があると言っていい。
では、どうしてDRXは高い防衛取得率を誇っているのか。その謎を突き止めるべく、我々はアビスの奥地へと向かった。
ラウンドを見る
VCT-Champions2024でDRXがアビスをピックしたのは、対KRUと対FNCの二戦となっている。二チームは当然全く異なる構成を使っているのだが、その中から共通する動き、考え方を見ていきたい。
対KRU
KRUは、オーメン・サイファー・ハーバー・KAY/O・ソーヴァの、いわゆるノーデュエ構成を採用している。この構築からは、スモーク2枚とイニシ2枚とでエリアコントロール力を強める狙いが見える。Aサイトはタワーと挟むことができればプラントは比較的し易い。確かにデュエリストでのエントリーは重要ではないように見える。
その上で、DRX vs KRUの4ラウンド目を見ていく。

一部省略しているが、Aセット時の両チームの配置である。
換気通路にkeznitdeuSが入れているが、タワーをFlashback・Foxy9で抑えながら、メインをMakoが見ている。こうなると、KRUはデュエリストを採用していないので、メインを見ている敵を剥がすのが非常に難しい。
そのためのKAY/Oフラッシュで、実際にmtaはフラッシュをモク中から投げながらエントリーしようとしていた。しかし、先にスモークに入っていたMakoにキルされてしまう。ここは流石のMakoと言うしかない。
その後、keznitdeuSもFlashbackにキルされ、結局KRUはサイトに入ることができなかった。ちなみに、若干形は違うが、同じような展開でDRXが勝ったラウンドは他に二回ある。手前で抑えることを軸として動いていた、と私は考える。
とはいえ、これはKRUがノーデュエだったから可能な動きである。なので次は対FNCを見ていく。
対FNC
FNCは、ソーヴァ・ヨル・アストラ・キルジョイ・バイパーの、2コン+ヨル構成を採用している。主にBサイトを攻め、ヨルのテレポートで設置までを通し、遅延する動きを軸にしていると考えられる。そのため、FNCがAサイトを攻めたのは12ラウンド中3回のみ。

これは7ラウンド目、Aエントリー直後の配置である。
エントリーしたDerkeを、ブリッジからFlashbackがキルする。ケージを展開することでメインからのカバーも妨害している。それと同時にBeYNがカウンターリコンを返し、更にMakoがメインへパラを返す。これによって後続は入ることができず、そのままDRXがラウンドを取得した。
このラウンドも、対KRUと同様に手前のエリアで抑えようとした、と言えるだろうか。次に、少し違う形のラウンドを見ていく。

これは、10ラウンド目のプラント時の配置である。
今回はFNCがタワーを抑えられているが、DRXも人数を寄せており、どちらが有利とも言い難い状況に見える。
今度はブリッジにスモークが奥目に炊かれている。加えて、直前にChronicleがドローンをブリッジ側に流しており、Flashbackの射線を相当に警戒したエントリーを行っている。しかし、FlashbackはプラントしているDerkeにカメラを差し、モク中から抜いていく。
その後、Flashbackに圧をかけながらバックを取得するためにhiroがラインを上げていくが、BeYNのカバーが間に合っている。リコンに映ったタワーのBoasterをMakoが落とし、ラウンドを取得した。
エントリーはできたFNCだが、Flashbackを落とせず、結果としてバックを取得できなかった。ちなみに、11ラウンド目もAサイトを攻めたFNCは、スキルでFlashbackに負荷をかけながら、Derkeがラインを上げていき、Alfajerとの射線組みでバックを攻略、ラウンドを取得した。
考察・まとめ
この2戦を通して感じたのは、徹底的にサイト中で耐えながらキルを狙う動きを、DRX側が見せていたことだ。対KRUは手前で、対FNCはバックでという違いはあれど、少なくとも引いてのリテイクという選択肢を一度も選んでいない。
その理由として、Aサイトリテイクが窮屈に見えることが1つあるのではないかと考える。特にCTは狭い上に射線が多く、スモーク1つを越えるのに相当のリスクがある。スキルを使わなければ厳しいが、引き遅延が比較的し易いため、バックを取るためのスキルは節約したい。逆に、そこを簡単に入れるようにバックは取り続けようとしている。手前での抑えは、あくまでもノーデュエ故に突破力がないために起きた現象であって、本命はバックを取り続けることだと、私は考察した。
他マップで例えると、形状が最も近いのはパールのAサイトだろうか。しばらくプレイしていないので忘れ気味だが、ダグアウトとバックまで殲滅されているとリテイクが非常に難しくなる。ヘイブンのCサイトも近いかも。
ちなみにアビスをプレイするとわかるが、バックを取り続けると言うのは簡単だが、実際にやるのは凄まじく大変である。FNCのBoasterも、ブリッジで孤立してキルされたシーンがあった。逆に言えば、そのリスクを背負ってでもサイトでの耐えを選択する価値はある、とも考えられる。
身も蓋もないことを言うと、この記事はあくまでも理想論で、基本的な考え方でしかない。お互いの構成やプレイスタイルで、その場の最善手は大きく変わってくる(自己保身)。
後書き
アビスが嫌いと言う人は多い。落下死要素は普通にゴミだし、早く消してほしいと思っているが、それを差し引いても多いように感じる。
察するに、まだマップ理解が進んでいないのだろう。私のような考察好きには一番面白い時期だが、プレイヤーからすればやり辛いだけだ。今後メタが固まれば、今とはまた違ったマップ評価になっているかもしれない。
この記事が、マップ理解の一助になれば幸いである、