5月の好奇心
毎月約3千円($20)を、好奇心を満たすもしくは湧き上がらせるような事に使う試み、好奇心予算。
今月は予算オーバーです。
先日、Xでフォローさせていただいているライターのえなりさんがタイプライターを買ったnoteで紹介していた
この言葉に感銘を受けまして、私も一生の財産を得る為にタイプライターを買う事にしました。
元々古いものやアナログなガジェットが好きで、タイプライターにはちょっとした憧れがあったものの、もう一般的には使われていないから修理も大変そうだし、私は作家でもライターでもないから使う機会も少なそうだし、手を出してはいけない雰囲気を感じていましたが、何せ一生の財産ですからね。買わない手はありません。
実は1年半くらい前にタイプライターに憧れてタイプライターっぽい外付けキーボードを買ったのですが、まさかこんなに早く本物を買う日が来るとは。
私もえなりさんも元々うっすらタイプライターに興味があったとは言え、令和の時代に短期間で2人もの人間に実用性のほぼ無いタイプライターを買わせたえなりさんのお友達、罪深い。
いざ調べてみると、どうやらアメリカでタイプライター文化はまだ途絶えていないようで、新品のタイプライターがAmazonやオフィス文具店、スーパーマーケットのウォルマートでも売られているし、タイプライター専門店もあるし、心配していた修理もその専門店で対応している事が分かりました!(修理可能か確認する事前診断に$45かかるけど!)
Amazonで手に入る新品のタイプライターは主に、老舗メーカーのROYAL社、Maplefield社、文具メーカーのWeRMakerの3社。
どの会社もヴィンテージタイプライターっぽいコロンとしたシルエットを採用していて、カラバリも豊富でとても可愛い。
価格は$215〜$250くらい。えなりさんが買ったものは日本円で1万円程度と書いてあったので、2倍強くらいでしょうか。
(尚、最近は円安が著しく、ちゃんと円換算したら天文学的数字になるので深く考えるのはやめています。)
外付けキーボードとの統一感も取れるし、せっかくならピンクが欲しかったのですがAmazonではどのメーカーもピンク品切れ。
そしてどのメーカーも、老舗のRoyal社ですら、「壊れて届いた」「チープな作り」など、レビューがとても悪い。
$200以上払って好きじゃ無い色でハズレ引いたら最悪なので他にどこか無いかと彷徨った結果、ebayに辿着きました。
ピンクのタイプライターは希少で人気なのか、良いタイプライターは値崩れしないのか、中古でも結構な値段です。
他の色ならコンディションによっては割と手が届きやすい値段。$30くらいから始まって$100以内の落札価格のものもある様子なので、一旦ピンクは諦めます。
中古タイプライターは、新品でもあったRoyal社、Olympia社、Hermes社(あのエルメスではない)が人気な様子。
どれが良いのか調べていると、ハリウッド俳優のトム•ハンクスが界隈では有名なタイプライター収集家で、19歳の時に初めてタイプライターを買ってから収集を始めて、今ではなんと250台以上のタイプライターを所有しているらしい事がわかりました。
小さな街のタイプライター屋さんにトムハンクスから突然タイプライターが送られてきたエピソードも山ほど出てきます。
そんなタイプライターオタクのトム・ハンクスが番組で「一生使える最高の使い心地のタイプライター」として紹介していたのは、Smith-Corona社のClipperという機種。
ebayでは埃まみれで状態の悪そうなものでも$100、状態が良いと$250~$500からのスタート。
番組内では$900と言っていたのでそれでも安い方なのかな。
これぞイメージの中のタイプライターといった外見で中々よい。
他にもタイプライターを使っていた作家達の愛用機種も調べてみました。
そしてこちらが!!!
私が一生の財産を作るタイプライター!!!
1964年生まれの60歳!チェコスロバキア製Consul 232 です。
タイプライターは大きく分けて3種類の大きさがありますが、これはその中でも1番小さいウルトラポータブルというサイズ。
数字の1が小文字Lと併用になっているなど、キーの数も最小限。持ち運びや収納は良いけど軽くて安定感が無い為、長時間執筆をする人向きではないそうですが、3.7kgあるのでノートパソコンに比べると結構な重量感。
Consulはライフルを製造するチェコの武器メーカー、Zvrojovka Brnoが製造していたタイプライターで、キーひとつひとつにライフルの銃身にZマークという同社のロゴが付いています。
気になるお値段は$51+送料で今月の好奇心予算オーバーですが、とりあえず1万円くらいまでには収まってよかった。
それにしても愛用のカメラRollei35もドイツのメーカーだし、全く使ってないけど旧東ドイツ製のカメラも持っているし、私の古いガジェットは何故かみんなドイツ系。精巧で丈夫なものが多いイメージです。
それでは早速、今月の好奇心の重要なタスク、「タイプライターで手紙を書く」をやっていきます。
ゆきん調べでは、タイプライターを上手に使うコツは2つ。
①は効果がよく分からなかったけど、②は確かにパソコンの力加減でタイピングすると最後まで押せてなくて掠れたり全く写らない。
そこに[delete]で修正できないスペルミスや誤打も加わって、彦摩呂が見たら「わぁ、誤字脱字の宝箱やぁ!」って言われる事間違いなし。
しばらくは間違えたら最初からやり直してましたが、埒があかないので数回まではセーフとして、棒線で消したり、無視を決め込んでようやく完成!触り始めてからこの半ページの手紙を書き終わるまで3時間かかりました!!
こうなったら、誤字脱字含めて不完全な私を楽しんでください。という気持ちで完成としたよ。笑
トム・ハンクスはタイプライターの魅力を、「たったひとつのことをする為だけに造られたものであり、ほんのわずかな気遣いとメンテナンスで1000年使い続けられる所。」と言っていた。
確かに今回買ったタイプライターもコンディションあまり良くなくて不備もあるけど普通に動くし、初めてでも直感で使えてしまうくらいシンプル。
人は「不完全さ」で恋に落ちると言うけど、何でもかんでも軽量コンパクトで複数の使用用途が求められ、手のひらのスマホで情報収集から書類作成、送受信まで出来るこの時代に、でっかい図体して文字を打つしか出来ないタイプライターのこの ”何も出来なさ” はもはや愛おしい。
私の中のタイプライターのイメージは、やはり映画で観たシーンたち。
「ラブ・アクチュアリー」で作家のコリン•ファースが湖畔で書いていた原稿が風に飛ばされ、湖にダイブした事が恋を発展させる切っ掛けになった事とか、
「ティファニーで朝食を」のオードリー•ヘップバーンのインクリボンのプレゼントの仕方が小粋でカッコよかったとか、
同じくオードリー•ヘップバーンがタイピストとして映画脚本家と一緒にはちゃめちゃな物語の世界に入っていってしまう「パリで一緒に」とか
先日Netflixで観たアンドリュー•スコットの「リプリー」は、主人公がタイプライターで手紙を書く事が物語の中で効果的に使われてたし、
登場人物がカタカタと1文字ずつ文字を打つ音が、そのまま物語を動かすリズムとなっていく、そんなイメージ。
タイプライターは“ひとつの事しか出来ない”のではなく、その”ひとつの事”は物語を形成する格となり、動力としていつの間にか物語全体を引っ張ってまとめていく、そんな強い力を持っているんじゃないかなと思います。
私のこれからの人生もタイプライターの軽やかなリズムでワクワクするような物語が展開していく事を願って今月の好奇心とします。
タイプライター欲しくなってきたけどまだ買う勇気が出ない方には、トムハンクスが開発したタイプライター風アプリがオススメ。(iOS限定)
↓えなりさんがタイプライターを買った話
↓タイプライター演奏
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