9月の好奇心
毎月約3千円($20)を、好奇心を満たすもしくは湧き上がらせるような事に使う試み、好奇心予算。
今月は、写真の美術館フォトグラフィスカに行ってきました!
フォトグラフィスカはスウェーデンのストックホルムで2010年に設立されて以降、ストックホルム、ニューヨーク、ベルリン、上海、オスロ、タリン(エストニア)の6都市に拠点を持ち、新進気鋭の、または既に定評のある世界で活躍しているアーティストを紹介する新しい舞台となっているそう。
ニューヨークは6階建ての歴史を感じる建物で、内装はモダンな造り。レストランやバーもあり、グラスワイン1杯付きのチケットも売っているなどお酒を飲みながら閲覧出来るデートには最適なスポット。残念ながら移転予定で現在は休館中ですが、この日はオシャレなカップルが沢山居ました。
ところで写真撮る人って何でみんなオシャレなんだろうね?被写体にもなるから美意識高まるのかな?
通常$24のチケットが第二日曜日のみ事前予約で$10になるというお得なチケットを予約!
この時やっていた展示は3つ。
① Jean-Andre Antonie [From Prince St. with Love]
プリンスストリートにたむろする若者たちの写真。
先日ボストンのイザベラガードナー美術館でやっていた展示も、ある道の住人にフォーカスを当てた写真だったから同じ人かと思ったら違った。
(イザベラガードナーはMichael Dennenyさんの [On Christopher Street: Life, Sex, and Death after Stonewall]でした。)
それだけそこに生きる人に特徴のある有名な道が沢山あるんだね。
トー横とかセンター街とかキャットストリートとか中野ブロードウェイみたいな感じなのかな。
Jean-Andre Antonie がよかったのは展示の仕方がおもしろかった。
普通サイズの写真が引き伸ばされた写真の真ん中に貼ってあったの。
私は構図や被写体が面白い写真が好きで、ありのままを写した写真の良さがよく分からないから、こうやって展示の仕方を工夫してくれると面白く見られてありがたいです。
② Bruce Gilden [Why These?]
2つ目はブルース•ギルデンが自身のお気に入り作品を集めた展示で、ドアップのポートレートとキャンディットと呼ばれる一般人を通りすがりに激写した写真の2部構成でした。
ドアップのポートレートは、写真自体が大きいし皮膚の毛穴まで見えるくらいの高明瞭度。
被写体は生傷の多いストリート居住者や化粧の濃いストリート労働者のような人が多く、普段自分の顔すらこんなドアップでじっくり見ないから、少しグロテスクな印象。
素朴な疑問だけど、一般的に生傷や皺が多い人が被写体に選ばれるのは『重ねた年月の重み』とか『苦労の蓄積』のようなものをキャプチャーしたいのかな?それとも『深く考えなくても何の意図がなくてもピント合わせてシャッターさえ押せばそれっぽく映るから写真に語らせとけばなんとかなる』なのかよく分からないな、なんて失礼なことを考えながら見ていた。
先月のイザベラガードナーで展示していたMichael Dennenyさんの展示は、ストリートで働くLGBTQ+のアイデンティティに焦点を当てているので、化粧の綻びや生傷はその人の人生のストーリーやアイデンティティを写真として切り取った結果だけど、ブルースギルデンのこのドアップポートレートはそういった説明が無かったので余計に分からなかった。
『人間の綻びや不完全さが美しい』という事なのかもしれない。
道端の人を激写したものは、歩きながらすれ違いざまに撮っているのもあり、躍動感がすごい。
『フラッシュたいてもたかなくても、どんなに近くても遠くても、何も言わん人は何も言わんし、クレームをつける人はレンズがこっちを向いていた気がする!とかでイチャモンつけて来るから気にせずガンガン撮ってる。』と言っていたのが印象的。
さっきの被写体に力があるという話に通じるけど、道端で写真を撮る時に画になる人って「周りと違う人」なんだよね。
例えば周りの人より身なりが良い/悪い、食べ歩きしてる、小走りになってる、寝てる、泣いてる、笑ってる、恋人とイチャついてる、とかとか。
私はそういった人達をフレームに入れる時、自分がその人だったとして、撮られたら嫌な場面か?その瞬間を撮ったアート的な意義を説明を出来るか?と考えてシャッター押せない事って結構ある。
でも、いい写真とか面白い写真を撮るにあたり、そういった瞬間の方が『画になる』ことが多いので、万が一イチャモン付けられたらごめんごめーん!って削除するくらいのマインドの方がいい写真は撮れるのかもしれないな。
通りすがりの激写でも構図がしっかりしているからナントカ〜っていかにも写真が趣味そうなボーイが一緒に来た人に説明していた。
歩きながらほぼ瞬発力で撮ってるので、構図が良いとしたら瞬間に構図を決められる才能が発達したか、たまたま構図が良い写真だけ採用しているかのどっちかだね。
そして最後は、
③ Vivian Maier [Unseen Work]
ベビーシッターとして働きながら趣味で写真を撮っていただけのアマチュア写真家のビビアンの作品は、亡くなった年の2009年にシカゴのコレクターのブログで紹介されたのをきっかけにじわじわと世界中で話題になって、2011年には写真集がAmazonのストリートフォトグラフィ洋書部門で一位を獲得、2015年にはドキュメンタリー映画が日本でも公開されるなどブームになったらしい。撮っただけで印刷されていないネガも沢山あったとか。
生前に作品を世に出していたら、自分の作品が世界中で愛される姿を見られたのにね。
やはり作品は生きてるうちに発表しておかないとだね。
ビビアンは人々の日常を撮るのが好きだったらしく、当たり前の風景を切り取ったものが多い。おなじ道端で人間を撮るにしてもブルースギルデンは体当たりをしているかのような撮影方法だから被写体は驚いてたり睨んでたりする写真が多いけど、ビビアンの被写体は目が合ってにっこりしたタイミングとか、少しコミカルな瞬間が多く見ていて楽しい。
バズって人気になるのも分かる。
こういった写真展に訪れる際、いちばん楽しみにしているのはボツ写真。
なぜかと言うと、引き伸ばされたいい写真が、一発で撮れたのではなく、何ショットか撮ったうちの1枚だと分かるから。そして、なぜこの1枚を選んだのか他のショットと比較して何が『良い』となったのかを考えるのが楽しいから。
なぜなら私はシャッターを切る時、一枚で決めようとしてしまいがちなので、例えばこのパパ風船と子供の場面に遭遇した時、私はきっとパパの顔に風船がいい感じに重なるまでシャッターを切るのを待ってしまって、その瞬間がなかなか来なかったり、待ってるうちに状況変わったりして結局シャッター押さずに場を離れる事あるんですよ。
でも、こういうボツ写真を見るときっちり顔に被らなくても面白い写真として成り立ってたり、別の面白い写真が撮れてたりする事あるんだよね。そして上手い人は同じ場面で何枚もシャッターを切っている。
フイルムは特にだけど、構図や状況を気にしすぎて構えたは良いけどシャッター切れない/切らない事結構あるのでそういう何枚ものボツ写真を見て、シャッターは切ってなんぼですね!と反省する。構図とか考えてるうちにベストタイミングが過ぎる事あるしね、やはり瞬発力鍛えないとね!!
そんなビビアンの愛用機はローライフレックス。
前から少し気にはなっていたものの、こんなにいい写真を沢山見せられると、それを撮ったカメラが欲しくなってくる。
ウエストレベルファインダー可愛い。
正方形の写真も可愛い。
そんな訳でこの日からebayでローライフレックスをずっとみている。
ただウエストビューファインダーがやりたいのかも?と思い、手持ちのウエストレベルファインダーカメラにフィルムを入れたら少し治まってきてはいるものの、まだ少し欲しい。
正方形写真も別に自分でトリミングすりゃいいんだけどさ。
そういう事じゃないじゃん。この、可愛い見た目の二眼カメラで写真を撮るという一生の経験を買うんだよ。なんてタイプライターの時の金言を悪魔が囁いている。
もしかして東京で買うより安いかも?とか。
欲しいカメラという意味では、いい写真撮るなと思った人が大体GR使ってるのでGRも欲しいし。
物欲が底なし沼。
そんなこんなで最近はなるべくカメラを持ち歩き、とにかくシャッターをたくさん切る事をモットーとして撮影しているので、いつにないスピードでフィルムを消費している。現像が楽しみ。
今回は$10しか使ってないと思いきや、実は7月に同じチケット取ったのに風邪引いて行けなかったリベンジなので実質$20。
中々写真展行かないので楽しかった。
ニューヨークにもうひとつ写真の展示やってる所あるからそこも近々行きたい。